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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
悪役令嬢は旅行希望

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悪役令嬢の発想は突飛

お読み頂き有難う御座います。

義兄さまにサポートキャラ活動を邪魔されたアローディエンヌが、モヤモヤイライラしております。

「はあ」


 結局あの後……何だか良く分からない内誤魔化されて、気が付けば長閑な風景の中。


 何 で や!!


 いや、知らない風景じゃないのだけれど!!

 何で此処なのよ!!

 私、昨日迄! 良い位置でヒロインと攻略対象様(シリーズ違う奇跡のカップル)ラブコメを目撃していたモブサポートキャラだったわよね!?


 悪役令嬢である義兄さまに邪魔されたあああ!!

 何なの!? こういう所でキッチリ妨害しなくても良くない!?

 そんなにあのおふたりが気に入らない……んでしょうね。知ってた。

 ええ、悪役令嬢ですものね。邪魔するのが本懐なんでしょうね!腹立つな!


 此処はユール公爵領のお邸……。本邸って言うのかしらね。王都の邸も結構大きいけれど……こっちは果てしなく大きい……あれ、同規模程度だったわよね?何時増築されたの?離れるとあの棟とか増えてない?

 錯覚なの?

 いや、どう見ても大きくなってるわよね……。あの辺に建物無かった筈。しかしバランスが……錯覚なの?


 ああ! そんなのいいわ! モヤモヤする! 何で私は義兄さまに帰ろうって言われて頷いたの!? 私がサポート出来なかったのは、フォーナのサポートキャラであるオルガニックさんじゃないから!?

 ……確かに、前フォーナとレルミッド様のスチル的現場は、オルガニックさんが居られたわ。

 あああ!!オルガニックさんに協力を……でも、それだと、今回は素直に帰ってくれたブライトニアが怒る!!


 ……八方塞がりだったと言うの?

 ぐうううう!


 で、いつの間にか連れて来られたらしい子供達がお昼寝してたから、外に出たの。

 結局ことの顛末も分からず! モヤモヤーっとして! 何だか腹立つから、出てきてしまったのよ。天使の寝顔をイライラしながら見つめて……もしかしたら当たりたくなるかもしれない。

 悪い親だわ。私って。シアンディーヌ、アウレリオごめんなさい、心を立て直して直ぐ戻るわ。

 と思ってたら……使用人に追いたてられて散歩に行くことになったわね。


 ……と、まあ、色々言いたいことはあるけれど、散歩がてら久々にあの川の側に来てみたのよね。

 お天気は少し薄曇りだけど、お花畑も綺麗だし。綺麗に整備された小道は歩き易かったわ。

 偶に戻ってみると、静かで長閑よね。


 ただ、自然じゃないレベルの美しいお花畑が広がってたりすると、やっぱり維持にお金掛かってるなと思ってしまうわ。窓から覗くだけで見渡す限りお花畑だものね。……管理してくれている部下に感謝しなきゃ。


「アローディエンヌう、川の水グルグルするう?」

「……いや、しませんけれど」


 何で居るのよ。

 しかも当然のように!!

 気分がやさぐれてたまらんと言うのに、何で私のヘボさを誇示せにゃならんのよ。


「そっかあ、したくなったら言ってね。アローディエンヌの魔術、見逃さないから! ふふう!」


 ……いや、何でや。

 私の魔術って……桶の中の水をグルグル回すだけなのよ。それを見たい? また?

 ……義兄さまはもっと派手いえ、恐ろしい魔術バンバン使うじゃないの。桶の中の水をグルグル回す程度の魔術を見たい?

 ……相変わらず意味不明だわ。


 一応ひとりで……護衛付きだけど、ひとりで! 出た筈なのに!!

 義兄さまは当然のように居るのよ。何時の間に当然のように。


 本当に、どういうことなのよ。本当どういうことなのよ。またあの意味不明なワープ魔術使われたの!? それともあの意味不明な足音立てない歩き方で後をつけられた!?

