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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
蝙蝠ウサギと仲間達編

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23.そんなにスピーディーに物事を進めなくたっていいんだよ!!(ニック目線)

お読み頂き有難う御座います。誤字報告誠に有難う御座います。

ニック目線のラストです。

 えー此処はちょっと裏通りのオープンカフェでございまーす。

 見れば見る程フツーのカフェって言うか、夜は飲み屋さんもやってる、そんな感じのお店なのに……何だかメニューが独特だね。焼肉(固め)とか、煮魚(黒)とかどゆことなんだろうね。野菜炒め(青い)がかなり気になるよ……。何が出てくんの?きょわい!的な意味でね。

 美味しそうな匂いなのにどうもこう、食欲をそそらないメニューだよ……。

 取り敢えず、お連れ様と共にお席に案内して貰ってー……椅子に腰を下ろしたところで、耐えに耐えたボクの限界が来てしまったよ。


「ううおおおお、お尻が痛い……。ルディ様、お会いしてくださって有難う御座いますイテテテ!!ああ、ホントスミマセン失礼ですみません!!」


 目の前にはシンプルな白いフードのお衣装ながらも、隠しきれないオーラを纏うキラキラ美形な王子様……。そして、見苦しくも汚い声で呻いているボクは、オルガニック・キュリナさ!

 ……うう、相変わらず煌めいておられるなあ。それに比べてボクのみすぼらしさよ。

 一応着替えたんだけど、本体のヨレヨレは隠しきれないで候!!辛たん!!


「別に構わんぞ。それにしても転移魔術装置と言うのは中々大変そうだな」

「あっ、ハイ。17時間掛かりました」

「そうか、長いな」


 ボクってばモブで下っ端だから、勿論転移魔術なんて古代のミラクル魔術は使えないんだよね。

 最近……狭ーい界隈で話題になってる魔術転移装置……駅馬車よりずーっと早い!という奴を利用してみたボクなんだけど、お尻が死んだよ。

 いや、駅馬車で5日揺られるよりは随分マシだと思うよ?お値段は長距離駅馬車の3倍だし……。ま、まあ忙しくて使う暇も無かったお給料が役に立ったよ。


 で、魔術転移装置だけど……何て言ったらいいかな……。四角い窓も無い箱にずーーーーーっと入ってる感じなんだ。閉所恐怖症には絶対ダメな造りなんだよ。一応空の柄の壁紙は張ってあるけど……余計気分が萎えるね、アレ。

 我儘で申し訳ないけど、アンケート用紙につい文句を書いちゃったよ。

 乗り心地はね……軟弱デスクワーカーには17時間ずーっとお座りしてるの……大変死ねました。

 一応トイレも有るんだけどね。魔術回路の関係とかなんちゃらかんちゃらで最低限しか動いちゃいけないんだって。寝ても良いけど、椅子で寝ろって言う……。

 ……全身火傷してもいいから、移動魔術をゲットしたいと思ったね。

 細かい細かい細かーい魔法陣っぽいのを展開して練った魔力をムラなく流して……展開するらしいよ。

 自分の魔力でも大火傷するから魔術の勉強放り出したボクには、聞くだけでも無理っぽいけどね!!

 うう、ヤスリ掛けなら細かい所まで出来るんだけどな!何の役にも立たないね!

 まあ、無理なんだけどね!!ぎゃんっ!!


「それで、グレゴリオ・カゾに関してだが」


 そうだよ!!グレゴリオはね、アロンたんのお口添えも有って……何と命は助かったんだ!!

 それも、五体満足でね!!

 はうう、アロンたん素敵!!益々崇め奉りたい存在になりにけり!!


