2.ひとの良い姉弟とひとの悪い王子(レルミッド目線)
お読み頂き有難う御座います。
サジュの家に着きましたが、どうやら彼の心配な彼らは不在なようです。
俺はサジュに引っ張られて街中を練り歩く羽目になった。
前ではサジュのねーちゃんが金色の生き物と化したレッカを担ぎながら歩いてやがる。
で、隣には歩いてるだけでガン見されるルディがいやがるだろ。
……注目?死ぬ程浴びてるに決まってんだろ。
何だこの拷問。ふざけんなボケエエエ!!俺全く関係ねーだろ!!
くそっ、サジュの家結構遠いな!!早く着けや!!
で、死ぬ程ジロジロ見られて不愉快も限界に来た所でサジュの家に着いた。
……周りもそーだけど立派でデケー家だな。
で、そんな家にこの変な連れ合いがフツーに入って行ってる様がまた注目浴びてんだよ。
……俺が気にする事じゃねえが、ご近所付き合いとか大丈夫なのか。俺が近所の奴ならこんな団体家に入ってったらフツーに引くかも知れねえ。
「……たっだいまー……。誰もいねえ?」
コソコソすんなや不審者か。
何で自分ちでそんなヒソッと喋る必要あんだよ。つかガタイがデケーから全く隠れられてねーし、気配も消えてねえよ。
仕事なら隠密行動に向かねえ訳でもねーのに、何なんだよその不審さはよ。
「お帰りなさいませサジュ様……と、お友達……で御座いますか?……!?」
あ、家の奴に見つかってやがる。まあそーだよな。フツーに玄関から扉開けて入ってんだもんな。
何でコソコソする必要があんのか意味分かんねえぜ。
そんなにマデルねーちゃんと鉢合せすんのが嫌か。分かんねーな。
しっかし、家の奴にマジ不審な目で見られてんな……。
た、確かに面子がビミョーだけどよ……。
結構怪しいっつーか……道端でも騎士団の調書取られてる最中も歩いててもジロジロ見られたしな。
つか、サジュのねーちゃん、レッカ担いでんのに息も切らしてねーしよ……。……よく考えなくてもおかしくね?人?1人担いでんだぞ?非常識だなコイツ。
「あーえっと、その……一部友達で一部身内で……あー、うん?」
「お、お邪魔しますわお久しぶりです執事さん!!私、サジュの国元の姉のドリー……ドートリッシュです!」
サジュのねーちゃんがスゲー中腰の……何だアレ、お辞儀か?してんのも気になんな。つかレッカ担いでんのによくそんな中腰取れんな。重たくねーの?
……サジュのねーちゃんだけあって地味に只者じゃねーな。どーでもいーけど。
サジュがヤケに言い難そうなのは、ルディとレッカの説明みてーだが。
特にレッカ。何か見た事ねー不思議な生きモンだし……未だ金色だしな。
だけど、執事の視線がびたっと……貼り付いてるのは、レッカじゃねえ?
何でだ?レッカが一番ツッコミ所だと思うんだがな……。
って、見てんの俺……じゃなくて、横?
ルディか?何でだ?
「ジェラルディーヌお嬢様……!?」
「うん?」
お嬢様……?お嬢様呼ばわりされそーなの、そんなの居たっけか?この場に?
義妹でもいりゃー言われそーだが、この熊ねーちゃんじゃねーよな。サジュの身内だから知ってるだろーし大体お嬢様って見た目じゃねーし。
ん?待てや。ジェラルディーヌ?どっかで聞いた名前だな。
主に横にいるキンキラの……首を傾げてる奴が……えーと、そんな名前だったような。いや、ちょっと違うか?でも最近聞いたぞ。
「ふむ、……僕の母の名前だな」
「ハァ!?ルディがお嬢様かよ!?」
「何ですって!?王子がお嬢様!?いや、確かに顔だけは滅茶苦茶綺麗だけどこの白フード!!」
「姉さん!!」
コイツ俺よりタッパあんのに!?お嬢様に見えるか!?
いや確かにツラは綺麗だけどよ!!どー見ても野郎だろ!!
