悩んでるけど、モブだから真相に辿りつけない予感(ニック目線)
お寒い中お読み頂き有難う御座います。
「んひっ!?」
……ゼェゼェ喉が引き攣ってるよ……。
此処は……この、部屋、は。
室内装飾は豪華だけど、家具をお手頃価格に抑えたボクの部屋だよね。高価なもの見てもドギマギするから、落ち着く為に自室の家具を見る変な習慣が付いたよ。
もー、その辺お高価素材で怖いよー。
例えば出窓に使われてるのが、高価ーな絵の額装に使うタイプの木材(高価過ぎ)だよ。毎回ビビるんだよ。
無闇矢鱈、拙者にお金掛けるのいくない。やめてくだちい。その辺の糊で木屑固めるから、窓の枠なんてそれ使って欲しかったよ。それはそれで防水とかショボくて寿命短いかな……。
「ブフー……」
枕元にはホワホワの綿毛が寝息を立てているよ……。寝る時蝙蝠ウサギ率高いよね。何でだろ。
若い女の子の本来の姿で夜這いされるよか、まぁいいんだけど……。いや、頻度はまあ置いといて。
ムッシュドーナツこと、ムシュド食べたかったなー。あのウサギのキャラクター、マドモワゼル・ニアってブライトニアの羽無しバージョンに似てるよね。多分イラストの関係で毛色がグラデぽいとことか。
「あ、うべっ、ブライトニア……。また枕落としそうな所で寝てるし……」
……まあ、仮にボクの寝返り程度ではビクともしねーでやんすけどね、この子……。掌サイズからちょいはみ出るくらいなのに、どーゆー骨格に体幹なの。モブ如きの物理な圧力、悪役令嬢の前では塵に等しいの? デスヨネー。
「にしても、変な夢だったなぁ……」
変な夢は偶に視るけど……まさか女神学園轟ッ!2(略)と拙者がコラボしちゃうとはね! しかも悪役令嬢アリアたんと怪盗先生というレアなカプ発見伝! アリアたんは、大体メインキャラとお添い遂げルートだもんね。レア夢だわー。
しかも、背景ではよく見るけど渡ったことない歩道橋とは。サポートキャラのララたんも辛い暴君系お兄様アサギ様とくっつくとか、発想無かったわー。
いやあ、脳内拙者妄想、リアルだったで御座るなあ……。現場見たかったなー。脳内働かなくてツラタン。
しっかし、ヒロイン轟メアミは誰ルートだったんだろ。アリアたんはメアミたんに対して一ッ言も無かったもんね……。めたんこ嫌いなのかな、そうだろうね……。
んん?
鼻擦ったら手がザリザリと……痛むんだけど。
「……ナニコレ」
滅茶苦茶赤錆が掌に……ベットリ付いてるよ。こここ、この赤錆……歩道橋……!?
「ショエアアアエ!?」
「っ! オルガニック!? お腹が痛いの!?」
「いやお腹よりも混乱が! って、キャアアア! イヤアアア! エッチなのは駄目だとアレ程言ったじゃない!
服は何処!? 服を着てエエエ!」
うん、後で滅茶苦茶怒られたよ。
絹を裂くような声で叫ぶよりも、裸の伴侶には黙って服を着せろと。皇帝は伴侶の布団に居て当たり前だと。
いや、……何か違くない? そりゃ仰ることはそーなんだけど。
後、ブライトニアの手下ちゃんの未成年達に怒られる拙者、マジ情けなし限界突破大人……。
「いやはや、……初心で良いことでは? 俺なんてユディトを剥いても平常心で」
あまりに居た堪れないから、お早め出勤したんだよ。レルミッドさんはお先にコレッデモンに向かってたんだね。ジルさんとルーニアさんに囲まれて、ご挨拶と早期出勤の理由したら、このお返事さ。
王配……なんだよなあ。まあ、ボクも似たようなモンだけど……ジルさんみたいに堂々としてえー。ルーニアさんも侯爵様だもんねー。超かっけー。シゴデキレディ、尊敬ー!
「あらあら、お止めなさい、フランジール卿。
レルミッドちゃんに聞かせるお話じゃあないでしょう?」
「ルーニアねーちゃん、俺も大概成人だぜ」
そうなんだけど、ついついお子様目線で見ちゃうなあ。レルミッドさんは年相応でいいよね。同年代だとおにいたまか。……とてもお子様目線を向けられないお方ですしおすし。
「あらあら、ええそうよね、もう大人ね。
レルミッドちゃん、あっちで魔術のお話をしましょうか」
「魔術なあ……。ねーちゃんが殆ど魔力ねーってホントか? どやって使うんだ?」
……ルーニアさんに連れられ、行ってしまわれたよ、レルミッドさん。
でも分かる。ピュアでヤンチャな王子たまを猥談から引き剥がしたいその理想、超分かる。拙者も首もげレベルで超同意しちゃう。
まあ、レルミッドさんは厳密には王子たまじゃないけどねー。トータル能力で王様に向いてるの、彼じゃないかな。
ユディトお姫様率いるコレッデモンの女神達へのウケの良さとか、おにいたまとルディ様を一時的にでも抑えられる所とかが、特にねっ。
めたんこ怒られそうだから、お伝え出来ないけどねっ!
因みにおにいたまは、朝を待たずサッサとお帰りになられたそうなんだよ。聞きたいことだけサラッとお聞きになってピュンってお消えになられたとか。
自由だよね、悪役令嬢様……。
でも、アロンたんをお家に独り……でもないだろーけど、残させなさそーだよね……。
ワンオペ育児とかいう概念、あのご夫婦には皆無そー。いや、高位貴族だけど、アロンたんは子育てに真面目だよね。おにいたまは、ちょっち違うポリシーみたいだけど。いや、実際のお考えはホント、よく分かんないけどね!
