20.お城はモブの住まいじゃ無いんだよ!!(ニック目線)
お読み頂き有難う御座います。
お城をプレゼントされそうになってパニくるニック目線が続きます。
やあやあハロー!世界は今日も眩しくて……いや室内だけど、脳が混乱して意味が分かんないね!ハハッ!!
…………気がついたら1ヶ月くらい経過してて実は夢だった!と夢オチをがっつり願っちゃう系モブのニックです。
いやあ……最近そんなのばっかだね!!
ボクが何をしたって言うの!?モブらしく、日々の細やかな幸せを大事に生きていきたいと願っただけじゃん!!
モブなりに困難も打ち払おうとして!!失敗してる!?わーってらーあああい!!
今ですね、このモブ界におけるモブなボクの為と称して……他国征服を企む悪役令嬢を目の当たりにしております。
……意味分かんないよね、ボクもだよ。
何でボクの為と称されて他国征服のお話が出ているの。しかもお城をプレゼントされるなんて途方もない意味不明が語り合われているの。
自称モブだけど実は美少年天然愛されキャラへ♪なら未だ話はとっても分かるよ。
推しや愛する人に貢ぎたい心に男女差は無いのも分かるよ。うむ、どんどん推しに貢ぐがええと謎の老人の心意気で応援しちゃうよ。
寧ろアロンたんにおにいたまがお城をプレゼント☆なんてのはとっても……萌えな光景だと最近思うようになりにけり……。いやいや嘘でーす!!未だにちょっと心にぐっさり来るの!!
誓って疚しい心は無いけど!!うんうん、無いったらないの!!ボクは推しの幸せを祈れる強がりな大人オタクだから!!
……帰りたい。そうだ、職場へ帰ろう。
たんまりと業務がボクをお待ちしているに違いないよ。
この、只でさえインドアな体を固めたデスクワーク鈍りを酷使して、今、ひっそりとボク、動き出さん!!!
唸れ、ボクのモブ的ステルス力!!
「オルガニックの呼吸の音がするわ!!」
「えっ、何それ怖」
「そぉ言えばあウサちゃんってぇニックちゃんに関してはぁ、それでぇ分かっちゃうのよねぇ」
……誰か!!ボクを隠蔽できるスキルをお持ちの方いらっしゃいませんかああああ!?
音波無効でボク自体は認識できなくても、ボクの呼吸音で場所特定を出来るって酷くない!?
何なのそのチート力!!酷いわ酷いわモブには太刀打ち出来ないじゃない!!
「バレてますね」
ハハッ、ビビッて腰が抜けちまったい!!手を貸してくれるジルさん、マジイケメンナイト様!!
さっきからボク、2回もお尻を地面に打ち付けてるね!?誰も興味ないだろうけど、痣になってやしないか明日がとっても心配だよ!!
「厄介ね……。只でさえ獣人は能力特化が多いとは言え」
「あたくしのオルガニックに気安く触るんじゃ無いわ。ユディトの家臣!!」
「ちょ、ブライトニア!!ジルさんを叩いちゃダメだよ!!」
立ち上がらせてくれた恩人の手を払いのけるなんて、失礼でしょ!!
「あたくしのオルガニック!ああ、本物のオルガニックだわ」
「ふごはっ!!」
目の前にキレイなお星さまが煌めいたよ!!
都合よく背後にあった柱で倒れずに済んだけど!ボクは勢いつけて抱き着いて来るおにゃのこを受け止められるような脊力は、ナッシングなんだってばああああ!!
一般男子に勢いつけて柱ドン、駄目ゼッタイ!!
「……ウサちゃん、ニックちゃんが苦しがらせている上に匂いを嗅ぐのは止めなさい」
「何よルーニア!!一々刺々しい上に煩くてよ!!黒猫は何をしているの!?さっさと引き取らせなさい!!」
「あらあら、獣人の我儘具合にはキッチリと言わないとね」
素敵!!ルーニアさん!!獣人に物申せるタイプって偉大!!抱いて!!
……いや、冗談でも言える雰囲気じゃ無いね。ギャグでもこの手の文言は黒猫卿に殺されちゃう。
「……ニックちゃん、私の回復術では火傷するでしょうから……。今、適当な手当てが出来る者が誰も居ないけれど後で手当てをさせるわ」
「お気遣いの女神ルーニアさん、ガチで有難う御座います」
ルーニアさんは火属性だからね……。火気厳禁なボクのマイナススキルには致命傷になっちゃうの。
そんな事も覚えててくれるなんて……ヤダ、胸キュン!
「どうしてそんな顔をしているのオルガニック。あたくしの方を見て!!」
「ええと……」
ぐほお。ぐりぐりで背中が更にダメージ!破かれそうだから、片手でボクの服の袷を掴まないで欲すぃ……。いや、怪力じゃ無いんだけど、この子チートだから何でもありそうだから何となくね!!
