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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
蝙蝠ウサギと仲間達編

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3.サプライズって考えたことも無いわね

お読み頂き有り難う御座います。誤字報告、拍手誠に有り難う御座います。


獣人のちびっ子達と離れてアローディエンヌとブライトニアの会話で御座います。義兄さまも出ます。

「アロン、あたくしチョコレートをオルガニックにあげようと思うの。

 2月の14日はこのあたくしが愛するオルガニックにあたくしのみがチョコレートをあげて、『キャッキャウフフ』が出来る日なのよ」

「……え?」


 え、何?何処をどう突っ込んだらいいの。

 あの子達のハードな経緯を聞いてからの、この……このシリアスの上げ下げの高低差は何なの?

 て言うか、ブライトニアの口からキャッキャウフフ……?

 垂れ気味の紫の目をキラキラさせたドヤ顔でキャッキャウフフ……。いやそりゃ掛け値なしに可愛いけど……吃驚したわあ。

 しかしキャッキャウフフ……。もしかしてオルガニックさんの影響?


 ……オルガニックさん、と言えば……。

 ……もしかしてバレンタインデーの事をお話されたのかしら?ちょっと情報がニアミス……?いや、似てるだけ?それともブライトニアのマイルール?それとも、世界的に有名なイベントなの?

 でも確か……この世界にはそう言うイベントなかったはずよね。1と2は……この頃記憶があやふやなんだけど、3のゲーム中でも無いと断言できるわ。

 何故なら義兄さまが全くバレンタインに何のリアクションも示さなかったから。

 ……変なチョコレートを使った変な事を仕出かしてこなかった、今までの平穏が何より証明しているわ。

 後、新聞にもそれっぽい煽り文句とか無かったし!!

 遠くの地方ではチョコを投げる?奇祭?が有るらしいってのは前にドートリッシュに聞いたような。

 世界って未知に満ちているのね……。いや、どうでもいい駄洒落になってしまった。


「そ、それは……ええと、そ、そうなの」


 驚きすぎて……大した返事が出来ないな。リアクション下手過ぎよ私。

 この頃家から出ないから余計に……いや、シアンディーヌのお陰で毎日が驚きに満ちているけれど。


「だからアロンはまかり間違ってもオルガニックにチョコレートを渡しては駄目よ」

「いえ、そりゃ渡さないけど……」


 オルガニックさんが転生者だと分かっている時点で、そんなややこしい事を引き起こしたく無いわ。義理だと分かっていてもご迷惑でしょうし、何より義兄さまが死ぬ程煩そうだし。

 そもそもどうして2/14……後3日後だけど、そんなピンポイントにバレンタインデーがブライトニアに伝わったのかしら。

 やっぱりオルガニックさんが教えたのかしら?

 ……あの方の性格からして教えて無さそうな気しかしないわね。引き気味でお付き合いを続けて……おられるのかしら?でも結構前は……地味に未だ逃げたいオーラを感じたわね。


「あの、ブライトニア。私、世間の行事にあまり詳しくは無いのだけれど……オルガニックさんにチョコレートが欲しいって言われたの?」

「いいえ、あたくしがオルガニックに撫でられつつ聞いた話を聞いて決意したの」


 ……蝙蝠ウサギ姿の時よね。間違いなく。今のブライトニアを撫でてるのって……あんまり見て無いけれど、切羽詰まってそうな時しか見かけていないわ。

 ええと、初めて出会ってから私に出会うまでの間位に聞いたのかしら?

