表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
悪役令嬢は暗躍せり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/152

6.知られざる王子様は微笑みを絶やさない

お読み頂き有り難う御座います。

小さくなった義兄さまに膝を占拠されたアローディエンヌ目線でお送り致します。

「それで、どうするんですアレッキオ。あのがなり屋さんを歓待するんですか?」


 ティム様が仰ってる間にも、さっきの怒鳴り声がするわ。

 普通なら眉をしかめる所だけど……私の表情は変わんないのよね。

 迷惑な人よね。他人のウチに押し掛けて騒ぐなんて……何者なのかしら。


「アローディエンヌう、不愉快?なら即刻処分するけど?」


 膝の上の目茶苦茶耽美な雰囲気を醸し出す幼子……つまり何でか縮んだ義兄さまなんだけど、私の感情の機微をどうやって感じ取っているのかしら。声のトーン?でも黙ってても判る時もあるみたいだから分からないのよね。


 いや、それよりも先程の発言よ。どう聞いても邪悪な事を言ってるのに、義兄さまの邪気の無い顔に見えるのはどうしてなのかしら。アレなの?若いからなの?でも、私はショタっ子を愛でても偏愛の性癖は無いわよ!!


「いや別に不愉快では無いですし、いきなり人を処分とか言わないでください。でも何でお話し方がいきなり流暢なんですの……」

「子供の舌は短いからなあ。大人と同じ様に喋るの、大変なんだねえ」


 ………そうなの?それでもモノにしてるってことはやっぱりチートなのよねえ、義兄さまは。

 いや、感心してる場合じゃなくて!


「あはは、地味にユール公爵邸の処分現場って見たかったですけどねえ」

「体験したいなら見れますよ、ティム様」

「冷たいですねえ、君達主従は」


 ………処分現場って何なの。碌な現場じゃないんでしょうね。悪役令嬢だものね……有りそうでは有るもの。変なことに使ってないと良いんだけれど。


「義兄さま、罪の無い方をいたぶったりしていないでしょうね?」

「一応背景調査はしてるよお?僕を害そうとしてる奴等だもんねえ」

「無実の者はおりませんので、安心ですよ奥方様」

「……えっと、それなら良いのかしら?」

「……うーん、アローディエンヌはアレッキオの目を随分信頼してるんですねえ」

「煩いティミー。俺はアローディエンヌの信頼を得てるんだよ」


 いや、全幅の信頼を置いてる訳でも無いわよ。

 でも、義兄さまに危害を加えようとしている人を助けてってのはおかしいし。……そりゃ義兄さまに危害を加えたら倍返しされそうね可哀想とは思うけど。基本義兄さまは理不尽な悪事は働かないものね……。……毒されてるかしら。いやでも私は潔白な善人じゃないから義兄さまのせいにしちゃダメね。


 あれ?でもおかしいわ。

 さっき近づいてきたあのがなり声が、遠ざかってる……?あ、近付いてきた。あれまた一瞬で遠ざかってる?

 ど、どういうことなの?どういう歩き方したらああなるの?


「あの、色々突っ込みたいですが、あの声は何故近付いたり遠ざかったりしてますの?」

「あはは、アローディエンヌも不思議ですよねえ」

「ユール公爵邸は広いですから迷われる方が多いんですよ、奥方様」


 広い……まあ広いわよね。貴族の邸宅だし。

 領地の方はもっと大きくて東京ドーム何個分……程ではないでしょうけど、庭含めてデカイショッピングモールくらい有るものね。

 あそこなら迷う人も出ると思うわ。

 でも、此処は……他の貴族の邸宅にお邪魔したことはないか無いけど、ウチはそんな複雑な造りなのかしら?


「階段も多いし、結構個性的な扉が多いから迷った事は無いのだけれど」

「アローディエンヌは昔から賢いからねえ」


 よしよし、と小さい手で頭を撫でられた。

 義兄さまが小さいと………変な気分になるわね。

 まあ、家はなあ。子供の時から住んでるし縦横無尽に運ばれてるし……迷わないわよね。


「認識阻害って怖いですね」

「ティム様」

「ハイハイ。それで?アレッキオ。あのがなり屋さんは家長の留守中に入り込んで何を見つけたいんでしょうね?」

「アローディエンヌだろうね」

「え!?私ですの!?」


 え!?何で?

 この家で一番モブで弱いから!?人質的な?

 ………納得したけどそれも困るわね。どうしよう。


「若しくはアローディエンヌの弱味……あー、それで僕が呼ばれたんですか?……兄上様の方が宜しいのでは?」

「ショーンを近寄らせるなんて芝居でも嫌だね」

「ははあ、僕は兄上様よりはマシ扱いして貰ってるんですねえ。悲しいやら嬉しいやら」

「………?どういうことですの?」


 弱味?

 ルディ様ではなく、ティム様に頼む理由?

 えーと、うーん………何の事かサッパリだわ。私の頭の回転では全く追い付かない。

 えーと、あの遠ざかったり近寄ったりしてる人を罠に掛けたい……からティム様に協力を申し出た、で合ってるかしら?


