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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
蝙蝠ウサギと仲間達編

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12.義兄さまは何をご存じなの?

お読み頂き有難う御座います。

義兄さまがグレッグを伸し終わった宿から始まります。

 グレッグさんが義兄さまに痛めつけられたその後、騎士団の方々が踏み込まれたの。

 どうやら義兄さまが事前に手配をしていたらしくて……。

 いや、それなら一緒に入って鎮圧してくださったら良かったんじゃ無いの?って喉元迄出掛かったんだけど……助けて貰ったお荷物には突っ込む権利は無いわね。

 多分何かこう、事情が有ったんでしょう……。私には分からない感じの。ええ。多分そうよね。

 それにしても騎士団の騎士様の人数多いな。まあ、あれだけドカバキやっていたんだから、他にも通報が行くわよね。

 義兄さまの他は誰も割って入って助けてくれはしなかったけれど。危険な目に遭った身としては、ちょっと恨みがましく思ってしまうわ。


 でも……騎士様に引き渡される為に、漸く義兄さまがグレッグさんから退いてくれて良かった。

 無力化させるのが目的とは言え、何で頭を踏むのよ!!甘いんでしょうけど、抵抗できない人の頭を踏むなんて……似合っているのがまたどうしようもない!!

 ……でも、まだ義兄さまの仕業としては、人道的なのかしら。


「それで此処はどう吹っ飛ばされて」

「気が付いたら意識が……」


 現場で取り敢えず従業員さん達のお話を聞いておられるみたい……。検証が目の前で繰り広げられているわ……。

 兎に角、グレッグさん以外怪我人は居ないみたい……。私のバトル知識と動体視力では確認できなかったけど、義兄さまに物凄く手酷くやられておられるグレッグさんは、まだ目を覚まされない。

 ちゃんと甥御さん達をお返ししたいし、ちゃんと取り調べに協力しなきゃいけないわね。


「ねえアローディエンヌう、怖かったでしょお?やっぱり僕がずうっとずうーっと近くにいる方が良いでしょお?お出掛けは僕と一緒にしようねえ?」

「ええ、それに関しては感謝してますけれど、お出掛けは他の方ともしたいですわ」

「ええええええ!?何で!?何でええええ!?」

「はあ!?煩いです義兄さま!!ドサクサで擦り寄らないでくれます!?」


 義兄さまに後ろから抱き着かれて苦しいんだけど!!耳元で煩いしゾワゾワする!!

 ああもう、何をしでかしてくれてんのよ!!騒いでしまったじゃ無いの!!

 騎士団の皆さん迄こっちを見てるわ!!


「グブブブブミイ!!」

「は、はわあ!!オールちゃん、お、お平らに!!」

「……ウサちゃんーはー元気ねー」


 間もなく目を覚ましたブライトニアを力いっぱい宥めるのが大変っちゃあ大変だけど。

 マデル様も少しご気分が悪いようで椅子にぐったりとされたたまま。

 こんな事思っては不謹慎だけど、少し解けた白い菫色の御髪が顔に掛かられているお姿が色っぽいわね……。


「マデル嬢」


 おおう!?

 何処かで聞いた渋くてちょっと怖いカッコいい美声!!と、思ったら何と!!バルトロイズ様がお出でになったのね!!

 ……やっぱり迫力と華が有るわねえ。不謹慎にもそう思ってしまうわ。

 カッコいい!!そう、身長がとても有るし、騎士様カッコいいの!!

 それ所じゃないと言うのに……頭悪いコメントしか出て来ないな。久々にお会いしたからかしら。

 はっ!!そうよ、お会いするの久々じゃないの!!


「義兄さま離してくださいな。バルトロイズ様、ご無沙汰しております。この度は私の浅慮によりご迷惑をお掛け致しました」

「とんでもない。ご丁寧に、ユール夫人。マデル嬢、マデル?」

「……」


 あれ?どうなさったのかしら。マデル様が珍しくポカンとされているわ。

 ポカンとお口と目を大きく開けておられても色っぽいって凄いわねえ。私がやったらアホ面になる自信しか無いわ。まあ、私の表情は常時動かないし、良いんだか悪いんだか。


「ま、マデルさん?ど、どう為さいました!?はわ、もしかしてご気分がお悪いんですか?」

「何?魔力封じの影響が未だ有るのか?マデル?」


 ……御心配されているのね、素になっておられるご様子だわ。

 て言うかおふたりきりの時は呼び捨てなんだなあ。


「いえ、その……ええと、きゃあ!?」

「はわっ!!」

「まあ」


 あっ!!

 バルトロイズ様がマデル様をお姫様抱っこされている光景が目の前に!!

 何て素敵な光景なの!?マデル様はそんなに小柄では無いけれど、身長差が有るから見ごたえが有るなあ!!


「はわあ……」

「ちょ、オーフェン様!?な、何ー!?」

「貴女がそんなに疲れているのを見るのは久々か?魔力封じとは中々に興味深いスキルなんだな」

「え!?ちょ、はぁ!?な、何を言ってるの離し……!!」

「ブビイ」


 いやあ、いいなあ!!久々に目の前でイチャイチャしている光景を見られるなんて外に出て良かったかも!

