義妹姫様とお出かけしたら変なのに絡まれたわ!(ドリー視点)
お読み頂き有難う御座います。
更新出来ず申し訳ありません。激務と暑さで呻いておりました……。
義妹姫様ってたおやかよね。
今日お出かけした時に、危うく転びそうになっておられたから、お助けしたのよ。
いやあ、横を歩かせて頂くだけで上品なお嬢様って感じよね。
「うわっ」
「まあ、義妹姫様! 大丈夫ですか!」
……お抱きとめしたら、滅茶苦茶軽くていらっしゃったわ。
華奢で、なんかこう、よく分からないとっても高貴で素敵でいい匂いがして……!
それに、義妹姫様ったら腕も肩もだけど何より、お腹が柔らかくてらっしゃるの……!
「有難うドートリッシュ。
凄いわ、とっても素早いわね。
あら、ドートリッシュ? お腹を擦ってるの? 痛いの?」
……滅茶苦茶違うわ。私のお腹、何でこんなに硬いのかしらね。
……義妹姫様がフワフワな羊の毛皮だとしたら、私は闘牛の皮膚と言うか……。
はっ、イジェノアを産んで、たるんで……体力低下した気がするから、荷物運びしながら腹筋に励んだけど……。
運動をやりすぎた? 比べると滅茶苦茶違うわ……。義妹姫さまのお腹こそが、淑女のお腹……!
「どうしたのドートリッシュ。
まさか、怪我を……! もしかして私、肘で突いてしまった!?」
「いえ、義妹姫様……。柔らかくていらっしゃいますから全然ですわ」
「えっ、肘が!? そんな、肘まで弱っちいの、私……」
どうされたのかしら義妹姫様。とても衝撃を受けてらっしゃるわ。
そんな姿も可憐よねぇ……。たおやかなお腹をされているだけあるわ。
「義妹姫様は、守って差し上げたい可憐さですわよね……」
「そ、そんなに吹けば飛ぶような弱々しさなのかしら……。た、確かに誰にも勝てそうには無いけれど」
思い悩む様も可憐で落ち着いてらっしゃるわ。私が悩めば即座に気を使ってくださるし。
気遣いの塊なところもお嬢様よねえ。
「足音荒く歩き回って檻の中の大型動物なのか? ガサツ過ぎる!」
って私ったら、この前ルーロ様に怒られたし……。
ガサツに振る舞わないってどうすりゃいいのかしら。
やっぱり、下手に歩かず潔くしっかりと走り回るべきかしら。大体の悩みはそれで吹っ飛ぶし……。でも、夜は走り回ると迷惑よね。
イジェもいるし……。イジェをおんぶして夜走ろうかしら。
「アローディエンヌ・ディエット!」
「……?」
「ちょっと、聞いてるのアローディエンヌ・ディエット!」
嫌だわ、往来で叫んでる変なのがいるわねえ。
知り合いを呼んでるにしても声も顔も陰険だし、危険じゃないかしら。危険よね。蹴飛ばそうかしら。
「煩い奴ですわねえ。あ、義妹姫様とおんなじ名前ですわ」
「そうね。
……そう言えば、ディエットって私の旧姓らしいわ」
「アンタのことよ! 貧弱な男爵令嬢!」
「令嬢って久々に呼ばれたわね」
流石義妹姫様、煩いイチャモンにも動じてらっしゃらない。たおやかながらも素晴らしい胆力だわ! それにしても、あまりに失礼過ぎるわね。義妹姫様のお言葉がなきゃ、即大人しく腕力を封印して、怒鳴りに行くかもしれないわ!
「……あの人、誰なのかしら」
「あんな無礼な奴、知らなくていいと思いますわ!」
「でもあっちは私のこと知ってるみたいね。珍しい。何かしら」
小首を冷静に傾げられる様は仕草からして、可憐だわ。
性格に良いものを食べてお育ちになったんでしょうねえ。食べられるお花とかハチミツかしら。
あっ、お花と言えばこの前咲いてた大根の花取っときゃ良かったわ。でも、この前の春に産まれたウシンセンが食べちゃったのよね。
あ! でも、この冷静さはとんでもなくご苦労されてらっしゃるからよね。
よし、私が戦わなきゃ!
……でも。
ルーロさまから、人目が多い時は口でもお守りするよう言われてるんだったわ!
なるべく物理的に遠ざけちゃ駄目かしらね。口喧嘩って苦手なのよ。その辺に固くて長そうな金属棒とか落ちてないかなあ。
ええと、無さそう。しょうがないわね。
「何なの無礼な! 此処におわすは、泣くウチの子もあやしてくれる慈悲深いユール公爵家のご夫人よ!」
「ドートリッシュ、イジェノアちゃんをあやすのは気にしないでいいのよ」
「義妹姫様は、何時も慈悲深くてらっしゃいますわ!」
「お供まで煩いわね、何なのよ! この経歴詐称女!」
「経歴詐称……?」
何なのかしらこの女。もしかして自己紹介?
