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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
王城では穏やかに

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147/152

知ってるけど初対面?(ニック目線)

お寒い中、お読み頂き有難う御座います。


「あっわわわわわ……」


 足が震える!! 混乱しすぎて、歩道橋の手すりにしがみついちまったニックだよ。

 あの、攻略本とかのトップに出てくるヒーロー椎名会長に抱きしめられた、白い髪の青ドレスの女の子、誰なの……。現代日本設定の2の世界線に、ドレス装備なイベとか無かったよね?

 文化祭も演劇とか無かったしさあ……。いやでも、ヒロインである轟メアミを差し置いて、野外でラブラブ劇場大喝采!? すんげえモン見てるの、ボク!?


 いやあ、感無量だなあ。

 偶々本屋で見た3の攻略本でアロンたんにラブを捧げ、ハマってからこのゲームのシリーズやり通して、イベはしぶとく覚えてるとも! 

 まさか、次回作以降のサポートキャラに転生しちゃうとは思わなかったけどさ!  しかも4は女神関係無いし!


「いや待てよ? 

 そもそも此処は何故。ボクは何処」


 まさか、4……いや3? の世界でボクはとっくにお陀仏様で転生ダブり?

 そんなバカな……! あんの!? そんな話!

 そんなスーパー訳わからん展開、夢オチであって……! でもいやー! この錆びた手すりの感覚が手のひらに超リアルー! めっちゃ手に付くうー!


「フードのお兄さん、気分悪いのかな?」

「ほえ……!? ほ、ほげ……!」


 いや、このアホみたいに鉄板やら鎖帷子のフード邪魔だな……。ボクが作ったんだけど、今日は滅茶苦茶ズリ下がりまくりだよ。

 しかしこのイケボ、耳に覚え有り……。


「……大丈夫? お兄さん」

「あの人……何のコスプレ? コラボ衣装とか?」

「キモいゲームとかじゃない? さっきのコケた女のツレ?」

「キツ。重そー。ウケる」


 い、イケボ男性に混じって、ボクがヒソヒソコソコソされてるううう! ひどおい!


「お兄さん? 気分が悪いなら肩を貸すよ」

「顔はフツーなのにねー」

「ハロウィン必死勢? いー歳してダサ」


 いや、イケボ男性優しすぎだけど、他の野次馬酷くない!? そりゃー、非イケメンの中年ヲタに優しい世の中なんて皆無だけど! ボロく見える奴だって、ステキに生きる権利アリアリなんだからね! ……と叫べないチキンハートはバラバラブロークン……。


「ぴえ……」

「はい、ゆっくりでも歩けるかな。

 階段も手を貸すね」


 何だよお。この人、生き神様かなんか?

 うう、優しさが身に沁みるけどボクは滅茶苦茶お元気なんだけどなあ……。

 つか、もしかしてお優しさをウリに、身柄を拘束されて人身を販売されちゃうのお?

 でも何か、この人……超聞き覚えあるお声をしとるんだよな……。お顔がフードで見えないけど。このフード、こんなに重かったっけ? 結構製作時に軽量化に勤しんだのに……。


「……あの……」

「あ、僕は怪しいものじゃないよ。そこの女神学園で臨時講師をしてるんだ」


 ……女神学園、臨時講師……。

 それは、隠しキャラ……とくればあああ!


「海藤っていいます。あ、海に藤でカイトウです」

「あわわわわわ……」


 ……隠しルートをたんまり通らねばならん上に、すーぐ攻略不可能な怪盗先生じゃーん!!

 旧校舎の時限イベとか鬼ムズいしヤバかったよね!