 それじゃあ森の動物に話しかけているノリでは?でもブライトニアにがっつり聞かれて理解されてしまわれたのね。


「オルガニックがこの頃遠慮しているようなの。もっとあたくしを撫でて触ってベタベタして欲しいのよ」

「遠慮……」

「この間なんて、ユディトの臣下の獣人共があたくしとオルガニックをふたりっきりにしてくれようとしているのに……オルガニックったら、近づいて来ないの」

「ち、因みに何処で?」

「連れ込み宿よ」

「つっ……!?そ、それは……」


 そりゃあ……何ともかんとも。

 て言うか、この世界にも連れ込み宿って有るのね……。要らん知識を得てしまったわ。


 しかし……ど、どうしたもんかしら。

 いや、まあ……悪くはないイベントだと思うし、引き気味なオルガニックさんとの仲を深めるチャンスだとは思うんだけど……連れ込み宿……はちょっと。

 何故かしら、結構裏目に出そうな気しかしないという、この悪寒は。

 最早私のサポートキャラの役目は死んだ筈なんだけど、そう言う第六感みたいなのが微レ存してるのかしら。


「な、何がどうなって……?曲解が生まれていそうな気しかしないわ……」

「オルガニックがチョコレートを欲しいって言ったの。だからあげたいと思ったのよ」

「そ、そうなの……。欲しがっておられるなら、いいんじゃないかしら」


 ……此処だけ聞けばフツーのバレンタインデーなんだけどなあ。

 頼むからそのままの感じで進行して欲しいわ……。


「だけど迷っているの」

「な、何をかしら……」


 ラッピングとかチョコの種類とかで迷っているのかしら。

 私、特に装飾センスも無いし、グルメでも無いんだけど……。


「あたくしがチョコレートを被るか、オルガニックが被るかを」

「……止めましょうブライトニア」


 被るな。被せるな。その歳で、何でそういう方面に走るのよ!!

 何処のエロゲなのよ。いやそう言うのも嫌いじゃ無いけれど、ブライトニアが仕掛けたら流石にシャレにならんでしょ!!

 一応全年齢の筈でしょあのゲーム!?

 ゲームから逸脱し過ぎてはいるけれど!!主に義兄さまが私に執着してる辺りから!!

 ……って結構最初の方ね。ってそうじゃなくて!!


「出来る事ならチョコレートを被ったオルガニックが」

「食べ物で遊ぶのは言語道断よ、ブライトニア」

「意外とアロンって厳しいのね。シアンの親になったからかしら」

「いやまあ……そ、そうなのかしら」


 そういや我が子が膝で寝てるんだった。もにもに動いてるのに話に夢中で愕然とし過ぎたわ。

 爛れ気味の会話を聞いてないといいんだけど……。聞いてた所で理解できないと信じたい……。

 でも義兄さまの子供だからなあ……。変なチート働いてないと良いんだけど……。見れば見る程髪の色以外で私の遺伝子を感じられないな。

 いやまあ、今のシアンディーヌの姿は赤いって以外義兄さまに共通点無いけれど。


「じゃあどういうチョコレートを贈ったら、オルガニックがあたくしだけを触りたくなるのかしら」

「ブライトニア。危険な薬物みたいに聞こえるから、その言い方止めましょう」

「あたくしがオルガニックに危険な目に遭わせる……かもしれないけど、ま、守るわ」


 あれ?どうしたのかしら。


「何か有ったの?」

「……アロン」

「どうしたのブライトニア」


 ブライトニアが私の椅子の横にそっと座って来て、頭を肩に擦りつけて来た。

 義兄さまと違って横に追い詰めることはしてこない辺り、良かったんだけれど。


「あたくし、オルガニックに火傷をさせてしまったの」

「ええ!?火傷!?だ、大丈夫だったの!?」

「処置は直ぐして貰ったけど……」


 確か、火属性でいらっしゃるのにスキルが『火気厳禁』なのよね。

 滅茶苦茶火傷しやすいって言う、オルガニックさんの体質……。

 って、溶けたチョコレートなんか被せたら普通でも火傷するし余計大火傷するじゃないの。さっきはエロ方面にしか頭が行かなかったけど常識的に考えて止めて良かったわ。


「口移しで煮え滾らせたミルクティーを飲ませたら」

「そりゃ普通でも火傷するわよ!!」


 口移し以上の展開が繰り広げられていたのね!?

 そりゃちょっとオルガニックさんも距離を取りたくなったのかもしれないな!!

 いや、ブライトニアに悪気は無いのは分かるけど!!