 まあ、この状況はそんなの呑気に思ってる場合じゃないんだけどね!!でも!ちょっと、さっきの殺伐から脱却して心を潤したいって言うか!!


「アローディエンヌ、アローディエンヌったらあ」


 何なの……。引っ張られ過ぎてガクガクするんだけど!!

 ……さっき退いて貰ったのに何でまた義兄さまが齧りついてんのかしら。

 目の前の素敵な光景に夢中で気付かなかったわ。私が鈍いんだけど義兄さまの気配、無さ過ぎやしないかしら。


「……何ですか義兄さま、今いい所なんです」

「えー?アレが羨ましいの?じゃあ僕に抱っこされちゃおう?」


 私はおふたりの世界なイチャイチャが傍で見たいだけで、義兄さまに抱っこされたい訳じゃないんだけど。

 いや、まあ時と場合には寄るかもしれないけど、今はそんな気分じゃ無いし!!周りに人一杯居るし!!


「いや、何でですの。されません」

「はわ……」

「ブグバッ」


 ああ!!

 目を離した隙にマデル様がバルトロイズ様に抱きかかえられたまま出て行かれてしまったじゃないのおおおおお!!折角素敵な大人の恋愛って感じの光景だったのに!!あああ!!


「マデル様が具合悪いんだからとっとと連れ帰って貰った方がいいじゃない。大体やりにくいったらないよあの人。邪魔だし」

「何てこと仰いますのよ!!」

「それよりい!!怖かったでしょお?もっと僕に縋りつこう?」

「……ブギギ!!グゲェ!!ブブググ!!ギャア!!」


 微笑んで私に顔を寄せて来た義兄さまに、ブライトニアがいきなり伸びをして前足パンチを繰り出した。

 たしって、義兄さまの鼻に当たった……みたい。


「は、わああ……!!」

「に、義兄さま……大丈夫ですか?」


 ブライトニアの今の見た目は蝙蝠ウサギだから可愛いしダメージも……無さそうんだけど、だ、大丈夫かしら。魔法を使った訳でも無さそうかな……。

 でも、ブライトニアは耳を逆立てる勢いで鼻を鳴らして唸ってる。

 義兄さまの方は……うん。駄目かな?怒ってる?肩越しに振り返ってみたら、義兄さまったらかなり怒ってるわね。

 ……ああ、もう!!本当に仲が悪いな!!


「……さっきから煩いなフロプシー。大体お前が獣人の子供を拾うなんて考え無しの奇行のせいでこんな大惨事を起こしたんだろ。アローディエンヌを巻き込むし!!ホント迷惑だよ燃やしたい!!」

「熱っ!!は、はわあ!!ひ、火花が!!」


 あああ、チカチカ光ってるし!!

 もう火花が出て来たの!?グレッグさんの魔力封じとやらが効いていたから出て無かっただけだったの!?あんな怖い目に遭ってて何だけど、今は義兄さま限定で封じて貰いたくなって来たわ……。


「グゲゲゲ!!」

「止めてくださいな義兄さま!!大体私があの子達の手当てをしようって言い出しましたのよ」

「そりゃそうだよ。アローディエンヌが申し出ない訳ないじゃなあい。その優しさに付け込むフロプシーが極悪非道なんだからフロプシーが全部悪い」

「はわわ!!あ、アレッキオさんもオールちゃんもは、話し合いましょう!?け、結局何がどう言う事なんでしょうか!?」


 そ、そうだった。フォーナには何の説明もしてなかったんだったわ!!


「はあ?綿毛神官に説明する義理なんか無いね」

「はわあ!!!」

「ちょ、義兄さま!!あのねフォーナ、ブライトニアが怪我した獣人の子を保護したのよ。その子の中にグレッグさんの甥御さんがいらっしゃったの。それでお声を掛けて来られたんだけど、ブライトニアへのナンパだと思い込んでしまって……」

「どうせフロプシーが何も聞かずに追いやったんでしょ。アローディエンヌに悪い所なんて欠片も無いよ。薮医者とフロプシーが全て悪い。だから蝋燭野郎オルガニック・キュリナに女が言い寄るんだ」

「ギャガグブブケ!!?」

「あ、あのー……義妹姫に公爵、レルミッドの家にいるお嬢さん。お話を聞かせて貰えませんかね?」


 ……はっ!!騎士様達に囲まれて様子を伺われていた!?

 に、苦笑いされてしまっているわ……。は、恥ずかしい……!!

