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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
蝙蝠ウサギと仲間達編

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8.ヒロインと悪役令嬢と攻略対象

お読み頂き有り難う御座います。

キレたブライトニアが蝙蝠ウサギに変わってしまった所から始まります。

 取り敢えず、肩掛け鞄に入れて置いたハンカチでブライトニアに掛かった水分を取っていく。

 もふもふな毛皮がぺしょっとしてしまったから、後でお風呂に入れてあげたいわね……。


「…………それであの、えーと、マデル様はどうして此方のお宿に?」

「大使館にー緊急連絡が入ったーからよー」


 緊急……。緊急なの。

 単語とは違うのんびりと何時もの口調で仰ったマデル様は、散らばった服を従業員さんに集めさせていらっしゃるわ。

 まあえっと、私の両手の平に大人しくなった小さな蝙蝠ウサギの服、なんだけどね……。

 ブライトニア、生きてるわよね?耳を近付けたらズピッて鼻を啜られたから良かったけれど。

 マデル様の駆けつけが早かったのは、ドゥッカーノに居らしたのはやっぱりバルトロイズ様との逢瀬かしら!デートかなあ!大人のデート、素敵よねえ。

 でも、其処ら此処らに散らばる調度品(重そう)を見たら………浮かれてる場合じゃなかったわね。


「そ、そうですか……。助けて頂いて有難う御座います」

「いいえー。元はと言えばー、ギー卿のお手紙がー不躾過ぎたんでしょうねー」


 成程、マデル様はお手紙の内容をご存じでいらしたのね。

 きっとトラブルになるから、待機の上いらしてくださったのかしら。

 そりゃそうよね。何の対策もなしにあんなお手紙を……詳細な内容は未だ分からないけど、あんなにブライトニアが激高するんだからどう考えてもオルガニックさん関連よね……。

 ……一体何が有ったのかしら。まさか浮気?怪我?

 どちらにせよ、うーん。困ったことになるかもしれないわ。


 目の前ではてきぱきと散らばった調度品が片付けられて、舞い上がった水で濡れた床が拭き取られて……魔法かしら?乾かされて行くみたいね。凄い魔法で、仕事が早いわ。有能な従業員さんね。



「アロンさあん!!ご、ご無事ですか!?オールちゃんは!?」

「フォーナ。無事よ」


 あ、お姫様抱っこから降ろして貰ったらしいフォーナと抱えていたグレッグさんが此方にやってきたわ。


「はわわマデルさん!」

「間に合って良かったよ」


 グレッグさんがあの、ブライトニアに掛けた水っぽい液体が入ってた入れ物を拾い上げて、服のポケットに仕舞っている。

 ……コレ、何の液体なのかしら。

 色も匂いも無いし、どう見ても水にしか見えないけど。魔法の適性が凡人以下であろう私にはサッパリ分からないわね。何かこう、RPGだったら水属性らしく、コレは何とかの効能で云々!!みたいな説明が出来たらカッコいいんでしょうけど。あ、でも魔法のお勉強もしてないのに似非知識ひけらかすかもしれないわね。だったら烏滸がましいから結局黙ってるかしら。


「この液体は何なんでしょうか。ブライトニアに害は御座いませんの?」

「うん、風属性専用の魔力吸い取り水なんだ」


 何だかまた知らない単語が出て来たわね。


「……魔力吸い取り水?吸い取るのに水?ですの?」

「か、風属性専用ですか?」


 フォーナも知らないって事はマイナーなお話なのね。人の反応見てお話を聞く癖がどうもついてしまっているわね。生きた情報と反応が有難いけれど。


「風属性って気性の荒い子が何故か多いだろう」

「風評ー被害よー」


 あ、マデル様からクレームが入ったわ。そう言えばマデル様も風属性でいらっしゃるのよね。

 風属性ってそんなに気性荒いかなあ……。

 他にはレルミッド様とドートリッシュしか知らないけど。

 ……ちょっと、結構……喧嘩っ早いかしら。血の気が多めと言えばそうかもしれないけれど。

 でも、義兄さまの気の短さと喧嘩っ早さも大概よね……。あの人火属性なのに。

 相互関係は無さそうな気しかしないな。


「単なる個人の個性では無いのですか?」

「私は医者の免状を得て10年程だが、注射で暴れるのは8割風属性なんだよ」


 ……そりゃ、多いわね。地味に馬鹿に出来なさそうな記録だわ。

 地味に感心していたら、フォーナが口に手を当てている。

 どうしたのかしら?ヒロインだし似合うけど。


「ももも、もしかして!!ティミーちゃんにもあげました!?それ!?」

「えっ?どうしたのフォーナ?」

「ほほほほら思い出してください、アロンさん!!オールちゃんと出会われた時、私はオールちゃんが獣人さんとは知らなかったんですけどええとそのあのあのあの!!」

「ティミーに?ああ、あげたなあ」

「ひええええええ!!」

「ちょ、落ち着いてフォーナ!!」

「落ーち着いてーフォーナちゃんー」


 何ちゅう慌てっぷりなのフォーナ。

 て言うか、ティム様?何でそのお名前が出てくるのかしら?