「オルガニック、さっきの話を聞いていて?あたくし、オルガニックにお花をあげようと思っていたの。だけどお城にすることにしたわ」
「な、何がどうやってお花→お城に発想が飛んじゃうの……」
寧ろお花で宜しいでやんすよ。
何ならその辺の葉っぱの方が、お城よりずっと心穏やかで凪ぎ凪ぎだったよ……。
カムバック、お花!!お城は帰って欲しいな!!
「それがね……」
「ウサちゃんのぉお話はぁ飛んじゃうでしょぉからぁ。マデルちゃんからぁ、仔細説明を書いた書類をぉ見て聞くとぉ良いわぁ」
「相変わらず失礼な女ね、ミーリヤ!!」
マジで?そんな仔細説明が要る位の壮大な話なの!?
いや、お城が出てくるぐらいだからそりゃ壮大か。……嫌な予感がするなあ。この流れは……ボクに更なる驚愕を齎しちゃう気しかしないで候。
「いやでもマデルの事前の説明書類がねーと聞いてて大変だぞコレ」
「そんな大変な書類を作成させてしまってホント申し訳無いです」
「マデルちゃんはぁ、出来る公爵令嬢だからぁ」
そうなんだよねえ。……出来る女性ってホント偉大だよなあ……。
大概このお城で出会った同世代はお仕事が出来る人材ばっかだけどね。その中でも群を抜くと言うか。
凄いわあ。モブのボクも奮起しなきゃって気分になるもん。
「まあ良いわ。あたくしの手助けをさせてやったんだから、マデルも光栄に思うべきね」
「あらあら、躾のなってないウサちゃんね」
「ホント、マジスミマセン……。マデルさんにもお詫びしたいなあ。今どちらに?」
……はれ?何このビミョーな空気。
「マデルはサジュの養父に連れて行かれてよ。如何わしい享楽に耽っているんじゃ無くて?」
「はああ!?何それ?そんな邪推はいけないよブライトニア!!真面目で清楚なマデルさんに失礼だから!!後そんな言い方いくないよ!!」
「そうなの?本に書いてあったのだけれど」
……この子の読書履歴はどないなっとんだよおおお!!どんな本でも読むのは個人の自由だけどね!?健全な青少年の育成にいくないよ!検閲掛けたくなるよ!!
そりゃブライトニアの保護者じゃ無いけどさ!!いや、保護者みたいなもんなの!?婚約者(仮)気分だけど、保護者をすべきなの!?
……思わずボクが苦悩してると、あれれ?周りの皆さんの視線がボク等から逸れているよ!?
「ご、御免なさい。マデルさんの名誉の為にホント叱っときます。お仕事なのに、ホント邪推しちゃダメだよ。ブライトニア」
「あたくし、邪推なんかしないわ。オルガニック」
「えっと、まあ、気にすんな。兎に角マデルは大丈夫だから」
「お子様はよく見てますね。そういう雰囲気に敏いというか。まあ見られようが何だろうが、そう言う雰囲気になったら決行しますよね。分かりますよ」
「フランジール卿ぉ?駄目よぉ、要らない事を言っちゃぁ」
……強ち嘘でもないパティーンっすか?
……スルーしろって空気を送ってくれるユディトお姫様の視線に従っておこう。口紅を綺麗に塗られたお口の端が引き攣ってお出でだけど、スルーしよう。
えっと、……書類ね。うーむ綺麗な字だなあ。見習いたいね!
そして……ボクは椅子を勧められ、何故かブライトニアが膝に載ってこようとするのを阻止しつつ、詳細を知り……。
「えっ、道で亡国の獣人の子供を拾った!?アロンたんがグレゴリオに狙われた!?しかも捕まってるってどゆこと!?ギー卿のお家の系列の宿が半壊!?」
「手下を拾ってお花を買おうと思ったのよ、オルガニック」
……何で、ブライトニアが国外に出てくるだけで……このような被害が巻き起こっているのでしょう。
いやいやいやいや!!読み進める度に訳分かんにゃいよ!?
ブライトニアのお話はもっと分かんないけどね!!
「手下って拾えるもんじゃないでしょ!!えっ、アロンたんとおにいたまのお家に襲撃が!?ガーゴイル目的って……まさかレッカたんの身に何か危険が!?」
「あんなのは馬鹿兄貴の家に居ないわ、オルガニック。全く、本当に厄介なガーゴイル。ネテイレバに突っ込めば良かったのに。そればかりは馬鹿兄貴に同意してやってよ」
「いや、それもどゆこと!?」
何故レッカたんがネテイレバに突っ込まれる羽目になってるの!?
実母さんの故郷でも、どー聞いても無理矢理ぽいよ!?放り込まれる本人の意思関係無さそうだよ!?
「レッカは、サジュ・バルトロイズの花嫁になる事になったそうだぞー」
「はえ!?」
……初耳とインパクトが過ぎやすぜ。ユディトお姫様の涼やかなお声でも大衝撃で候。
いや、確かにフラグは立っていたけどね!?仲良しさんオーラが漂っていたけどね!?