「お名前は?」

「か、笠間(カサマ)……です」


 あ、つい元々の名前出しちゃった。

 でも、現代日本設定でオルガニック・キュリナはちょい空気が……だもんねえ。

 日本名でもスルー出来ちゃう、色味の地味さにボクの顔のモブペラさよ……。いやでもこのゲーム、ピンク髪ちゃんも青髪ちゃんもおるでよ……。


「笠間さんですね。この辺の人じゃないですよね? 道に迷いました?」

「お恥ずかしながら……」

「祖父の家が近くなんです。休んでいかれませんか?」

「このご時世に何とご親切な……」


 見知らぬコスプレアラサーを家に上げるとか、どーゆーイケボ&イケメン聖人なんだ、この人……。

 ……でも怪盗先生、バトルモノでもないのに強いんだよね。ボクのような運動不足なヒョロ中年位一捻りかな。かなぴい。


「あの、倒れた人は……」


 そう言えばあのドレスの子……。ボクと似通ったゲームか、時代背景からいらしてない? 女性のドレスの流行はわかんないけど……。


「頑張って来たけど、ドレスが苦しかったのかな……。救急車来てたみたいだね。知り合いですか?」

「いえ、全く……」


 ゴージャスから可憐までよりどりみどりな美女がたにお知り合いが増えたけど、あの子は見たこと無い……。よね?

 なーんか、既視感しちゃうけど……白い髪のあのお年頃の御婦人の知り合い、居ないもんね。

 ティミーよか歳下だよね、あの子。


「着きましたよ」

「近……っ!」


 いや、歩道橋の横の通りの直ぐ裏!?

 怪盗先生のご自宅……いや、おじいちゃんのお家って、こんな激近なの!?

 レトロな看板には、海藤金物店……って書いてある。金物屋さんなんだ……。


「今ちょっと、おじいちゃんが叔父さんの家に行ってて……」

「遅いわ、カナ」

「……あれ? 来てたの?」

「ひょえ……」


 ……おおおおおおでました……。

 青いふわふわボブヘアー、闇に煌めく赤い瞳。

 この子は……こ、この子は……。あれ、なんか静か?

 いや、BGMは鳴らないね。当たり前だけど。


「……また、珍しい人を拾って来たの」

「歩道橋の上で具合を悪くされてたんだよ」

「そう。あの歩道橋、本当に……」


 足音もなく、美女……日向アリアがボクに近寄ってきた。何事も無さそうにフード剥がれたよ。


 え、このお家に何で悪役令嬢たんが。

 まさか、怪盗先生とラブラブエンディング後!?

 ……あの白い髪の女の子と椎名会長とのフラグと言い、アリアたんと言い……。

 轟メアミ(ヒロイン)は誰を攻略してゲットしたんだろ……。気になる……。

 あ、ヒドインだとやだな。

 ムカつく&悲しいのは間に合ってるよ。


「あら、ウサギの指輪……」

「あっ……」


 し、しまったあ!

 コレ、結婚指輪の習慣のないコレッデモンでウッカリ口を滑らせちゃって王侯貴族を指輪騒動に巻き込み、ブライトニアに両手指をリング填められすぎて手甲みたいにされ、オール両足指にまで填められそうになった、おファンシーな名残り指輪!


「ウサギが好きなの?」

「いえあの……こ、濃い人に……」

「恋人? 伴侶ではなくて?」


 ボクも何言ってんだかだけど、アリアたんも変わってるぜ……。

 いやまあ、そりゃ伴侶だけど。……ブライトニアのお年頃は……この時代だと犯罪まっしぐらなのでは無かろうか。拙者、社会的にとうとう死ぬ……!?


「笠間さん、お腹空いてますか?」

「は、はあ……。お構いなく」

「カサマ? ……本当に?」

「ぴょッヒエ!?」


 近過ぎるのでは……!

 つか滅茶苦茶良いお香りが……!

 おにいたまもだけど、悪役令嬢、滅茶苦茶脳天をブチ壊す様な甘ーくていいお匂いがするの……!

 いや、ブライトニアは草と干し草の香りがするね。

 今更だけどあの子、悪役令嬢でも野生児枠だよね。属性多いなあ……。


「貴方、羽のあるウサギの飼い主でしょう?」

「ピエ……」


 呼吸困難な声しか出ないんだけど……!

 この子、何を知ってるの……!?


「……効かないのね。名前は?」

「か……笠間然保(カサマノリヤス)……。

 いえ、オルガニック・キュリナ……です」

「ふうん。そう」


 視線が強おおおおお!

 おにいたまとタメをお貼れるおレベルなんじゃねえええて!?