 そしてグレッグさん……その受け答えからするとティム様とお知り合い?

 そのお水?をティム様にあげたって言う事が……ええと、何なのかしら。


「ええと、ブライトニアとの出会い……?義兄さまがブライトニアを拾ってきて、ペットにしたらって言ったからちょっとの間共同生活してたんだけど」


 ソーレミタイナの事よね?随分前の事に思えるわ。

 1年位前なんだけど、引き籠り人生の中では3番目位に大事件だったから。


「その前にーティミーちゃんにこのお水で魔力を吸い取られてー、ウサちゃんにーされたんではーって事ー?」

「……そそそそうです!!それです!!」


 そ、そんな事が……!?

 そういやそうだったわね。えーと、1年前ティム様に魔力を吸い取られて蝙蝠ウサギになったんだったわ。それで逃げた所を義兄さまに取っ捕まったんだったかしら。

 今から思えば、私へのお土産にブライトニアを捕まえるなんて……義兄さまって碌な事しないわね。

 ブライトニアが好意的で良かったけど、国際問題じゃないの。あの時は1週間位経ってブライトニアが全裸で……って!!

 呑気に過去の事を思い出してる場合じゃ無くて!!


「えっと、そうだとするとブライトニアは1週間ぐらい元の姿に戻れないって事ですの!?」


 そ、それは困るわね……。

 大体、ブライトニアが此処に居るって事は、絶対レギ様がお国で大変でしょう!?

 皇太子業務をふたりでやっているって聞いたし!!


「いや、流石にそんな不便は出来ないよ。魔力回復すれば戻れるから。フィオールちゃんは魔力量が多いから補充がちょっと多いだけで。激高してたからあわてて結構な量を掛けてしまったけど」

「……と言う事は、もっと少なくて良かったんですの!?だから気絶を!?」

「気分のー高揚し過ぎーもー有るわよー」

「そ、そうなんですね……。えっとえと、魔力回復はやっぱり魔力砂でしょうか……」

「魔力砂?」


 今度は砂なの?そっちの方が吸い取りそうだけれど。

 魔力って水分みたいな……いや、血液とか臓器に近いのかしら?

 スキルにも不具合が生じたら体調悪くなるしな……。実感したからそれは身に染みているわ。

 ……この世界って魔法と剣が飛び交って怖いけれど、どうも嘗て私の思っていたそういう世界の常識とは大分違うのよねえ。


「同属性で分けてくれる人が居ればそっちでもいいけどね」

「私ではー無理ねー。気絶しちゃうわー。ウサちゃんをー回復出来る魔力量ってーひとりぐらいねー」

「この国で!?そうか……。予想以上に魔力量が多いんだね。魔力砂が大量に要りそうだな」


 ……つまり、ブライトニアを回復させるのは、その砂以外ではレルミッド様しか居ないと言う事……?

 こ、困ったことになってしまったわね。

 一応蝙蝠ウサギ姿でもこっちの話は通じるんだけど、向こうの鳴き声は分からないものね……。

 いや、前足でダンダンしたり唸ったりはするから、ボディランゲージで怒りは通じるけど。

 ……考えてみれば、結構蝙蝠ウサギ姿って不便なのね。あまりに可愛いから考えもつかなかったわ。御免なさいブライトニア!!起きたら散々撫でまくるから許して欲しいわ!!


「は、はわ……。で、ですがレ……その方、回復魔術は、その……苦手と言うか。他はとってもお上手なんですよ!!」

「そうなのかい?魔力譲渡は回復魔術の系統だからなあ」

「流石にーウチの国にー強力なー風属性居ないしねー」


 そ、そうなのね……。いらっしゃりそうな気もするんだけど、レルミッド様クラスがボンボン居る訳無いのね。チートは少ないからチートなんだろうし。

 義兄さまは属性違うから、義兄さまにも頼れない……。そもそもブライトニアを毛嫌いしてる義兄さまが力を貸してくれそうに無いわね。

 と言う事は暫くの時間……元に戻れる可能性って、絶望的なの?