サジュ君とレッカたんがハッピーウェディング!?騎士様と悲劇のプリンセスのご結婚!?何てドラマだ、乙女ゲームの様じゃ無いか!!
……是非とも参加したいで候。嫌がられる可能性も有るけど、先ずはおめでとうお手紙を送らなきゃ。
「あんなのに先を越されるなんて不愉快ね、オルガニック。お城を建築するのは時間が掛るから、先ずは既存の城で式を挙げましょう」
「……ブライトニア、ボク達に必要なのは時間だって言ったよね?て言うかお城から離れようよ」
「だって、ネテイレバならコレッデモンにも近いわ。通勤は困らなくてよ」
「国境を股にかける通勤はちょっと……。て言うか、ボクをどうしてお城に引っ越しさせたいのブライトニア。
今の住環境に満足しているんだけどな!?」
「だって、ソーレミタイナには帰らないって言ったわ!だったら他国を征服して自治領にするしか、一緒にオルガニックと住めないじゃない!!」
……何その超理論。
思わず手から力が抜けて書類がハラハラ落ちて……ブライトニアを膝に乗らせてしまったで候。
「それに、こんな所に住まわせておけば、あの余所の番女のように集る慮外者が現れるに決まって居てよ。あたくし、オルガニックにそんな苦労は掛けたく無いわ」
「……いやまあ、確かに迷惑はしたけどね……」
「でしょう!?大丈夫よオルガニック。体に傷はつけていないけど、死なない程度に心を捻っておいたから!!」
心を捻っておいた!?
……どゆこと?キエラさん、の事だよね?あの、えっと……何してんすか。
そっと、視線を泳がせたら……ミーリヤさんが拾ってくれた。
有難いんだけど、その痛ましいものを見るような翡翠の麗しい瞳が恐ろしいよ、ボク。
「……無事ぃ、心折られてぇチュイ卿の元へぇ行ったわぁ」
「獣人の番的には丸く収まってるし、良いんじゃないですか?」
「キエラ嬢、明日仕事に来ねえとか無いだろうな」
「心労は癒して貰えるでしょうけど……獣人は巣穴から番を出すことを渋りますからね」
……どうしよう。結構迷惑を掛けられたにも関わらず、キエラさんの無事を今、とても祈りたくなってしまったで候。
「そうね、此れから建てるお城もあたくし達の巣穴よ。気楽に考えて良くてよオルガニック」
「お城と言う時点で無理で候。て言うか他国侵略するの、やめよう!?紛れもなく悪事じゃん!!」
て言うか他国を侵略して征服するって、二次元以外で初めて聞いたよ!!
色々ボクの死亡フラグが乱立する世界で物騒だと思ってたけど、今って平和めな世の中だよね!!
いや、でも目の前のこの子が戦乱を巻き起こそうとしてるけど!!
「どうして?ネテイレバは今、世界的もに有害よ?実入りが無いから何処も手を出さないだけ。
あたくしが善意で征服してやるんだから、寧ろ他国からは感謝されてよ」
「内々にはする。表彰はしねーけどな」
ユディトお姫様のお言葉に、ブライトニアが胸を張ってニヤッと笑っている。……可愛いけど、実に悪役令嬢だよね。
いや、確かにボクも新聞では読んださ。昔は良い国だったらしいんだけど……。丁度あの王女ローリラの世代からだね、治水をサボるわ、国は荒れるわ、過去の栄光を取り戻そうと過剰なまでのガーゴイル信仰に走ってるわ……。
「まぁ、ウサちゃんが兼業でぇ統治するのはぁ大変よぉ?
お人形のお家をぉ増やすのとはぁ訳が違うんだからぁ」
「だから手下を使うんじゃ無いの」
「でも良いですよね、番を閉じ込める為の城。俺も気になります。俺ならそうですね……。俺と、子供と友人しか入れないようにします」
「あら。話が分かるじゃない臣下」
「そういう戸締り関係も大事ねぇ。確かにそぉ言われるとぉとっても気になるわねぇ」
さっきもチラッと思ったけど、……ミーリヤさんは獣人さんじゃ無いのにノリノリなの、どゆこと!?ルディ様逃げてーー!!と念話を送れないボクをお許しください!!
ヒイイ!恐ろしい監禁計画が目の前で練られている!!
他国の侵略より、ボクの自由と安寧が脅かされそうになっている!!
「ユ、ユディトお姫様……」
「いや、ジルは私より弱いし、私は閉じ込められない……筈」
「何故ちょっと満更でも無さそうなんですか!?失礼を承知で申し上げますけど、正気に戻ってくださいユディトお姫様!!」
「そうですわよ姫様!!ニックちゃんの言う通りです!」
マトモに見えるのに!ブライトニアだけへのツッコミだった筈なのに!!どうしてなの!?
ブライトニア以外にも、意外と恋する人に貢ぎたいタイプが多いようですコレッデモン王国。




