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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
王城では穏やかに

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草原の兄弟の証言

お読み頂き有難うございます。

悪役令嬢義兄さま乱入中です。

「そもそも、お前ルカリウム草原で鳥番の父親に扱き使われてたんだろ、ティミー。

 母親の話をネタに虐められなかったの?」


 言い方! なんちゅう事仰るの、このひとは!


「何てこと仰るのよ義兄さま! それに、レルミッド様のお父様を貶されるなんて有り得ませんわ! 本当に申し訳御座いません、ティム様!」

「アローディエンヌは丁寧ですねえ」

「ええー、何でアローディエンヌが謝るのお!? 図に乗るなよティミー」

「義兄さま!」

「寧ろ何様なのは馬鹿兄貴でしょ」

「ははは、仲良いですねえ。仲良く狩りをしていただけですよ」


 ……ティム様も動じられないわね……。食えないなあ……。いや、じゃなくて申し訳ないわ。


「アローディエンヌもお気になさらず。

 話を戻しますけど、あのルカリウムの御兄弟は、母上と同じで王家に囚われの身になっていた事も有るんですね」

「ええっ!?」

「あらそうなの? まあ平民寄りなら、虐げられる立場も似通っていたんじゃなくて」


 し、知らないお話がジャンジャン出てくるわ……。でも、よく考えてみればルディ様とレルミッド様のご両親は兄弟姉妹同士……。立場の違う方達がどうやってお知り合いになられたか、なんて……王家絡みしかないのね……。

 普通に苦難を乗り越えて結ばれておいでに決まっているのに、気付かなかったわ……。うう、私ってインドアで呑気すぎる……。


「それで、アレッキオ、兄上様の父上……ジャド殿はなんと?」

「一度あの塔から突き落とされて姿を消して、もう一度お前を連れて戻ってきたってさ」

「……? え? ど、どういうことですの?

 突き落とされてって、やはり元王妃にですか?」

「そお。ジャド殿も現場を見せられたらしいからねえ」


 ルディ様のお父様に……!? ジェラルディーヌ・ドロテ様の妹様を突き落とす所を、見せたの!?

 あの元王妃……なんて人なの。本当に酷い。言葉も出ないわ。

 ……何で、そんな酷い事が出来るのかしら。ティム様は……ショックを受けておられるわよね。うう、お顔を見られないわ……。


「アローディエンヌ、アローディエンヌ」

「な、何でしょうか、ティム様」

「今のところこの塔を扱えるのは、僕を含めて7人です。その誰もが、気軽に無辜の方を葬るような悲劇を繰り返さないでしょう」

「ティム様……」


 残酷寄りマインドのティム様が、こんな言葉を仰るなんて……。失礼ながら、感動してしまったわ。

 そうよね。今いらっしゃる王族は……いやでも義兄さまがいるわよ。一番面倒臭くて、よく使いそうよ。使ってたわよ。

 もし無辜の方を処刑……させないとは信じたいけど信じにくいわ。その場合、どうやって止めればいいの。私がこまめに叱るしかないのかしら。


「つまり、ティムも有害な奴は気軽に突き落とすのね」

「まあ、それはそうです。折角手軽な塔が有りますし使わない手は無いかと」

「せ、せめて……手軽には止めてくださいな……」


 駄目だ、使う気満々なティム様も居られるわ。せめて……さっきの科白通り、善人には使われないと信じたいわ……。善人の方は、義兄さまとティム様の前で変なヘマさえしないで欲しい……!

 大体、手軽な塔って何なのよ! でも、無くすのも問題あるのかしら……。

 恐る恐る上を見たら、何時ものティム様の調子にお戻りで何よりだけれどなあ。

 有害……本当に有害な人は居るものね。困ったものだわ。


「それで、ジャド殿は僕の母とお話されてます?」

「さあねえ。靴をよく蹴飛ばしてたって聞いたけど」

「へえ、それは奇抜な。母上は中々素敵な感性を為さってますね」

「く、靴を……何故……」


 何でまた……。この世界には下駄も無いし、懐かしの天気予報? とかはなさそうよね。

 えーと、裏返ると雨だったかしら。横だと曇りだったかなあ。

 そういや1だったか2だったか、靴を蹴飛ばしてどうのこうのなイベント有ったわね。

 えーと、誰の何のイベントだったかしら。ハッキリ思い出せないのがスッキリしないな……。何か最近微妙に記憶力が失せてきているのよね。引き籠もりすぎて自律神経とかホルモンバランスでも悪いのかしら。嫌だわ。体は強くはないけれど、大して病気しないのが取り柄なのに。