っていやそうじゃねえ!其処じゃねえよな!?
「オイそーじゃねえだろ先輩も!!ルディ様がお嬢様に見えてたまるか!?いや、そうだよなルディ様!!まさかアンタ迄アレッキオ卿みたいな事はねーよな」
……マジかよ!?あんな意味不明な奴がもう1人!?
って、見た事ね―けどそうなのかよ!?
思わず見たら思いっきり嫌そうなツラしやがったな。心底嫌がってやがる。
「誰がだ。僕がアレキと一緒だと?そんな不愉快なことが有ってたまるか。僕の性別は産まれた時から1つで男だ」
「……だ、だよなあ」
性別がどーのよりアレキちゃんと被るのが嫌っつーのがルディらしいが……。
「要するにだ、この執事は僕が母に似ているから一瞬見間違えたんだろう」
「そそっそ、そうでございます!!大変失礼を致しました!!その、……殿下、の御前にて本当にご無礼を」
「構わんぞ、僕は一応伯父上の家に来たからな。殿下とは呼ぶな」
「くっ……そーだった!!この人オレの義理のイトコになんだよ、うっわー……」
「目を逸らしたかったわ何てことなの……!!」
苦悩の仕方が派手だなコイツら。
どーでもいーけどツラ似てねーのに凹んでる感じがソックリでビックリすんぜ。
「滅茶苦茶打ちひしがれてんなよ、失礼な奴らだなオイ」
「全くだな、場所が場所なら不敬罪で叔父上とマデルから厳罰が下った上に禁固刑でも下りそうだぞ」
「ヒエエエエエ!!禁固刑は兎も角マデル様にご報告それだけは!!ご勘弁願いたいわ!!ご、御免なさい白フード様!!」
「マジすんませんでしたルディ様!!」
「だから白フード様って何だよ。オバケみてーじゃねえか!!」
「ふむ?……ああ、確かに僕に似ているか?」
何処見て納得してんだルディ!?
ま、まさか……まさかのまさか、コイツの母ちゃんが其処に!?
嘘だろオイ!!ふざけんなボケ!!
「何で何処も誰も居ねえ所を見て納得してんだボケエエエエ!!」
「えっ!?ええ!?ど、どなたかお出でに?!」
「うっわ、まさか、御養父殿の妹……ルディ様の母上のオバケか!?居るんですか!?」
「何ですって!?まさかのこんな素敵なお家がオバケ屋敷なの!?」
「いや、肖像画が其処に有るぞ」
「先に言えやボケエエエエ!!」
ルディが指差した先……。
ろ、……廊下にルディの母ちゃんの肖像画が飾ってあんのを見ただけかよ!!
ややこしいんだよ!!
……お、オバケじゃなくて本当に良かった!!いや、別に怖くねーけど、別にな!!
オバケなんて居ないに越した事ねーだろ!!身内!?会った事ねーし!!
金髪の……確かにルディに似てるか?色合いはソックリだな。
「まあ、居るかも知れんが……その辺りには居ないぞ安心しろ」
「ああああああ安心できるかあああああ!!」
「えっ、えっ!!ちょ、物理が効かないのは困るわね!!」
「攻撃する気かよ姉さん!おい先輩怖がんなよ、害が無えんならいーじゃねえか」
「怖がってなんかねーよボケ!!」
……そうだ、普通に怖くねえ!!だからルディ、空中に視線固定すんな!!何もいねえだろ!!
……俺には何にも見えねえ。見えねえモンは居ねえからな!!
「それで……そのええっと、生き物は……ドリーお嬢様のペットですか?」
「あっ忘れていたわ!!ええと、ペットでは無くてえーと……」
「一応獣人だ、寝かせる所はあるか?」
「獣人で御座いますか……。このような色の獣人は初めて見ましたな」
まあ、金色だもんな。金色自体珍し―けど……そーいやルディも金色でキンキラだな。
何かあんのか、金色って。こんなのが矢鱈居たらド派手で目立ちそーだな。
「其処に長椅子あっから姉さん、寝かしてくれっか?」
「た、高そうね……」
レッカをサジュのねーちゃんが寝かしてる間、ルディが一枚の肖像画をじっと見ていた。
さっき言ってた母ちゃんの肖像画か。
「成程な、似ているか?」
じっくり見ると……これで血が繋がってないんなら詐欺だろって位似てんな。
カッコは貴族の女にしちゃ地味目っぽいか?だけど何つーか、キラキラした……絵に描いたようなお姫様っての?そんな感じだな。
ルディを女にしたら……想像つかねーが、こんな感じになるのか?