 ああ!!あの方は、テイト隊長様!!そ、そうよね。バルトロイズ様がお出でなんだから隊長様がいらっしゃるわよね。


「も、申し訳御座いません……。何なりとお答え致しますわ」

「空気を読めない騎士だね」

「いや、充分読んだでしょう……此方も仕事なんですからね。

 はい、このどうなってるんだか分からない程凝った拵えの連弩は調べ終わったのでお返ししますね。折れた剣の方は」

「そっちも持って帰るよ。使用人に取りに来させるから欠片でも処分したら酷い目に遭わせるよ」

「はい承りましたから」

「失礼でしょう義兄さま」

「ふーんだ」


 ……迷惑を掛けて置いてこの言い草でしょ……。

 テイト様が義兄さまの失礼な物言いにも関わらず、弩を返してくださった。

 ……あの石壁に凄い数の穴を開けたの、この弩のせいか……。いや、助けて頂いたんだけど何かしら、あのやり過ぎ感は。何処に持ってたんだか分からないけれど、矢で石壁に穴が空くのね……。

 義兄さまのチートのせいなのかしら。武器使っても強いんだなあ。


「と言うか態々丁寧に聞こえるように説明してやったんだから聞いてたでしょ。これ以上何か聞きたいんなら別料金を取るよ」

「何を言ってますのよ義兄さま!!」

「口を割って頂くのは高そうですね。しかし公爵、何で貴方と有ろう方があんな剣の振るい方を?」


 テイト様は義兄さまをじっと見ているみたい。

 ……?どういう事?テイト様は義兄さまに対して、何か違和感を感じられたのかしら?


「だから?余計な事言わない方が良いよ」

「純粋な疑問ですよ。貴方の剣の腕は容赦無いとお聞きしますよ、何故?」

「答える義理は無いね。とっとと」

「フランベルジュと言う剣はな、波刃故に傷口が抉り取られる悪辣な武器のひとつだが、勿論弱点が有る。打ち合うと折れやすい、と言うな」


 ……え?え?アレ?

 テイト様のお声じゃ、無い?

 ……この義兄さまの話をぶった切った、爽やかなキラキラしたお声は……こ、こんなことを為される方は……おふたりしか居ない!!


「それに、おかしな話だな。何故かアレキは僕に間違われて否定しなかっただと?僕ならアレキに間違われた時点で酷い目に遭わせるぞ?」


 入り口からゆっくりと入って来られたのは……庶民的に近い魔導士みたいな白いフードを目深に被っていても、際立つその美貌の男性。

 この頃フットワークの滅茶苦茶軽くてらっしゃる……本物の王子様がいらっしゃったじゃ無いの。

 テイト隊長様がうわーみたいなお顔をされている所を見ると、一緒にいらした訳では無いみたいだけれど……。


「何しに来た、職務放棄常習野郎のショーン」

「ル、ルディさん!?ど、どうして此方に!?」

「そりゃあ、僕と歓談中の伯父上に出動が決まったとの知らせを聞いたからに決まっている」


 え、マジでか。何と言うタイミングなの……。

 ……何だか色々タイミングが良すぎて、本当に偶然なのかしら。どうなっているの?


「嫌だねー、野次馬気質って。救えない性悪さだと思わない?アローディエンヌう」

「方々に色々潜ませているアレキに言われてもな」


 ぱさり、と払われたフードからキラキラした金髪と、優し気に微笑む薄い茶色の瞳が煌めく。

 今日も爽やかで優し気で……面白がられておられるわね。

 ってそうじゃなかった。カーテシーしなきゃカーテシー。って、義兄さまが羽交い絞めにしてくるんだけど!!邪魔!!


「義兄さま退いて下さいってば!!お久しぶりで御座い居ます、ルディ様」

「アローディエンヌか。アレキの話よりも……随分息災なようだな」


 え、どう言う事?義兄さま、私の事を外で何か言ってるのかしら。

 ……間違いなく家での私の事をそのまま喋ってる訳じゃ無さそうね。


「あの悪趣味で悪辣であくどいアレキがおかしいと思わないか?アローディエンヌの前で態々武器を壊されて負けそうになるなんて……なあ、アローディエンヌ?」

「はい?」

「グゲ」

「はわ?」


 え、何?本当にどういう事なの?


「それに薄着の皇女か?その姿も久々だな」

「ムブゲ」


 鼻を鳴らしてブライトニアがルディ様に向けて首を振っているわね。

 ……一応ルディ様には未だ友好的なのよね。それだけは本当に有難いわ。


「まあそう怒るな。少々面白い話を聞いたから見物に来てやっただけだ」

「要らない、サッサと失せろ」

「ほう?僕が話をするんだから臣下は聞くべきではないのか?」

「馬鹿じゃ無いの、王城でも無いのにお前の権威なんか此処で効くとでも?」

「だとしても、だ。アレキの許可なんか要らんぞ」

「は、はわわ……」

「殿下、公爵。これ以上壊さないでくださいよ」


 ……い、一体何のお話なのかしら。……テイト隊長様が滅茶苦茶胃の痛そうなお顔を為さっているわね。

 ……ブライトニアと対峙していても一触即発だし、ルディ様と一緒でも一触即発だし……火花が増えてきて気温が上がって暑いし!!



次はニック目線の予定で御座います。

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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 確かにアロンさんを助けに来て、カッコ悪い姿を見せるなんて有り得ませんね。 何かの影響を受けさせられているのですかね? それも有り得なさそうですが。 [一言] 鳴き声もいいですが、 たし…
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