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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
蝙蝠ウサギと仲間達編

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21.美少女を膝に載せるモブって、もしや悪役ではないかな!?(ニック目線)

お読み頂き有り難う御座います。

他国侵略とお城建設を止めるべく、ニックは抗います。

 どうも、膝の上に物理的蝙蝠ウサギ系美少女を載せ、体臭を嗅ぐのを皆様の前で披露されるという羞恥プレイ中のニックです。


 ご、誤解でーーーすっ!!

 ボクは!痴漢では!ありませんっ!!

 三次元のカワイコちゅあんはそっと影から見守るタイプの者です!!そんな趣味は皆無ですホント信じて!!

 ボクは前世込みの脳内では大概のオタクを嗜んで同好の士と交流を深めてはいたけど、犯罪を憎み清く正しく世界の片隅に住んでいたの。今も昔も無害なモブ野郎ですからあっ!


 しかしかかしおかし、今は……いやもうホント、何と言うことでしょう。このモブ野郎の膝から世界的にも恐ろしい美少女、ブライトニアが離れない。

 しかも、ボクらを囲むギャラリーは、畏れ多くもハイスペックイケメンとハイスペック美女。

 何なの、この狂い始めた歯車が軋む世界は。もしや世界が暗黒に包まれて、勇者が聖剣を抜いてお姫様をご褒美に貰いたいイベントが発生しちゃうの?

 世界の改編は今更この歳では勘弁して欲すぃな!もし起きても怖れ戦き震えるモブ傍観者で居させて!!


 それともぉ?ボクを妬んだ刺客が殺到して殺される光景じゃなーい?ヤダもー、拙者困っちゃうーん。ボクって魔性のモブ?

 ……いや、魔性のモブなんて、そんな単語も訳無いからね?

 モブイズモブだから。モブは背景と同化できる凡人だから。攻略対象でも凡人だから。モブとチートの間には深くて長い溝が有るんだから!!


 ……いや、ガチでマジでホント何でなの。最早慣れて挙動不審も発動しなくなってきたのはどうしてなの。

 そもそももそもそね。ボクがブライトニアにモテる事態も未だ分からんちんだし、世界の七不思議上位に食い込んじゃうんじゃね?この世界の七不思議知らないけどね!!怖そうだよね!


「だからねオルガニック。近隣の虐げられている獣人共を住まわせればいいと思うの。あたくしとオルガニックの仔ウサギも生きやすいと思うわ」

「ブライトニア、膝から降りない?ボクの服は君の顔を押し付けるのに適さない素材だと思うよ?」


 理詰めで来たね。何処の何方さんがブライトニアに知恵を貸したのかにゃ?恨むよお!!

 へーいお嬢さん、いい加減モブの膝から降りないかね?すーぐ其処にイケメン騎士のお兄さんも居るんだよ?でもお姫様とラブラブだからおススメできないけどね!!兎に角膝から降りるんだヘヘイヘイ!と地味に合いの手を入れているんだよ。コレでもね!!抗ってるのモブだけど!


 ホント、デリケートなお年頃だから、せめて臭いを嗅ぐのを止めて!!首筋から服に鼻を突っ込みかねないんだけど!!ボクからは良い匂いは発生しそうにないのに、ホント何の罰なの!?


「あたくしは強いから、文句を言ってくる国も蹴散らせてよ」

「君が強いのはよーく分かるけど、侵略はいく無いよ!!大体、元々住んでた人はどーすんの!?気の毒すぎるでしょ!!」


 そして、ボクの為にお城を建てるなんていうトンチキ思考を改善したいんだよ!!必死にさっきから他国侵略行為をしようとするブライトニアを止めてるんだけどね!?

 何の効果も効能もないんだけど!!矢張、モブにチートを説き伏せるのは無理なの!?届かないボクの言葉が悲しいで候!


「あたくしは心が広いから、オルガニックを崇めるなら戻って来たら入れてやっても良いけど」

「……はへ?崇める?ど、どゆこと?」


 何言ってんの?

 オルガニックを崇めるって何?

 いや、オルガニック・キュリナはボクの名前だけど……。同名の偉い人でもいたかな?ボクのクモの巣張り始めた神官メモリによるとだね。大抵の神様関係は名無しさんだからそれ系統は無い筈。多分だけどね!覚えることが多くて、モブの脳では色々忘れそうなのくすん!