いやでももーちょっと気が弱そうだから、雰囲気が全然違うか。
ああでもルディの母ちゃん、俺の母ちゃんの妹なんだよな……。そう思うと全然似てねえな。兄貴のオーフェンのオッサンにも全く似てねえし。中身は知らねえけど。
「この美人、ルディ様の母上なんだな……。滅茶苦茶美人だなーっつー位で全く気にしてなかったけど」
「サジュ様……、オーフェン様がいらした日にご説明されてましたよ……」
「悪ぃ……。家が豪華すぎて緊張し過ぎて聞いてなかったかも」
「た、確かに……分かるわ!貴族のお家って感じで未だに緊張するもの!」
「……そーかよ」
興味ねーなら聞いてなくても仕方ねーけどよ。
つかコイツら、何時まで玄関で駄弁ってんだ。いい加減何にもしねーで立ち尽くすの疲れて来たぜ。
「豪華?どちらかと言うと質実剛健ではないか?レルミッドのアルヴィエ家の方が華やかだな」
「あー、別にまあ……今厄介にはなってっけどガチの俺んちじゃねーし」
「何ですって!?赤フードのお家の方が豪華ですって!?よ、呼ばないでよ!?壊したら怖い!!」
「呼ばねーよ」
それで何でコイツ呼ぶ流れになんだよ。絶対呼ばねーし。
「う、うう……」
「……あっ、目が覚めたみたいだわ!」
レッカが唸ってるかと思ったら、ギョロ目が目を開けた。
……よく聞いたら確かにレッカの声っぽいが、ホントに分かんねえな。
足もだが、手の鉤爪もスゲー。此れで力任せに殴られたら死ぬな。
「……こ、此処は……何処?です!?」
「遅いお目覚めだな、レッカ。王城からどうして出た?僕の邪魔をしてくれた責任はどう取ってくれる?」
「!?いっ、お、王子!?」
「オイ……ルディ」
のっけからお前は……。
ガン付けられてレッカが滅茶苦茶ビビってんじゃねえか。……ってレッカ、この格好だと結構凶悪なツラだな。魔物みてえ。
えーと何つったっけコイツの種族。最近獣人と矢鱈知り合いになるけど、覚えてらんねー……。
「あー、えーっと……此処、オレんちなんだけど」
「サ、サジュ……」
「な、何が有った?王城でまさか苛められてるとかか!?」
「ノエミ・クレモンティーヌ伯母上が居る時点でそれは無かろう」
母ちゃんが?……マジか、そんな権力あんのか母ちゃん。
家の中だけじゃねーのかよ。地味にスゲーな。
まあ、オッサンくらいだったら叱りとばせそーだよな……。気性荒えから。寧ろ大人しくしてるのが想像つかねーって言うか。
「どうせ、ネテイレバの小者でも入り込んだか?いかんな、工事中だと隙が多くて」
「!!そ、その、その通り!です!!」
……ネテイレバって何だ?国名か?
そーいやルディが作った家系図に乗ってたな。えーと、レッカの産みの母親の……あの王妃のババアの実家……だったよな。
てことは、あの王妃のババアの関係者がレッカに何かしたってことか?
マジかよ。どっから嗅ぎつけたんだ。アイツ、死んでも迷惑なババアだな!!