「そうみたいね。あたくし、火傷したことないもんだから知らなくて」

「……そ、そうなの……」


 火傷した事無いってどんな体の構造をしているのかしら。悪役令嬢のチートが体の構造上も炸裂しているのかしら。

 もしかして義兄さまも火傷とかしたことないの?いやでも、打ち身と切り傷作ってるのは見た事有るし……。うーん、しなさそう。


「マデルにも叱られたわ……。あたくし、オルガニックがか弱いのを浮かれてすっかり忘れていたの」

「か、か弱いって言うか……」


 そもそも、熱湯を口に含んで火傷しない人間がいること自体が吃驚だわ。


「オルガニックと居ると、世界がフワフワしていて恐ろしく何でも出来る気になるの」

「そ、そうなの……」


 恋する乙女の全能感……。可愛いけど、被害の事を考えるとあまり可愛く無いわね。


「あの時はクッキーも買ってくれたし、汚名返上も出来た気がしたんだけど……この頃引いて接してくるの。常温のミルクティーを頼んだりとか」

「そ、そうなの……。それは単にその温度が飲みたかっただけじゃ無いのかしら」

「だって、熱いものをふうふうして飲むのが可愛いって言ったわ。つい熱いものは熱いうちに飲んじゃうから出来なかったけど」

「そ、そうなの……」


 喉の粘膜どうなってんのかしらブライトニア。気になってさっきからアホな返事しか出来ないわ。

 て言うかオルガニックさんのタイプって、結構あざと……いや、清純派な女の子なのね……。

 って、いやそうじゃないな。

 此処は、死んだ設定だけどサポートキャラとしてオルガニックさんとブライトニアの橋渡しを頑張るべきじゃ無いかしら。

 ……シリーズ違うとかオルガニックさんもサポートキャラだとかいう感じのツッコミは抜きにして。


「ブライトニア」


 サラサラなのに蝙蝠ウサギのモフモフ感もある、不思議で触り心地のいい髪を撫でてみた。

 可愛いわねえ。悪役令嬢だけど。


「……アロン、どうしたらいいのかしら」

「私とお買い物に行きましょう。あの子達が休んでいる間に」

「買い物?」

「そう、オルガニックさんへの贈り物を買いに行くの。チョコレートも付けて」


 ブライトニアのキラキラした宝石みたいな紫の瞳が瞬いた。


「沢山のチョコレートじゃなくて?」

「現実的に、食べ物を大量に贈るのは食べ切れないと思うし……チョコレートだけがオルガニックさんの喜ぶものでもないと思うの。ブライトニアが悩んで考えて贈ったら、きっと喜んでくれるわ。ええ、大量のチョコレートを粗末にするのは実に良く無いわ」

「他の贈り物……」

「そうよ、そうしましょう。私も久々に外に出たいわ」

「アロンがそう言うなら付き合っても良くってよ」


 あ、何時もの調子が戻って来たかも。


「そうね、少し視野狭窄だったわ。何もチョコレートだけに拘る必要は無いわね。オルガニックに似合いそうなものや素敵なものを山程」

「山程迷える素敵なものが有ればいいけれど、実際の大量の贈り物は迷惑だから少量ずつにしましょうね」

「じゃあアロン、あたくしの手伝いをさせてやってよ」

「いいわ。じゃあシアンディーヌを……どうしようかしら」


 流石にこの大きさの芋虫を抱えてお買い物は……周辺地域に阿鼻叫喚を生みそうよね。

 ベビーカー的な物って有るのかしら。日よけを被せて置いたら目立たなさそうなやつ。

 よし、偶にはシアンディーヌを連れて、お外へお出掛けとか!!とは思ったけど。

 ……シアンディーヌ、芋虫から変わってくれないかしら。


 ん?

 あれ?暖炉の火が強かったかしら?

 何だか火花が散って……火花。


 ……火花!?


「アローディエンヌ。僕を置いて、何処へお出掛けしたいの?」


 甘い甘い、低い……この声は……。

 げっ!!


 音もなく扉を開けて、佇んでいるのは……燃えるような赤い髪に、薄い唇は弧を描いて笑っている癖に、その薄青い目は凍っている……、耽美な背の高い美形。


 ……一緒に住んでいるにも関わらず、いきなり見るとギョッとするような美貌なのよね……。

 でも今、居る時間帯じゃない筈。

 何で義兄さまが家に戻っているの!?


「今未だお昼前ですわよ!?どうして戻って来てるんですの!?」

「フロプシーが色々連れ込んだから連絡が有ったんだよ、アローディエンヌう」


 しまったわ、あの子達の事、そりゃ報告行くわよね!!て言うか、仕事が早いのよウチの使用人!!