「もしかして、同名の崇められそうな聖人が居るの?聞いたことないよ?」

「勿論、貴方よ。あたくしの永遠の番にして婚約者、近い未来の夫。愛しのオルガニック・キュリナ」


 …………待て待て待てい。

 何かスゲーうっとり情熱的に告られましたけど、待てい。


『崇める』って、ね?

 滅茶苦茶イコールと世界一繋いじゃいかん単語だよ?

 崇めるってのは、絶世の美女とか……そう、目の前のユディトお姫様とか、ルディ様とか、おにいたまとか……庶民の気配がしないセレブでゴージャスなお血筋と実力の方々にイコールしちゃう単語だよ?

 あ、アロンたんも崇める対象だけどね!今、崇めたらおにいたまによる命の危機が有るから、心の中で!!ええん!


 あ、やっぱ周りの空気的にも空耳だよね?

 皆さん、空耳か?みたいな反応だよね。ですよねー?



「……オルガニック殿を侵略した城に閉じ込めて、信仰対象にするんですか?流石ウサギ姫、発想が独特ですね」

「ジルさあああああん!?」


 そんな空気の中、クラッシュしたのは何と、ジルさんでありました。

 そんな優し気なお顔でシレッと爆弾発言をしないで欲しかったああああああ!!


「……スゲエな、悪役に攫われるお姫様かよ」

「ヒエエ!?何言ってるんですか!?正気にお戻りになってください!!お姫様は貴女様ですよユディトお姫様!!さっきからブライトニアに惑わされないで」

「あたくしはオルガニックだけよ!!ユディトなんかを惑わす趣味は無くてよ!!」

「そぉ言う意味じゃぁなぁいのよぉ、ウサちゃぁん」

「そうですわ姫様!!ウサちゃん、ニックちゃんからいい加減退きなさい」

「煩いわねルーニア!!あたくしとオルガニックは片時も離れてはいけないのよ!!」

「誰がぁ決めたのぉそれぇ」

「離れていたら余計な害獣がくっついたわ!!見張り共のお前等も役に立たないし!!」

「ヒイイ!!良くしてくださる皆さんに何てこと言うのブライトニア!!大体、皆さんはいい歳のボクのお守りでも何でも無いんだからね」


 この場にいらっしゃる皆さんに失礼だから!!

 ツインテールを逆立てる勢いで、ユディトお姫様とルーニアさんを睨まないでくれないかな!?

 悪役令嬢はホント、其処此処に漏れなく喧嘩を売るね!?おにいたまとブライトニアしか目撃してないけど、怖いよ!!他のシリーズの悪役令嬢も怖いのかな!?地味に気になるけど、怖そう!!想像するだに怖いでやんす!きゃん!!


「……あらあら……。ああもう、獣人が絡むと本当に嫌だわ!!獣人の色恋沙汰は本当狂気ね!!」

「まあまあルーニア嬢。お平らになさってください。獣人として普通です」


 普通にそんな普通は嫌だよおおん!!驚きすぎて涙腺緩んで鼻水出そう!!出たかも!!


「いやジルさんも混乱に混沌を放り込むのやめて!!オッサンにお城をあげたいって時点でも全く普通じゃねーでやんすよ!!」

「幾つになってもぉ、お城は嬉しく無いかしらぁ」

「あらあら……少なくとも私は嬉しく無いわよ、ミーリヤ。お城は姫様のいらっしゃる此処で充分よ」

「あぁら残念。ルーニアちゃんはぁお城を貰うのぉ嫌いなのぉ?黒猫卿が悲しがりそぉねぇ」


 何て言うことでしょーうー。

 ……危ない獣人さんが、彼方にも居ることが判明してしまったではありませんかー。


 マジなの、黒猫卿。ルーニアさんにお城をプレゼントフォーハーしちゃってるプラン、建ててたの!?

 あああああ、見る見る内にルーニアさんのお顔の色が悪くなってっちゃううん!!


「何ですって!?あの馬鹿猫、そんな馬鹿な事を計画していたの?!ひ、姫様!!御前を失礼致しますわ!!」

「はわわああああああルーニアさんんんう!?」


 思わずフォーナみたいな声出しちゃったじゃん!!