「何ですって!!って、ネテイレバって……何処だったかしら。東の方向?サジュ知ってる?」
「あーえっと、北東?だっけか?」
「其処の姉弟は後で執事に世界地図でも見せて貰ってくれるか。其処の執事、名は?」
「バ、バースで御座います。殿下」
おお、後ろに居たのか、家の奴。
急に話振ってやんなよ、直立不動になってんじゃねえか。
「うん?何を畏まっている。オーフェン伯父上の家に遊びに来たルディ君扱いでいいぞ」
「そ、それは……じ、事実では御座いますが、その……」
「え、えー?そ、それ……オレが御養父殿に怒られる感じじゃねーんですか!?」
滅茶苦茶どうしようかって目線やってっけど、サジュも困ってんな。
オーフェンのオッサンは……どーかねえ。礼儀に煩そーだよな。
しっかし、どーしたもんだ?ルディは何をしたい?俺が口出してどーにかなるような事か?
「いいからそう扱え、命令するぞ?」
「は、はい!!畏まりましたルディ様!!」
「サジュ、いいのかよ……」
家の奴を差し置いて思いっきりヌシ面してやがるけどよ。
こーゆー所、マジ偉そうだなコイツ。何だよ親戚としていさせろって命令……。
「いやフツーにルディ様に逆らえるの、先輩とアレッキオ卿しか居ねーから」
「こここ怖いわ。王子なのに姫様と同じ感じと言うか、偉い風格というか威圧感をとっても感じてしまったわ……」
「こ、怖、いです!」
いやお前らも結構に結構だぞ。特に姉弟、力業で押せそうなモンなのに……。レッカも見た目だけならスゲー怖く出来るだろ。
ルディに其処迄ビビるようなもんか?
「失礼だな。兎に角だ、レッカは元の姿に戻れそうか?」
「えっ、その……、た、ぶん?」
「多分?」
ルディが眉を寄せてレッカを見下ろしてやがる。
……無駄に威圧感がスゲーけど、ワザとだなコイツ……。
「ごごごごご!!御免です!その、変身したのが久々で、時間が必要かも!です!」
獣人って分かんねえな。最近見たフロプシーは……どーだったか。
気分で変身してたようにも?いや、キレても変身してたか?
って、オイ……。そーだよ、フロプシー……アイツ何にも着てなかったじゃねえか!!
「……オイ、服かなんかねーの?コイツ、玄関で元に戻ったら」
「っ!!そ、そーだった先輩!!バース!!何か包むモン!!戻ったらヤベエ!!」
「はっ!?ハイ!!」
「えっ、戻ったら何なの?」
「いや、服が……」
くそっ、何でサジュのねーちゃんが其処で突っ込むんだよ!
フロプシーの……言い辛えな!!またコイツドスケベだの叫ばれんぞ!!
「服?です?えと、多分、着てると思います。服脱がないで変身、出来るです」
「……ハア?」
「え!?」
「獣人は……変身の際に服が消失したり、破けたりするものではないのか?」
「え?子供だと、それも感覚が掴めなくて、そうなったりするかも、です。でもある程度の大人だと、コツが……分かったり教えて貰える、です」
「「「……」」」
何だとぉ!?
脱がなくていい!?着たまま、変身出来るって事かよ!?
つーことはだ。
蝙蝠ウサギの獣人……フロプシーは単なる露出狂なのかよ!?
ふざけんな何考えてんだアイツ!?いや、ソーレミタイナは!!
……野郎3人で何とも言えねえ顔になっちまった。
いや、思い出したとかじゃなくてな。……くそっ!!今度会ったら文句言ってやるけどよ!!
…くそっ、無駄に顔に血が上って来やがるな!!
「えっ、何?何なの?どうしちゃったの3人とも!!不審よ!?」
「いや何でもないホント何でもねえんだ姉さん気にしないでくれ。それよりレッカだ。レッカ、何が有ったんだ?拉致されかけたとかか!?」
「それが、その……お、拝まれて」
……ハアン?
拝む?レッカをか?
コイツ拝まれるような何か有るのか?
「知り合いなのか?」
「ネテイレバのなんとかって名乗られ、たです!でも知らない人です!!」
「……お、拝まれ?拝むって、貴女をなの!?ど、どう言う事なの!?そのネテイレバって所では初対面の貴女を拝む習慣が有るの!?」
「し、知らない、です!!でも急に平伏されて拝まれて……お札みたいなのを捧げられて!!」
「札?何だそれは」
「わ、分かんないです!き、気持ち悪くて!!だ、だから飛んで逃げた、です!!」
き、気持ち悪ィな。初対面の人間が札持って拝みに来るだぁ?