「本当に有難う御座います。てっきり身元確認をしなきゃならないかと思ってました。生きて……ううっ!!」

「アレキは焼く気だったようだがな。使えそうだから浮かれた牢獄に繋いでおいてよかったぞ」


 ワオー……!超気になるゥ!涙も引っ込むレベルで浮かれた牢獄ってなんじゃらホイと突っ込みたーい!イケナイ雰囲気だよ。

 ……そう、好奇心で猫ちゃんを殺してはならない。

 最早其処らの猫ちゃんより弱っちいモブなボクの座右の銘のひとつさ!モブは人に気を使いつつ、自分自身を守らないとね!


 そしておにいたま……やっぱグレゴリオをこんがり焼く気でいらしたんですね。お尻の痛みに耐えて来たのに、涙と無言の再会にならなくてホント良かったよ。

 一応遠縁の身内は居るらしいけど、遠くに住んでるらしいから……おにいたまの本気で身元不明になっちゃうところだったんだよ。おお、良かった。アロンたん本当に有難う!!

 そうだ、ルディ様にもお礼を申し上げないと!!


「ルディ様、色々ご助力頂き、誠に有難う御座いました!!」

「アレキが燃やしたがっていたからな、邪魔をするのは楽しかったぞ」


 おおう、ブレねえでやんす、王子様……。

 何と言うか、攻略対象と悪役令嬢と言う……ゲームではね、ストーリーによっては結ばれるエンドも有ったってのがガセなのかねって思う程だよ。いや、きっとガセだね。結ばれたフリして殺し合ってそうなんだもん!!考えたくないけど考えちゃって怖いよう!!


「それにしても、グレゴリオと言う男は変わっているな。騎士団の話では直ぐ悔いたような事を言っていたし、矜持が無いのか?」

「グレゴリオはですねえ……。良くも悪くも善意の人なので、超騙されやすいんですよ……。最初に聞いた情報を鵜呑みにしちゃうんですよ」

「よくそんな者が傭兵と医者が出来るな。致命的では無いか」


 ルディ様の疑問も尤もだよね……。

 フツー、傭兵って猜疑心の元に情報命だもんね。なのに善意の塊っておかしいよね。

 ストーリー的にはすぐ騙されるから結構一緒に殺される率が高めなんだよね。何故かボクも巻き込みで。

 ……理不尽でやんす。早く返上したいよ、死亡フラグ神官を。


「えっと、ルディ様。畏れながら傭兵医者って言うのはこう……組織に所属しないフリーな……いえ、期間限定で雇われる医者と言いますか、そう言う存在なんです」

「ほう」


 雇われ医者じゃなくて、傭兵医者ってのは、方々へ放浪するにあたって少々武力が必要だからそう呼ばれてるらしいんだよ。

 まあ、前の世界でもそーそー無かったけど、この世界でも珍しいんだよ、フリーのお医者さんてば……。

 そんで、生まれ故郷に偶々戻って来て、4のゲームが始まる的な感じだったんだけどね。

 始まる前に幼馴染さんにゲットされちゃったから、フォーナとはちょっと親しめの知人レベルなのさ。

 ……破綻してるよねえ。いや、フォーナとのフラグを自らぶった切った上に、色々姑息に工作したボクが言うのもなんだけどね。

 ……悪役令嬢フィオール、つまりブライトニアに捕まる未来は見えなかったなあ。見たくなくて目を逸らしていたとも言うね!!


 ……今からでも逃げたい気持ちを抑えきれないボクだよ。うう、腰とお尻が超痛いいいいん!!


「そう言えば、その引き取り手は元気に侵略行為を終えたそうだな」

「うわあああああんん!!!どうしましょおおおおお!!」

「僕もまあまあ王族皇族に知り合いは多いが、侵略行為に手を染めた者は中々おらんぞ。人生何が有るか分からんな」


 そうなの!!ブライトニアはサッサと侵略を終えちゃったの!!

 おかしいでしょ!?あの押しかけられた日から、後3日で1ヶ月なんだよ!?

 悪役令嬢が傾国の魅力で国をひっくり返すなら未だちょっと分かるよ!?思いっきり力技で余所の国を侵略するってどゆことなの!?