 唯一のマトモなツッコミ要員があああああ!!

 でもでも、今止めに行かないと、建設されてる可能性も有り寄りの有り!!

 ……彼は仕事の出来るにゃんこ宰相(次期)さんだからね!


「もう建ってる物を売り払えって言うのかしら。酷な女ね、ルーニア」


 何ですとかんですとお!?

 ………さっきから空気がビッシビシ凍っては割れてるんだけど、どゆこと!?

 まさか!ブライトニアってそういう能力もあんの!?無いよね!?ただのAKYだよね!?古い!?死語!?いやどうでもいいけどさ!!


「その話、嘘だろウサちゃん。黒猫卿、城建てたのかよ!?報告上がってねーんだけど!?」

「ユディト、5年程前に館の改修願い有りましたよね、アレですよ。ヤンシーラ家の崩れた古城をちょっと土台を組み直して壁を積み直して、屋根を葺き直して、内装を変えて、家具を新しくしただけだそうですよ」


 ううん?

 ………一瞬いや長いこと考え込んじまったよん。

 アレだ、こう。母の兄の同級生の叔父の従姉妹の子供の隣の人の姉的な感じの紆余曲折的な言葉遊び?それ、他人やんって中々突っ込めない奴ね!


「それ、普通に丸ごと壊して跡地に建てたってことじゃん!?

 それは最早、ピカピカな新築のお城だよね!?」

「そうとも言いますね」


 そうとしか言わんでしょ!!


「あの野郎!!謀反を疑われてもしゃーねー事シレッとやってんな!?て言うか、ジル!!気付いてんなら何故止めねえ!?」

「単に番に貢ぐだけなら良いかと思いまして。本人もルーニア嬢にあげるって言ってましたし」

「だから、一個人に国家褒賞でも無くお城をあげるってのがおかしいだろうが!!」

「ジルさん、獣人さんなのは分かるけど、国家常識としておかしいと認識してください!!」

「ホントお前はこの前からはっちゃけ過ぎるんだよ!!」


 ああ、ユディトお姫様がやっとマトモなツッコミに戻ってくださったあああん!!


「ウサちゃんはぁ、ああいう大人になっちゃぁ駄目よぉ」

「そんなしゃらくさい事しなくてよ」

「でもぉ、ホントにルーザーズとぉネテイレバをぉ侵略しちゃう訳ぇ?他国の誹りはぁ免れないわよぉ?」

「あたくしへの評判がそんなに良いとは思えないし、別に良くてよ。ただ、オルガニックへの誹謗中傷は一族の前で粛清して晒し者とするわ」


 って、目を離してたらこっちもおおおお!!物騒が氾濫してきたよおおお!!


「安心してオルガニック。塔に綱を張って、オルガニック専用の通勤用籠を渡すわ。丁度島同士を渡す舟の応用が出来るらしいの」

「通勤用、籠……」


 それ、滅茶苦茶ロープウェイですし。そんな技術流用出来るの?

 それに何なの、通勤用籠ってパワーワード。

 江戸時代なの?いや、江戸時代に通勤に籠利用してたらセレブだろうけどさ。おサルの籠屋さんが脳内に流れちゃうよ。


 て言うか、そもそもボク、単なる宰相府の下っ端なんだけど。そんなボクが他国でお城に住んでロープウェイで通勤?何でそんな意味分からんセレブを満喫しなきゃならんで候。脂汗がガンガン出て来たよ。アレかな、美少女が膝に積載されてる異次元が巻き起こってるからだよね。

 早く目覚めてくれないかな、ボク。最早異世界転生らしく、お子様スタートでも最早いくなって来たよ。


「コレッデモンまでぇ、お城に加えてぇ塔を均等に建てるのぉ?」

「か弱いオルガニックを歩かせる訳には行かないでしょう。何処でも蔓延れる丈夫なミーリヤとは違うのよ」

「まぁあ失礼なぁ」

「失礼な事言っちゃダメだよブライトニア!ミーリヤさんはか弱い淑女なんだから!!」

「あぁらぁありがとぉニックちゃぁん」

「知らないって、罪ですね。ユディト」

「要らん事を言うな」


 お姫様と騎士様は和むなあ。あっちは本当に仲が宜しいなあ。萌えだなあ。

 ……ああ。

 現実から逃亡したいよおおおおお!!イケメンと美女のラブラブを眺めてる背景と化したいいいいん!