 ブライトニアが楽しみにしていた、オルガニックさんへのプレゼントも渡せない……!?


 って……そうよ、チョコレート色のコスモスの花束!!

 何処行った!?

 見回したら…………ああ、天井の飾りにバラバラになったお花が引っかかってる!!床にも残骸が!!

 折角あんなに楽しそうに選んでいたのに、見るも無残な姿に散らばってる!!


「しかし、困ったな。彼女には聞きたい事が有ったのに。ウチの亡くなった奥さんの甥がフィオールちゃんと一緒に居たって言うから……」

「え!?」


 奥さんの甥!?しかも、亡くなっておられる!?ど、どう言う事なの!?

 いや、話の流れからして……ブライトニアが拾った獣人の子の男の子の誰かが、この方の義理の甥御さんって事よね!?

 そりゃ、しつこく食い下がるわ!!


「は、はええ!?グレゴリオさん、幼馴染さん、お亡くなりに!?」

「ああ、もう半年程になるがな」

「ご、ご結婚されたばかりだったんですよね……!!何てお労しい」


 何てことなの……。

 ……うん?幼馴染?お医者さんの、幼馴染。何処かで聞いたな。

 そう、……フォーナに会った時よ。

 本人が意味が解っていない、オルガニックさん談の攻略対象の話を聞いたわ。ええと、先ずは王子様がティム様よね、オルガニックさんに、後は……お医者さんと、吟遊詩人さん。

 そのお医者さんが、グレッグさんだとしたら。

 やっぱりこの方、フォーナの本来のお相手、攻略対象のおひとり!!

 グレッグさん……傭兵医者さんのグレゴリオさんが攻略対象だったのね。

 そりゃお姫様抱っこのひとつやふたつイベント発生の用意が……って、今は現実だってのよ!!


 でも、もうこの方は結婚されて……たと思ったけれど、奥様と死別されて、言い方悪いけどフリーな男性。

 そしてフォーナは……レルミッド様のご家族公認、なのよね。婚約はしてるのかしら。結婚式には呼ばれていないから、未だレルミッド様の奥さんでは無いわよね。

 義兄さまが握りつぶしてなければ、だけれど。……流石にそれやってたら私は激怒するわよ。

 ……仲は悪くないフリーなヒロインとフリーな攻略対象……。嫌な予感がするんだけど……気のせいよね?そんなバカバカとドロドロな恋愛が産まれる訳無いわよね。ええ、フォーナに限ってそんな事はない!!


 しかしなあ、こんな所でゲームの人物が絡むなんて……。

 や、ややこしい事になって来たなあ。いや、気のせいだと思うけれど!!


「それでー、お花ちゃんはー何か知ってるー?」

「マデル様はグレッグさんのご事情をご存じだったのですわね」

「事情は知ってたけれどー知り合ったのはーこの宿前よー。偶々ー前で会ったのー」


 流石事情通だなあ、マデル様。


「それで、ウチの甥は何処に居るのかな、アロンちゃん。イワトビウオの獣人の子なんだけど」

「ええと、私、獣人の子がどの子か分からないので出来ればお名前を……」


 確かに飛んでるお魚の子、居たし見たけど!

 お風呂上りで、人の姿でしかお話してないし、目の前で変身してもらわないとどの子か分からないわ!!だって獣人の見分けが付かないのよ!!お前の娘のシアンディーヌは芋虫獣人だろうが!!って突っ込まれるのは分かっているけれど!!

 ……ええと、アンドリュー君に、ジャック君に、ヒルデガルドちゃんに、ヴァン君だったわね。

 家名が断末魔だから思い出し笑いしそうだけど。


「ヴァン・ギエーって言うんだけど」


 くすんだ赤い髪の子だったわね。……家名は断末魔だけど、そこ突っ込んでいい所じゃないわね。人の家名にケチつけるなんて傲慢だけど……御免なさい、ホント気になって仕方ない!!


「はえ!?す、凄い家名でらっしゃいますね……」

「ルーザーズのー女官長のー家名ねー。あの国ってー悲鳴とか断末魔みたいなー家名なのよねー」

「古語由来らしいですね」


 ……この世界観でも変わってるんだ、あの子達の家名。

 ちょこちょこ転生者の知識にフェイント掛けてくるわよねえ。知識チートなんか無いぞ思い上がんなよモブが!って事なのかしら。主役級の転生者が居ないみたいだしなあ。


 しかし、ご親族に……会わせた方がいいのかしら。

 兎に角ブライトニアの目覚めを待たないと。


グレッグの正体と目的が明らかになりましたね。

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矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
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