「それで、ユール公爵も根掘り葉掘り聞きたがりましたけど……巻き戻しの塔関連ですかね?」
「えーと、なんかこう……獣人さんのルーツとか、世界の謎とか神様関連とか? 色々解りそうかもな? 謎の塔だよね。
おにいたまったら、それを聞きに?」
「ええ、ドゥッカーノ第二王子ティム殿下が偶にお話されるので、眉唾モノかと確認にいらっしゃいましたよ」
「さ、散々だね……」
おにいたまったら、何事も必ず疑ってかかるんだなあ……。でも、話のソースはティミーだしなあ。
「まあ、俺も行ったことは1、2回しか無いんで、詳細は微妙なんですけど」
「へー……へえええ!? 巻き戻しの塔って、ファンタジー架空か概念の塔じゃないの!?
行ったことあんの!?」
「ええ、実はコレッデモンにも出現したことが有りまして」
「どどど何処に!?」
「ユディトと先王陛下……あ、先々代ですね。兎に角、ユディトの祖父母陛下がたが住んでた離宮に、突然生えました」
おお、出現方法まで何と言うファンタジー……。剣と魔法は有るけど全く扱えない拙者の目の前に見参せり……。
「しゅ、しゅごお……」
「ガキの好奇心のまま、中に入ってみたんですが」
「ドキドキ」
「ガイコツ人間に追い出されました」
「……突然のホラー止めてえ……」
「ふたりいましたね」
「こえええ!」
怖さ倍増じゃん! もっとファンタジーな住人が居てほしかった!
「嫌がるユディトを連れて行ったら、突如消えまして。涙目になったので可愛かったですよ」
「急に嗜虐的な微笑み止めてえ……」
物腰柔らかイケメンなのに、ご伴侶にのみドSを装備しないでよお……。
「まあ、一度目は取り敢えず馬鹿みたいに蔵書が収められてたんで、本を読んでたんですけど」
「ガイコツ居るのに!?」
「追い払われました。襟首に突っ込まれた指の骨が不愉快でしたね。ああいう嫌がらせは子供に良くないと思いましたよ」
……ネクロマンサーの資格でもお持ちなのかな、ジルさんてば……。いや、実際の死骸動かしなのはドゥッカーノの第一プリンスショーン様ことルディ様だけんど……。
ジルさんは子供の時からジルさんなんだなあ。
「それにしても、この間の指輪の件ですが」
「……限られた地方の風習をチョピっと漏らしただけなのに、急激に広まる獣人さんに慄いてるよ」
ジルさんの騎士らしい精悍なお手々には煌めく指輪が。
……人のこと言えないけど、大きな水色の石と地金が大変お高そう……。
「その親指の指輪、ユディトお姫様からの贈り物なの?」
「ええ、親指にしておけとユディトが言いますから。何でしたっけ、本来は薬指がいいんですよね? ユディトの指輪は薬指5連にしときましたけど」
曲げにくい!! というか、関節曲がらんよね!?
「慎ましやかに、ひとつかふたつでいいんだよ! それに、最早どの指でもいいと思うんだよ!? 大量に嵌めさせようとしなければ!」
変な習慣を持ち込んで本当に申し訳ないよ……!
番に両手両足に指輪を嵌めさせられた被害者多数!
本当に止められたけど土下座して謝りたかったよ! 特に黒猫卿に指輪を縦グラフ的に積まれてしまったルーニアさんに!
何でそんなに極端なの、獣人さん! 後、滅茶苦茶器用だよね黒猫卿!
「地味ですね。
まあ、コレッデモンの古い習慣の足輪だとユディトが泣くので、指輪で丁度いいですけど」
「うう、足輪の跡は大丈夫なの?」
「男の足首に傷跡って、別に気にしないんですけどね」
ユディトお姫様のお母さんがヒドイン系毒母で、足輪を嵌めてジルさんを傷つけたんだよなあ……。
それすら利用するジルさんの強かなる愛よ……。ヤンデレ系に走らないで欲しいなー。
「ジルさん、巻き戻しの塔について何か分かるんでしょうか。世界を股にかけるとか」
「世界を股にかけたいのなら、移動魔術の方が良さそうですね。俺に適性はからきしですけど」
「まあそうなんだけど、例えば他に世界があるとか……」
現れては消える塔なら、もしかしてゲームの世界を、行ったり来たり出来るんじゃないかな……。向こうのお金も仕事も無いし、リアル移動した所でどーしよーもないけど。
「多分ですけど、巻き戻しの塔を調べようと長く居座ったら、此処に戻ってこられない気がしますね」
「え」
ど、どゆこと?
「基本的に神殿とかの、そういう得体のしれない気配を感じましたし……。この国の神もそうですが、加護を与えたり色々、人間の事情とか全く考えないでしょう?」
「……やりたいように、してやられるってこと? 塔が? 無機物なのに……」
「塔なのか、もしかして塔の中に居る存在なのか分かりませんけど……。俺、そういうのに興味津々ですが、未知の存在に会えないんですよね」
「……あんまお会いしない方が良さげなのかなあ……」
ボクが怪盗先生とアリアたんに会えたのは、気まぐれな巻き戻しの塔の力なのかなあ……。
そもそも、前世混じりなのも、そうなんだろーか。世界の謎……モブなボクには解けそうにないなあ。
……変なことにならなきゃいーけど……。ティミーあたりが引っ掻き回しませんように……。
この世界は椅子にストーカーされたり女神像も増えますので、無機物も曲者です。