「じゃあオルガニック、少し待っていて。直ぐに侵略して、征服してくるわ。建設目途が立ったら知らせに来てよ」

「いやだから!!………ふみゃぐっ!?」


 口を物理で防がれた!!


 ……だ、誰だね、ティーンエイジャーにチューの後に口を舐めるなんて教えたアホは。

 コレも本の知識なの!?益々何を読んでんのこの子は!!


 紫色の目が煌めいて……笑う姿を前世で見たね。

 これは、悪事を働く時のスチルだね。

 主にフォーナを苛めて、死に追いやる時の……。


「左脇腹と左胸にホクロが有るのを知ってるのは、このあたくしだけよね?」

「は?」


 ホクロ?

 そんなもん誰が興味あるの?ボクの体のホクロの位置なんて。

 イケメンと美女ならさあ。ひゃっほう!エロインフォメーションあざーっす!ってなるけど。

 ボクの体のホクロなんざ、単なる柄ですがな。エロくも有り難くも無いよ。寧ろ知ってキモい方だよ。


「ねえオルガニック。あたくしと、あたくしとの仔ウサギ以外に、ね。

 見せたらダメよ」


 つつ、と脇腹と……左胸を指でなぞられた。

 心臓が止まりそうだ。

 恐ろしい。でも、抗えば、殺される。


 綺麗な紫の目が、弧を描き……目に、何故か暗い光が点っている。



 ぞくり、と背骨を中心に凍るみたいに、体が固まった。

 ……絶対者に対する恐怖っていうの?




 そして、ボクは………。

 他国侵略を止められなかった。


 ああ、ボクは、調停者にも勇者にも成れず仕舞い…………。


 当ったり前だけどね!?

 そういう役じゃ無いでよ!!どうしようもなく強大な力に抗えない無力なの!!自分のポジショニングは理解してる!

 ああ、それって逃げ!?言い訳!?でもヤバたん!なのは解るけど!でもどしたらいいの!?モブに侵略は防げない!!

 だ、だとしたら!

 姑息にもモブに出来ることは……。


「……で、出来ることをせにゃ」


 …………と、兎に角だ。ボクに出来ることと言えば……。

 そうだ、グレゴリオを助けに行かねばいかんくね?

 何で捕まってんのあの人。ホント、何がどーなってるの。夢オチは何処なの!?


「未来のソーレミタイナ皇配殿下は前向きですね」

「ヒイイ止めて!未だ違うから!未だ未だ認めてないから!!」


 必死に否定するボクに、ジルさんがトントンと指で首を示した。


「はい?何ジルさん」

「『柵の噛み跡』が有ります」


 知らない単語だなあ。獣人さん語?


「シガラミノカミアト?って何だ?」

「獣人の番への匂い付けと牽制と威嚇ですね。人でも偶に吸い跡付ける奴居ますでしょう?」


 牽制と威嚇、吸い跡………。

 それって………もももももしかしなくともキスマークですか?いや、噛み跡って、噛み跡ってえええ!?

 …………!?


「何してくれてんのおおおおん!?」

「何で獣人の番は多かれ少なかれイヤイヤ期が有るんでしょうね。認めたら楽に可愛がって甘やかしてあげるのに」

「何故私を見るんだよ、ジル」


 ………獣人さん、マジ怖いよね。

 そして、勤め人用の大浴場を利用しているボクには、死角と隙だらけだ。

 勿論ボクのモブボディをガン見した上ホクロを数える暇人は存在しない。ボクだってマナーだから人様のお体なんて見ない。貧相な体と比べちゃって虚しいからじゃ決してないよ!


 ……しかし、何時見たの、あの子。怖いよう……忘れよう。そうしよう。

 怖いわあ、ブライトニアの蔵書。

 何を吹き込んでくれてんだろう……。

 そして、あの目。

 ボクは、何時から逃げられなくなったんだろう。


攻防戦も虚しく負けましたね。

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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 いつから逃げられなくなったんだろう。 一目会ったその日から、恋の花咲くこともある。 こんなに一途に恋してくれる可愛い娘ちゃんの、どこに不満があるのでしょうか…
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