 そりゃ家主の義兄さまにお断りすべきだったわね。ああ、私ったら。


「義兄さまの留守中に勝手に休ませてしまった事は私の責任です。でも、目の前で怪我しているひとを放ってはおけませんわ」

「君は本当に優しいねえ。まあ、僕も使えそうなのは偶にやるから別にそれはいいんだあ。責任もフロプシーに有るんだからね。フロプシー、貸しだからな」


 え、義兄さまも偶にやる?意外だわ。

 ……使えそうなの、って時点が聞き捨てならないんだけど。


「煩い馬鹿兄貴ね」

「それに、何か有ってもあんな直ぐ始末出来そうなガキ共はどうでもいいんだあ」

「はあ!?始末!?ちょ、義兄さま!!」


 抗議しようとしたら、義兄さまの手が私の頬っぺたに添えられて……って、何時の間に移動してきたの!?何時の間に目の前に跪いてんの義兄さま!!


「お出掛けはどうして?最近僕とも出掛けてくれないのに、どうして?

 そもそも思い出せばデートすら珍しかったよね?どうして?」

「相変わらずうざったい馬鹿兄貴ね」

「煩いのはお前だ。優しくて可愛い俺の最愛のアローディエンヌに付け込む忌々しくて図々しいフロプシー」


 火花が!!火花が飛んできて暑いんだけど!!何故か火の熱さじゃ無くて、ホント物理的に暑苦しい!!

 ああもう、ホント義兄さまったら面倒くさいタイミングで帰って来た……。!!


「僕とふたりっきりでは、中々お出掛けしてくれないのに、したいのに。

 先にフロプシーとお出掛けしたいって言ったのは、どうして?アローディエンヌう?」


 歎願する義兄さまの声は、滅茶苦茶甘くて切ない。

 言ってる事がしょうもなさすぎて、もっとマトモな事を言ってるような錯覚すら起こしそうな位。


 ……いや、つまり。

 私が知らない子達を保護したのが気に入らないんじゃなくて、ブライトニアとお出掛けしようって言ったのが気に入らないって事?

 しかも、義兄さまとふたりっきりでお出掛けしたいって言った事が無いって?

 ……そうだったかしら。そういや記憶に無いし言った覚えも無いわね。


「……つまり、義兄さまは私が義兄さまと出掛けたいって言って欲しいって事ですか?」

「ええ!?当たり前でしょお!?」


 いや、当たり前なの?

 呆れてる私の方が悪いみたいな言い方だわ。


「ウザくてよ馬鹿兄貴」

「お前の感想なんか聞いてない。失せろフロプシー。ガキ共は怪我が治り次第放り出してソーレミタイナに請求書と一緒に放り込んでおく」

「義兄さま!!」


 人道的だけど普通に酷いな!!


「大体他国人を拾ったのはフロプシーの責任なのに、無償で治せって言うの!?」

「いやそりゃ……言いませんけど」


 そもそも稼いでるの義兄さまだし、其処は強く言えないわ。

 うう、私って本当に役立たずね……。所詮無償の奉仕を気取った所で、義兄さまに丸投げの姿勢だもの。


「アローディエンヌが拾って手先にするなら兎も角、フロプシーの手下になら恩も売るし借りも被せるから」

「アイツ等の治療費位払ってよ。本当に煩いわ馬鹿兄貴ね。そんな事よりもどうせ、アロンと特別に仲が良いあたくしが羨ましいんでしょう」

「フロプシー!!」


 あ、ブライトニアが私の肩に引っ付いて来た。

 ……考えてみりゃ目の前に義兄さまが跪いてて、ブライトニアに凭れかかられてて、膝には芋虫のシアンディーヌが居て、部屋の中に火花が散ってるって……凄い光景ね。

 どうでもいいけど私以外悪役令嬢とその娘って凄い組み合わせよね。凄いしか出て来ない自分の語彙の貧弱さが悲しいし、いい加減暑いわ。


「義兄さま、火花が暑いんですけど」

「だってえ!!アローディエンヌがあ!!僕を構ってくれないからあ!!」

「人の手をブンブン上下に振らないで!!子供ですか!?大体、何なんですの!?その面倒くさいゴネ方は……」

「えー普通だもん。常日頃の僕でしょお?」


 いやそうだけれども!!