 しかも、恐ろしい事にこの、モブにしてモブなボクに貢ぐ為!!

 ……胃と心臓も痛いしお腹も痛いし頭も痛いし全身が震えるよう!!


「……うう……」

「まあそう嘆くな。案外良い国になるかもしれんぞ。案外だが」


 ルディ様が慰めてくださるのは嬉しいけどおおおお!!失敗しそうだがってルビが付いてる気がするよおおお!!


「水に沈んだルーザーズには水棲の獣人が続々と集まっているようだな。まあ、彼らは見た目のせいで迫害の対象になっていたそうだ。獣人については特に気にしていなかったが、案外住み分けに役立っているようだぞ」

「も、もうそんな所まで……」


 もう住民が見つかって住んでるとかどゆこと……!?

 いや、勿論迫害に遭ってる人々の安住の地が見つかったのは素晴らしく素敵な事だけど!!

 獣人さん達が多い所に住んで短いけど、やっぱり良い人多いしね!!

 迫害するのいくない!

 でもね……。


「侵略行為の副産物で無ければとってもいい善行デスヨネー……」

「僕は気にせんが」

「そ、そですか……」


 寧ろルディ様が気になさってる方が吃驚だけど、それは言えないなあ。だってボクは保身も大事なんだもん!!


「待たせたな」


 あ、茶(黒に茶色入り)が来た。……匂いはコーヒーで良いのかな、コレ。ちょっと8割コーヒーだけどスパイシーが混ざっているよ……。

 うーん、コーヒー味の他の何かじゃないよね。ルディ様が頼まれたから付和雷同しといたけど、何入りなんだろ。見た目超黒いよ。茶色要素は何処なんだろ……。


「シナモン入りのコーヒーだそうだ」

「そ、そうですか……」


 黒がコーヒーで茶色がシナモン……だと!?分からんよお!!何処のエスパーが分かるのそんなクイズメニュー!!と叫べないボク、チキンです。

 やっぱ見える情報も大事だけど、聞く情報も大事だなあ。

 恐る恐る飲めばシナモン入りのコーヒーの味がする……気がする?

 うん、コクとサッパリが同居して……シナモンが香るようなそんなような……まあ取り敢えず美味しいよ。ボク、コーヒー党じゃないから分からないけどね!


「そもそもコーヒーはお茶じゃ無いのでは……」

「煮出してあるから良いんだよ、茶で」

「うええそんな乱暴な……。折角美味しいんだから、ちゃんとしたお品書きを書きましょうよ」

「前来た女の子もそう言ってたな」


 だ、だよねえ。そう思う人が居たようで何よりだけどね。


「ソーレミタイナから資材の搬入も聞いている。ルーザーズの特産の、夜になると仄かに点滅して光る石が城主夫妻の寝室の内装に使われるそうだな」

「……な、何と」

「聞いて居ないのか?外壁はクリーム色と赤瑪瑙の窓。遠目に見たら苺を挟んだチョコレートケーキのようにするそうだ」

「何ですかその間違ったメルヘンかわゆいお城は!?」

「本当に聞いていないのだな」


 しかも、それってお高いんでしょう!?とお聞きしなくてもお高そうなんですけどーーーー!?

 アラサーのモブのオッサンが住む城じゃ無くね!?

 寧ろ、目の前で優雅にコーヒーをお飲みなお姿もキラキラな王子様がお住まいになるべきじゃね!?

 そうだよ高貴なお血筋がいいよ!!レギとか……!!あっ、レギ!!


「はっ!!レ、レギと一緒に姉弟仲良しで住まいの可能性が有りますよね!?」

「無いだろう。そもそも、ソーレミタイナではふたりの皇太子をよく思わない者も多いと聞くぞ」

「えっ!?実は貴族に虐められて辛い思いをしていたとか!?