 あ、ブライトニアにはそのレベルで流石に睨まれたことは……無いよ。気をつけよ。

 というか前世ネームも名乗っちまっただよ。

 あ、此処に転生してるなら前前世ネーム? まあ、名乗ってもちょい字が変わってる程度のモブネームだしね……。

 ニックの方は……向こうではそんなにメジャーネームでもないかあ。


 ……しかし何でそんなこと聞きたいんだろ、悪役令嬢様……。


「ウサギの飼い主さん、貴方余所の人なのね」

「は、はあ……」

「夏に、素敵な夜に踏み込む前のような……深い青い目の少女が来たわ。手足も背丈もちょこんと小さくて、少し困った顔。

 レースの夏ドレスがよく似合っていたわね。でも、あのアクセサリーの剣呑さは頂けない」

「夜に……えっ、アロンたん!?」

「アロン? そう、知り合いなのね」


 アロンたんも来たとおおお!? えっ、この金物屋さん何!? 異次元と繋がってるSF的なお店!?

 いや、そもそも異世界転生がSFチック……かな。もしかしてあの芋煮とかに使えそうなデカ鍋、極太ビーム出たりするかな。

 今気づいたけど、レトロな丸机にムシュド載ってるね……。マドモワゼル・ニアの六匹の仔兎……。


「あの子も欲しかったけど、貴方も良いわね」

「ひええ……」


 伸ばされた手に、赤い瞳が細められた時、右中指のコウモリなリングがチカチカ光ってる……。な、何事!? お値段控えめの10金指輪なのに!?

 あ、ボクの填められた指輪は両手に合計5個。

 ブライトニアが全て24金で作らせようとされたから、頼み込んで辞退したんだよ。重さとお値段で指と胃が死ぬってばよ。


 勿論何も魔術は掛かってない……筈だよね? しかし、ブライトニアの好み? のおファンシーな指輪だと思ってたけど、勝手に光ると怖いよお……!


「あ、アリアちゃん……は、怪盗……海藤先生が好きなんだよね? ボクにもその、伴侶が居るしやめとこ? こーゆーの」

「伴侶と認めたのね。つまらない」


 ふう、と優雅にため息を吐く様は……意地悪いなあ。……こういう疑似体験モテのようなやり取りは胃が痛いよー!


「私をどう思うかしら」

「き、キレーでカワイーだと思う」

「貴方から褒められるのも良いわね」


 コレ、滅茶苦茶心臓に悪いんだけどおおお……。キッチンで大聖人の怪盗先生がクッキング中、何の茶番なのさ。


「他のと違って、私に腕っぷしとかないの」


 他の……他の、何。

 もしかして、悪役令嬢というか……そういう単語入る?


 この子は、何を……何もかも、知ってるの?


「偶に遊びに来て。私、友達がないから……」

「……木戸ララちゃんは?」


 轟メアミは忌み嫌ってるだろーから、友情エンドは……無かったもんね。そもそもこのシリーズに友情エンドは本当に皆無だった……。悪役令嬢は、ヒロイン絶対滅ぼすウーマンばっかだったもんな……。おねえたまはおにいたまになれるけど……。フォーナ、大丈夫かな。今更心配になってきたよ。


「義姉になったから、友達ではない……わね」

「あね……? えっ、義姉!? まさかアサギさんの」

「そうよ、そう。話が通じて良いわ」


 偶にイベント出てたけど、その辺に常に刺々しいトウガラシ系暴君じゃなかったかな。浅葱ってネギじゃなくて緑の辛いトウガラシかもしれないかも。

 ララたん、大丈夫なの?


「オルガニックは、暮らしていて楽しい?」

「ま、まあ。うん。キャパ超えでテンパってるけど……。信じられない事もあって付いてけないけど、なんとか」

「辛くなったら何時でも此処に来てね」


 え、あ……。

 アリアたんって滅茶苦茶優しいな。話も通じるし、でも……。


「ボクは、あの子に相応しいかなあ……」

「あれ? もうおかえり? ドーナツも食べ……」


 ほわほわしたブライトニアの薄茶の毛皮のような、ウサギの指輪が光る。

 ……ブライトニアにあげた指輪は白詰草だった、ような……。

 アレは可愛いけど……やはり女子向けだよなあ、ウサギちゃん指輪……。

 コレはコレで……デザイン考えよう……。


 あのドーナツ、可愛いよね。あんな仔達が何時かボク達にもやってくるかなあ?

 想像付かないけど。


怪盗先生のご飯は、ヒジキ入りの白和えとナス味噌炒め、炊き込みご飯でした。

因みにアリアが全て頂きました。大食い女子。


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矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
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