 っていかん、此処でキレて押し問答になっては、出掛けられなくなってしまうわ。

 さっき、押しすぎ気味のブライトニアと引き気味のオルガニックさんの仲をサポートキャラとして取り持ちたいと思った所なのに。

 ……。

 どうしたもんかしら。

 それにしてもこんだけ火花散って大声上げてるのにシアンディーヌはなぜ起きないのかしら。

 かと言って、静かな時にギャアギャア泣いたりするし……。子供だからか、訳が分からないわね。


「義兄さま」

「行っちゃやだあ!!アローディエンヌう!!お出掛けなら僕とするのお!!」


 子供か!!

 ……膝で寝てるシアンディーヌは未だゴネる年齢じゃないけど、もしかしてこういう感じでゴネたりするのかしら。

 似てるしなあ。


「そもそも、私は贈り物を……贈り物」


 贈り物。

 そういや義兄さまにあげたことって有ったかしら?

 大量に貰っては居るけど……。


「あの蝋燭野郎へのでしょ!?どうせフロプシーからの贈り物なんて嫌がらせなんだからアローディエンヌが考えるだけ無駄だよ!!」

「何ですって、馬鹿兄貴!!」

「……義兄さまは私から何か贈られたら嬉しいんですの?」


 ……。

 ……?


 あれ、ふたりがポカンと私を見てるわ。珍しいわね。

 ん?

 私そんな変なこと言ったかしら?でもよく考えたら私個人が稼いでるお金でも無いのに、そのお金で贈り物っておかしいかしら。そんなの要らねーよって?

 うーん、おかしい位にリアクションが無いな。


「まあ、義兄さまは沢山素敵な物をお持ちですしね」

「う、嬉しいに決まってるじゃないい!!」

「ぎゃあ!!」

「もあああ!?」


 うわああ!義兄さまに何で急に抱き上げられてんの!?しかも何で頬擦りされてんの!?


「何するのよ馬鹿兄貴!!シアンが潰れるじゃない!!」


 あ!!良かった!!ブライトニアがシアンディーヌをキャッチしてくれてたのね!!

 ってしつこい!!足が宙に浮いて何度抱き上げられてもホント怖い!!


「義兄さま離して!!」

「そうだよね!!僕への贈り物は僕と一緒に買いに行っちゃダメだと思ったんだあ?驚かそうとしてくれたの?もおー何て可愛いのアローディエンヌ!!」

「いや、驚かす!?全くそんな事考えつきも!そもそも、美的感覚に乏しい私の買って来たもの程度で義兄さまを驚かすってのが無茶振り過ぎやしません!?」

「何でも良いんだよ。何なら其処の暖炉の焼けた炭でも」

「いや何でよ!!おかしいでしょう!?」


 何で焼けた炭を伴侶に贈るのよ!?殺人事件か!!

 いや確かに、火花やら火柱やら起こす義兄さまなら火傷しなさそうだけどさ!!そう言う問題でもないでしょう!!


「炭はね、絵を描くのに使えるよアローディエンヌ」

「こっちがおかしなこと言ったみたいに言わないでくれます!?」

「感性が相変わらずおかしいわね馬鹿兄貴」

「ホントお前は煩いなフロプシー!!いいか、アローディエンヌに免じて今回だけはアローディエンヌが僕への贈り物を吟味するのに付き合わせてやる。二度は無いからな」

「妄言は大概になさい、馬鹿兄貴」


 ……いや、私がブライトニアを励ます為に贈り物を選んだらどうって話だったわよね?

 そもそも私、義兄さまに何かサプライズで贈りたいから買い物行きたいって話じゃ無かった筈よね。

 どういう事なの。


「シアンディーヌ、アローディエンヌは俺への俺だけへの買い物に行くからね。俺と居るんだよ」

「あうもー」


 私を降ろした義兄さまは、シアンディーヌをブライトニアから奪い取った。

 シアンディーヌは義兄さまに首根っこ?取り敢えず顔の後ろを持たれて足をジタバタしてる。

 芋虫の首?胴の一部?って意外と伸びるのね。

 そもそも片手で持てるほど腕力無いから私はやった事無いけど、義兄さまはよくやってる。

 最近シアンディーヌも重くなったけれど、騎士でも無いのに義兄さまの腕力ってどうなってんのかしら。


 兎に角……色々納得は行かないけど、義兄さまのお見送りの元、私とブライトニアはお出掛けをすることになったの。

 て言うか義兄さま、仕事はどうしたのかしら。

悪役令嬢の乱入が多いのは仕様です。

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矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
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