詐欺師って声が大きいっていうものね。気をつけなきゃ。
「そうよ! アンタ、ユール公爵家の養子なんかじゃなかったらしいじゃない!」
「……?」
「へー、そうなのですか?」
ていうか今更その話題って、古くないかしら。えーと、ユール公爵家のご結婚って何年前よ? 最近時が過ぎるのは早いわねえ。
「ええ、義姉さまが……」
「アレッキア様……! あの高貴なる方を義姉さま呼びだなんて、汚らわしい!」
強烈な義姉さま信者みたいねえ、と義妹姫様が呆れたお声を出してらっしゃるわ。
うん、もうぶん殴ろうかしら。煩いし失礼過ぎるわよね。もう充分待ったし、ルーロさまにも言い訳が立つわね。
「何の関係も無いのに、義妹を名乗ってたじゃないの! 大罪よ!」
「……そもそも貴女に名乗ったかしら、私」
「えっ」
義妹姫様、冷静でおいでだわ……。イチャモンには議論で論破されるのね。凄いわ、頭脳派だわ。キリッとしたお姿が可憐で勇ましいわ!
「子供の頃から義姉に付いて回る方は、沢山居たわね。
でも、その横に居る私に誰か注意を払ったかしら? 誰にも敬意も注意も払われていないわね」
「……え。ええと」
「アレッキアの義妹だと、私自ら貴女に名乗ったかしら? 何時? 何処で? 記憶に無いわ」
「ちょ、ちょっと……」
「まさか貴女、直接名乗られても居ないのに、私の身分に文句が?
会ったこと無い人を経歴詐称呼ばわりする理由は?」
す、凄いわ。あの煩いの黙っちゃった。
……口喧嘩は義妹姫様にお任せする他無いわね……。
冷静にバッタバッタと斬り伏せている、剣の達人のようだわ。因みに私に剣の才能は無いのよね。すぐ折るから怒られたのよ。繊細な金属だったみたいだし、仕方ないわよね。
「養子縁組や籍に関しては……貴族院よね。
他家の記録を知ったのはどうして? 許可もないのに、どうして閲覧出来たのかしら」
「そ、それは……」
「あ、もしかしたら外部に情報漏洩されてるのかしら。怖いわ。
警備騎士を呼びましょう」
「ご、誤魔化さないで! アンタが身分詐称を……」
「先日、後妻と連れ子に感けた男爵が、身分詐称を企てたけれど……罰金刑で済んだようね。大罪かしら?
中々の刑罰だったわ」
「うっ……」
義妹姫様って、博識だわ……!
罰金刑って幾らだったのかしら。家賃位かしら。かなり大打撃よね。王都の家賃って物凄くお高いし。何処の王都もお高いのかしら。都会って大変よね。
「だってアンタ、王城でも義妹だって認められてた……」
「王城で私と何時会ったの?
私、王城に婚姻前に行ったことは数える程しかないけれど。
何度聞いても答えて貰えないようね?
貴女に会って名乗ったかしら?」
無さそうね。何なのかしら、コイツ。そろそろ堂々と殴っても良いんじゃないかしら。義妹姫様へ対する不経済……不敬罪で。
「……か、必ず化けの皮を剥がしてやるわ悪女……!」
あ、走り出そうとしたらコケたわ。
追いかけてぶん殴ると外聞悪いかしら。うーむ、義妹姫様から離れる方が良くないかしらね。
私も人妻だから、お淑やかに撃退する方法を考えないといけないわね。空き瓶でもさり気なく投げようかしら。
「困った絡まれ方をしたわね。御免なさいね巻き込んで」
「でえっ!?
義妹姫様が謝られる必要は有りませんわ!」
「でえ? ええと、でも私のせいだもの。小さい頃から男爵令嬢であったのは本当だし」
「ですが、義妹姫様以外に若様の奥様は居られませんわ!」
「まあ、そうでもないかもしれないけれど」
「他の方が奥様になられたら、きっと若様は大天変地異か何かを起こされてますわ!」
「……え、そんな馬鹿な、と言えないのが何ともよね……」
困ったわね、と思いに耽るお姿も麗しいわね。
でも、珍しいわねえ。
「久々にちょっとやり込めてしまったわね。でも、少し我慢ならなかったのよ」
「えっ、我慢してらしたのですか!? 今からお命じ頂けましたら軽く蹴飛ばしに行きますわ!」
「蹴飛ばし……。い、要らないわ。ちょっと頭に血が上っただけなの。子供の頃の鬱憤が思い出されて」
「まあ、なんてこと! アイツぶん殴って参りますわ!」
「ドートリッシュが殴る必要は無いのよ」
あ、でも、付いてきた使用人の誰かが捕獲に向かったみたいね。遅かったわ。
平和的にギタンギタンにされなさい! ふん!
「でも、珍しいわね。子供の頃なら兎も角……義姉さまに魅入られたのかしら」
「若様はお美しいですものね」
「いえ、無差別魅了……義兄さまったら何かしたのかしら」
「無差別魅了? 若様も義妹姫様も魅力的ですものね」
「……ええと、取り敢えず守ってくれて有難う。いつも感謝してるわ、ドートリッシュ。貴女こそ魅力的な方ね」
やっぱり義妹姫様って魅力的な方だわ……。嫉妬して難癖付けてイチャモン付ける輩が居るのも頷けるわね。
気をつけなきゃ!
「き、君は……」
「は?」
「ドロシー! 愛しのドロシー!」
「ごぎゃあ!? 何なのよ!? どっせーい!」
え、何!?
走ってきたからつい、投げ飛ばしてしまったけど……本当に、誰?
「……この殿方、お知り合い?」
「ま、全く知りませんわ。痴漢かしら、このオッサン……」
私にやってきたから遠慮なく投げ飛ばせたから良かったけど……。
何度見ても、全く見覚えがないわ……。
ドリーの得意技は体術で投げ技です。弟と違って武器の扱いは不得手なようです。折ります。