 ……無さそうすぎますが、いや、でも……!?」

「だから飛び地を作って出る訳では無いと思うがな。薄着の皇女の狙いは、間違いなくお前の囲い込みだろう」

「そ、それとそこを何とか……」

「中々諦めの悪い男だな、オルガニック・キュリナ。個人的にはその性根、好ましいとは思うが……」


 えっ、ルディ様に好ましいとか言われちゃった。胸キュン!!

 じゃなくて。


「オルガニック!!何処に居るの!?どうしてルディに会いに来て、あたくしには会いに来ないの!?こんな男に頼らずとも、あたくしが何でも叶えてあげてよ!!」


 ……わー。

 ボクを追い詰める足音と、何処かで聞いた声がするなー。


 ……何で此方に来たの。お忙しいんでしょう?

 ギギギとポンコツな音がしそうなレベルで、つい目の前の薄い茶色のキラキラおめめを伺うと、ふむ、と目を細められてしまった。ああイケメンは麗しいですねそうじゃなくてえ!!



「獣人の包囲網と言うのは恐ろしいな」


 ……恐ろしいです。仰せの通り、超恐ろしいですうううう!!

 ボクの休暇を漏らしたであろう人々が思いつくのが悲しいです。無遠慮にぐっさぐさ刺さる通行人の視線も恐ろしいです。

 無駄かも知れにゃいけど、このお手製フード、色でも変えときゃ良かった!!テーブルの下に隠れる!?やり過ごしたいよおおおお!!時よ過ぎ去れえええええ!!



「ねえオルガニック!!あたくしのオルガニック!!」

「まあ、諦める事だな」


 ……ああ、ボクは何度も逃げたい運命に逆らえないのか……。

 ああ迫りくる可愛い脅威が……!!


「ぐえええっ!!」

「薄着の皇女、勢い余ってニックが死ぬぞ」

「だ、だから!!受け止められないって言ってるでしょおおおおお!!

 何時か中身が出て死にたく無いよお!!」

「御免なさいオルガニック!!愛しているわ!!」

「愛で全ては負からないからね!?」


 そうだよ!!愛で全てを投げ出してたまるもんかああああ!!


「……愛と言うのは恐ろしいものだな」

「そぉ?私はぁ恐ろしい位のぉ、愛を貰いたいものねぇ」


 ……はっ、ミニアさんとルディ様のラブコメの気配!!

 ままま、またブライトニアはミニアさんに無茶を頼んだの!?な、何ちゅうことを!!パシリ扱いもいい加減にさせなきゃ!!


「ブライトニア!!周りに迷惑を掛けちゃダメだよ!!そんな事したらお城になんて住まないからね!!」

「ええ!?嫌よオルガニック!!あたくし、周りに迷惑なんて掛けて無くてよ!!」

「……蝙蝠ウサちゃん使いさんのぉ、本領発揮ぃってぇ所かしらぁ?」


 ボクって、そう言う扱いなの!?


「侵略先の統治も大変そうだが、まあ頑張れ、ニック。ミニア、近くは無いか?」

「あらぁ変わったお品書きぃ。この卵料理(甘い)ってのにぃするわぁ」

「オルガニック!!早速城の基礎を見に行きましょう。あの傭兵医者も働かせているの、案外役に立ってよ。流石オルガニックの推薦ね。見る目が有って素敵よオルガニック」


 ……何てこった。もうグレゴリオったら此処におらんのですかい。

 お城も基礎が出来てる!?仕事が早すぎやしない!?


 うわあああああんん!!!

 ボ、ボクはやっぱりお城に畏れ多くて住みたく無いよぉ!!





次は悪役令嬢にして義兄さま、アレッキオが何か企んでいる話になりますね。

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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 やはりほのぼのカップルは見ていて癒されますね。 一途な愛の眩しいこと眩しいこと。 私、勘違いしておりました。 なんとか距離を置きたいニックの行動に、フロプシーの心…
[良い点] もしかしていつだったかアロンとドリーで行った店でしょうか、そういうの好きです
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