「あのデカイ声の奴はね。愛人を大量に抱えて、横領して家から追い出された奴なんだあ」

「へえ」


 そりゃ碌でも無い方なのね。でも何故ウチに押し掛けるのかしら。親戚か何かなのかしら。


「血縁か何かが?」

「7代前に有るくらいかな」

「遠いご縁ですのね」

「貴族は大体親戚だからね、面倒臭いけど」


 そりゃそうか。貴族同士の婚姻がメジャーだものね。


「とある事件の解明に若様が関わられた事が有ったので、分相応にも若様に逆恨みをしているんです」

「……それは危ない思想の人なのね。ウチに入れて良かったのかしら」

「アローディエンヌの良いところは、無闇矢鱈に小悪党から大悪党を助けてあげてとは言わないところですね」


 ティム様の濃い緑色の目が面白そうに光っているわ。

 ひ、引っ掛かる言い方を相変わらず為さるわね。見た目は子供らしさが失くなりつつある美形に変わられたのに。

 しかし、ティム様の言い方……。相変わらずでいらっしゃるわよね。


「家族や友人に害を為そうとされる人を守れだなんて、言いませんわ」

「冤罪でもですか?」

「……事情は鑑みたいですが、私如きの判断が合っているとも限りませんので」

「ティム様、妙な邪推はお止めください。効きが悪いでしょうか?」

「………いいえ。本当に君は優秀ですねえ、ルーロ君」


 効きって何かしら?

 ……でも、ルーロ君とティム様の間に電撃バチバチ散ってる気がするわ。同い年の可愛い子の睨み合い……ていうか腹の探り合い?がいいのは二次元だけね。


「あのねえアローディエンヌう。マデル様とお出掛けしたことあったでしょお?」

「はあ?ああ……」


 2年前くらいの話だったかしら。騎士団に社会見学に行って……マデル様のロマンスを目撃した話かな。いやー、あれは眼福だったわー。暫くシアンディーヌに構いきりでご無沙汰しているけど、お元気かしら。仲は進展なさったかしら。ミーリヤ様もお元気かしら。お手紙を差し上げなきゃ。


「私の真似して失礼な輩を撃退したんだってねえ。観たかったなあ。格好良かったんだってねえ!」


 ……えーと、そっち?

 そんな大したことしてないわよね?マデル様に失礼な物言いのテント内でも日傘の軍団にイラッとしただけだったような。

 それに、引っ立てられたの騎士団の皆様よね。

 いやそもそもそれ話したっけ?誰から報告を?騎士団の方々?


「………いえ、撃退してくださったのは騎士団の皆様ですわよ?」

「観ーたかったなあ!」


 頬っぺたを膨らませて赤い唇を尖らせられてもなあ。

 そんなどうでもいいこと……。ゆさゆさ服を引っ張って揺らして来ないで欲しいわ。


「じゃあ、アローディエンヌはその線で行きましょうか」

「では扉を開けましょう」

「えっと、ええ?」

「大丈夫アローディエンヌう?嫌になったら僕の頬っぺたをつついてくれればやめるからね」

「は?地味に恥ずかしいんですけど。いえそもそも」


 義兄さまは私が義姉さまの真似をしてるのを観たいが為に、あんな人を招き入れてギタギタに断罪したいってことなの!?


 ……信じられないわ、という目で義兄さまを見たら……薔薇色の頬がほんのり色を増して、薄い青の瞳が……とろりと蠱惑的に細められた。


「ふふう」


 ………無駄に色っぽいわね。子供の時の義姉さまの目に……似ているようで違うわ。

 やっぱり中身は大人なのね。

 残酷な義兄さまの……アレッキオと同じ目だわ。

 ……ゾクゾクとせり上がるのは、何なのかしら。


「見付けたぞ!!おおっと奥方殿!公爵を放って逢瀬の最中とは!!」


 逢瀬の最中とは?


 いや……それよりも結構な勢いで開いたのに、全く音を立てなかった扉の方が気になるわ。

 漫画ならバアアン!位の勢いだったのに。えっ、音が消えてるの!?


「普段なら普通の音を立てて開く扉ですわよね、これ。

 何時防音処理が?油を差し立てで?」

「扉の開閉音ってイライラするよねえ」


 のうのうと義兄さまが答えたってことは、義兄さまの仕業なのね……。相変わらず意味の分からないギミックをウチに付けているのね……。


「おい聞いているのか!?低俗な身分の癖に公爵をタラシ込んだ下賎な女め!!」


 あ、闖入者を忘れてた。随分と……服装と顔がだらしない人ね。モテそうでモテないオーラを纏っていると言うか。

 歳は……私達よりは少し上くらいかしら。

 ………んん?あれ?何処かで見たことあるかしら?貴族年鑑?

 いや、もっと直に会ったことがある?

 でも、私……貴族同士の交流って、義兄さまの機嫌直しに使われた子供の頃にしか無いのよね。てことは最近の知り合いじゃない。

 ……子供の頃に知り合った貴族も特に居ないのだけれど。


「おやおやあ、散々な言い草ですね」

「はっ、見ない顔だが間男の癖に偉そうに?」


 何 で す っ て !?


 この人はティム様に……我が国の第二王子殿下に何を言っているの!?

 冷や汗が一気に流れ出て背中がビッショリよ!!

 後、間男って何!!ティム様が!?怖すぎるでしょそんなの!!


「ははあ、………この僕のことを知らないんですねえ」

「ニヤニヤしやがって……」


 ………ティム様の目が………闇が……。

 思わず震えが走り、ゾクッとした私の胸に義兄さまがこて、と首を傾げた。


「………煽るねえ」


 いや、諸悪の権化が何を言っているのよ!!


隠されて育てられ、2年間姿を消していた王子様ティミーの顔を知ろうとする貴族は居無かったようですね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