「靴なんか蹴飛ばしてどうするの? 気に食わない奴は直に蹴り飛ばすべきじゃなくて?」

「普通はそうですよね……。謎です」


 いや絶対普通じゃないわよ……。私がアウェイの考えみたいな空気やめて欲しいわ。


「人を蹴り飛ばすのは、ちょっと止めましょブライトニア。それに、あまり普通では無いのでは有りませんかしら……って、義兄さま! 暑い!」

「え? 暑い? 御免ねえアローディエンヌう」


 ボワって何だか横で音がしたと思ったら! 何で炎なんて出してるのよ!!


「アレッキオの火花やら炎に『暑い』で済ませるのは、アローディエンヌだけでしょうね」

「そもそも人の顔の近くで火を燃やすのは非常識よ。ぶん殴りなさい、アロン」

「煩いフロプシー。傍迷惑の権化の癖に、常識をお前に説かれたくないね」

「いや、ブライトニアが正しいですわよ! 大体何で火なんか出しますの!? 今はティナ様のお話をしてましたのよ!」

「ちょっと思っただけえ。靴でもなんでも、燃やせば飛び道具になるじゃなあい?」

「成程、母は火属性ですしね」


 何が成程なのかしら……。そもそも靴を燃やして蹴飛ばすなんて、よっぽど……。

 いえ、そんなよっぽどのバイオレンス行為に走らねばならない、何かがあったのかしら。何せ処刑してくる異父妹がいる環境でいらっしゃったものね……。酷すぎるわ。

 しかし、足技使いなのかティナ様は……。アクティブでいらっしゃるのね。双子であらせられるジーア様と同じような見目でいらっしゃるのかなあ。あちらは記憶を取り戻されてからは、クールビューティーな感じでらっしゃったようにお見受けするけれど。


「流石に、ジャド殿に母上のお話をお聞きするのは無理ですかねえ」

「陰険なショーンが妨害するんじゃない?」

「まあ、ティムは普通に危ない奴だものね」

「酷いですねえ、フィオール・ブライトニア。生き別れた両親を探す哀れで健気な男なんですよ、僕は」


 そうなんだけれど……。

 どうもそうですね、と軽やかに同意出来ないのよねえ。


「しかし、それだとしたらジーア様も」

「何度か此方と異界を行き来している可能性が有りますね……」

「そうなの? 魔境ならジーアの体が弱っちくなっても仕方ないわね」

「フロプシー、魔境って何」

「得体の知れない変な世界よ。オルガニックもアロンも其処に居たんでしょう?」

「いや、魔境……なのかしら?」

「ああ、前世混じりの件だねえ?

 魔境だろうが異界だろうがその辺だろうが! アローディエンヌは、絶対安心で心から愛する僕の傍に即座に戻る運命だけどね! 安心してえ!」

「何をしましたのよ、義兄さま」

「ああ、だからですか……」


 え、何。後頭部にティム様の生温い視線を感じるわ。寝癖でも付いてるの!? じゃなくて、このジャラジャラ付けられたアクセサリーの事!?

 義兄さまが何やら色々付与してそうね……。即座に戻るって何をしたのかしら。変なことじゃないと良いけれど。


「効果がありそうですし、ジーア伯母上にもお召し頂きたいですねえ。ゆくゆくは両親にも」

「自分で調べなよ」

「アレッキオは相変わらず冷たいですねえ」


 フフッ、とティム様が笑ってらっしゃるわ。え、何かティム様のご機嫌を上向きにすることあったかしら? 義兄さまは失礼極まりない事しか言ってないわよね?


「僕の両親は此処ではなく……。異界か魔境かで、生きている可能性が高いということですよね」

「何がどうなってそういう認識なの? 変わっていてよ、ティム」

「アレッキオ、説明しても?」

「好きにすれば」


 ……ティム様に向き直ろうと思ったら、背後からベタベタくっついてくる義兄さまが気になるわね。気が散るわ……。


「義兄さま、どういうことですの?」

「まあ、仮定だけどお。

 実験するにしても今は無理だしい」

「お聞かせくださいな」


 いや、上向いただけで……何でガン見されるのかしら。逸らすと煩いのよねえ、このパターン。

 かと思えば頬を赤らめないで欲しいわ。何なのよ。


「ふふう、アローディエンヌに見つめられちゃったあ」

「……私の顔如きに何が良いのか判りませんが、そういうのは宜しいですから。

 早くお聞かせくださいな」

「アローディエンヌのお、ちょおっとせっかちなところも好きい!」

「義兄さま!」


 早く話せって言ってるのよ! キャッキャって喜びながら、おでこと頬っぺた突つかないで欲しいわ!