確かにそりゃ滅茶苦茶気持ち悪ぃな。逃げたくもなるのは分かる。
……ドゥッカーノが好きでも嫌いでも何でもね―けど、何処の国も訳分かんねえな。
「……ふむ、それでご利益か……。成程な。確かにネテイレバには初代王がガーゴイルだったせいか、雨樋守護王ガーゴイル信仰が有る」
「あ、雨樋……守護!?王!?ですか!?」
どんなんだよ……雨樋で守護で王かよ。何をどうくっ付けたんだそれ。
いや、俺のしょーもない渾名もスゲー微妙……ああああ!!サジュが同じこと考えてやがんな、気の毒そうな顔で見んなウゼエ!!
「雨樋……?雨樋って、あの屋根にくっついてる奴よね?強そうなんだか弱そうなんだか分からないわね……雨樋の何を守るのかしら」
「でも先輩の方が何つーかこう、うーん。どっちも訳分かんねえよな」
「こっち見んなサジュ。つか呼んだらブッ飛ばすぞ」
「最近王家がガタガタで国民を熱狂させるネタが無いんだろうな。金色のガーゴイルに学業成就や病気平癒を祈ると叶う、黄金を授かる……等、眉唾物を吹聴していると聞いたぞ」
何だそれ胡散臭えな、マジか。
誰が流してんだよ、碌でもねーな。
「そそそそそそんな力無い、です!!私、単なる孤児!!それに、王家って!」
「金色だからな、関係無いとは言わせないぞ。しかしもうバレたのか、予想より早いぞ」
「そ、そんな……」
レッカがブルブル震えてやがる。
……真剣なんだろーがこのツラだと、どこもかしこも金色だしツラも怖えから顔色も分かんねえな。
「恐らく、レッカを連れ出して担ぎ上げようとする派閥、レッカを害しようとする派閥が群れを成して……色んな手を使って入り込むだろうな」
「……!!」
「な、何て可哀想なの!!助けてあげなきゃいけないじゃない!!ちょっと、おう……白フードに赤フード!!アンタ達身内なんでしょう!?何よそのシラッとした顔は!!酷いじゃ無いの!!」
「あ、有難う!!えっと!いい人だね!!」
「いいえ!レッカだったわね、私はドリーよ!!王族は腹が立つけど、状況が状況だもの!!困ってる人は助けるべきよ!!」
「ドリー、い、いい人!です!!」
いや何で俺らがサジュのねーちゃんに怒鳴られんだよ。マジで暑苦しい奴だな。お前全然レッカに関係ねーだろうが。
……アレ?でもこのねーちゃん、どっちか言うとアレキちゃんに近えよな?
こんな安請け合いしていーのか?良かねえだろ。
「ああ、サジュの姉君。義憤に駆られている所悪いが、アレキは彼女を毛嫌いしているし、目にも入れたくないようだぞ。君の夫はアレキに仕えているんだろう?」
「……!!ななな何ですって!?」
「後レッカ、君には既婚者を惑わすスキルが有るだろう。何故言わない?良くないと思うぞ」
「そ、それは!!」
「其処を、だ。よく考えて助け舟を出すと良いぞ」
……心底嬉しそうにキラキラしたツラで言う事じゃねえな。目に見えてサジュのねーちゃんとレッカがガーンってツラしてんぞ。
どっからどう見ても弱者を見棄てる悪者の科白っぽいのに、そう見えないってのがなあ。ツラのせいか。得なんだか損なんだか。
「……先輩、助けてやってくんねえ?流石に放置は酷えだろ」
「そ、そうよ赤フード!!」
「ハア?俺?」
何で俺だよ。
つかこの姉弟、マジで人が良いな。王族嫌いなんじゃねーのかよ。
ガーゴイルは水に属するようです。懸魚みたいなもんですかね。
折角穏やかに暮らせそうだったのに、王妃のせいでレッカも災難です。