 くそう、ティム様に説明して頂けば良かった!


「この塔って、大体王家と関係ない気に入らない奴を王家の奴が派手に処刑したい時に使ったりするんだけどさあ」

「義兄さま、言い方」

「まあ、事実ですからねえ。でも、大体内輪揉めには使われません。

 王家の者を処刑した事例が少ないんですよ」

「ああ、()()()()()になる状況ね」

「そうですね。古式ゆかしくそんな感じでしょう。この塔を使うのって、まあまあ準備が大変なんですよ」


 この御三方はナチュラル王族だからか、シレッと言うけれど……改めて考えると、ゾッとする話ね。

 乙女ゲームに出てきた舞台とは……いや、イマイチ思い出せないけれどあのゲームのバッドエンドはまあまあ酷いわ。現代ベースの1と2は兎も角、なんたって義姉さまとブライトニアを敵として相手するのだものね……。ロージアは自業自得だったけれど。


「アローディエンヌも使いたくなったら遠慮なく言ってねえ」

「あら、王族の血を引かないアロンも使えて?」

「アレッキオなら、何でも使わせるでしょうね」

「権利もありませんし使いたく有りませんので、ご遠慮しますわ……」


 ウィンクされて言われる事じゃないわよね……。

 イチイチまた蠱惑的で腹が立つわ。


「つまり、王族の血を引く母とジーア伯母上は……この塔の何らかの力で異界へ行ってしまえるのでしょうね。しかも、二回も」

「まさか、女神像の……」

「女神像? ああ、あの濃い味付けの女神像とやらよね? あたくし知っていてよ」

「……いや、ブライトニア。

 そんな生活習慣病まっしぐらみたいな名前じゃなくて……。パッと出てこないけれど、何だか違わないかしら」

「『恋を愛する女神像』ですね」

「でもあれ、増えるだけだろ」

「増える……? どういうことでしょう」


 あの怖い顔の女神像、意外と信者が多くて沢山祀られてるとかかしら? そんな特徴有ったかしらね。うーむ、微妙に色々判らないわ……。


「まあそれはどうでもいいよお。この国もだけどお、変な神多いよねえ」

「その変な神の仕業かもしれないですよね」

「……神様の仕業……。ジーア様と、ティナ様とご伴侶の失踪が、ですか……」


 確かにこの森に人知れず埋まっているよりは、とても良いのだけれど……。

 異世界(ブライトニア曰く魔境)とは、私の前世なのかしら。

 それとも……。

 夢で見た、金物屋の……青い髪の美女の居る世界? 彼女は何て、名前だったかしら……。夢だったのに、夢だからかしら。記憶が薄いわ……。


「せめて伯母上の記憶が定まれば、分かりますかねえ。若しくは、ミズアという従姉妹殿が見つかれば」

「取り敢えず、お前の両親は異界に居るんじゃないの?」

「義兄さま?」

「ジーア様のようにまた戻ってくるかは知らないけど、死んだとは限らない。見たところ死骸もないし」

「でも、兄上様が見たという姿は……」

「お前、先祖にジーア様やティナ様みたいな姿形の女が居ないって言える? 

 大体、ショーンは、ティナ様に会ったことはないだろ」

「それは、そうですが」

「何れ会えるかもね」


 何でかしら。義兄さまがそう仰ると、そういう流れなのかしら……って、思ってしまうわね。

 確かに、此処に埋まられてない保証は無いわ。だけれど……。ジーア様という、失踪から戻られた方が居られるものね。

 後、この残酷な愛に殉じる塔に何か……処刑以外の力が備わっている可能性も、あるわ。

 そうであって欲しい……。


「つまり、アローディエンヌを煩わせるな、面倒」

「義兄さま!」

「つまるところ、アレッキオはそうですよね……」

「馬鹿兄貴だものね」



ティナの必殺技は、靴飛ばし……古式ゆかしき明日天気になーれ、の燃えてるバージョンです(分かりにくい)

特に天気予報は出来ないです(当たり前)



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矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
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