どっちでも良いけれど、本当どういうことなのよ!?


「義兄さま、何故ご一緒なんですの? 私、ひとりで! 出た筈ですわよね?」

「ええー? んもお! アローディエンヌったらあ! 可愛いきみをひとりにする訳ないじゃなあい!」

「いや義兄さまもご都合が」

「僕の人生の最優先事項は全てアローディエンヌだから! ふふうっ! 何処にいてもアローディエンヌが最初!」

「方々へご迷惑なので即刻止めてくださいな」


 ああ、言い争ってる間に着いちゃった。

 まあ、直ぐ其処なんだけれど……だから来たんだけれど!?


「アローディエンヌう、川だよ!」

「はあ……」


 川をバックに微笑む悪役令嬢義兄さま……。炎のようにフワフワした赤い髪が風に靡き、薄い青の瞳が、私を見つめ続けている……。

 何処でもこのひとは絵になるわね。


 でも、何か……川に違和感が有るのよね。

 間違いなく仕込みだって位置に木は生えてるし、絶妙の位置に置かれているベンチには屋外なのにクッションが置いてあるのよ。突然の雨で濡れないの?

 やっぱり川の周りが……無駄に可愛らしくなっているわ。横の悪役令嬢が使用人に仕込ませたんでしょうね。お誂え的に花も何故か満開だし。綺麗だけれど。

 ……私が此処に行く予測を立てられてたのが何だか……イラッとするわ。


「アローディエンヌう、どしたのお」

「……いえ、別に」

「声が可愛く尖ってるよお! ちょっとイラッとしてるねえ?」


 声のトーンでひとの機嫌を測らんで欲しいわ……。尖るのに可愛いもへったくれもないわよ!

 ん? あれ?何かガサッて音がしたわ。


「誰か来ましたわね」

「あれ、不法侵入者だ」

「不法侵入者あ!?」

「そおだよお?僕が許可してないもん。んもう、跡形もなく燃やしてこーよお!」

「燃や……!? いや、止めてくださいな!!」

「はあい、持っててね」


 気が付いたらベンチに強引に座らせられて、義兄さまはあっち行っちゃった!! おいおい!!

 立ち上がろうとしたら……何この渡されたクッション!? 重っ!!

 赤い蝶々と青い……雨の器の刺繍がしてあるフツーのフカフカのクッションなのに、重! この密度、どういう事よ!? 魔術!?


「ユール公爵様! お待ちくださいませ!」


 ……うわ大きい声ビックリした! 何なの、こんなに離れてるのに!? どんな声量!?

 よく見ると……義兄さまの前に立ち塞がる誰かがいるな。女の人?若い……かしら?

 て言うか、めっちゃ私後ろのベンチに居るんだけどなあ。あ、チラッて見られたからワザとかしら。


「わたくし、貴方様を長年お慕いしておりましたの! わたくしの愛は奥方よりも」

「通行の邪魔するな」


 ……うわあ、にべもないな。義兄さまの周りにチラチラと火花が漂い始めてる……。

 殺傷沙汰にならないでしょうね!? 丸焼きとか普通に怖すぎるわよ!! と言うかこんな長閑な地で火花を散らすな!


「長年って何」

「え?」

「何年何日何時間何分何秒? 気候は? 気温は? 湿度は?」


 何 で や!

 座ってると言うのに、ズッ転けそうになったわ。小学生か!! いや、此処の世界に小学生の概念は無いけれど!!

 しかも仮にちゃんと返されたところで、それが何ってブッた斬るんでしょ! 滅茶苦茶よ!!


「ええと、あの……」

「話にならない。不審者、其処を退け」

「ふしっ……そんな! あの時はあんなに親切にしてくださったのに!!」


 えっ、義兄さまが親切を!? そんな馬鹿な!!

 義兄さまに、他人を思いやるとか慮るとかそういう気持ちが珍しく発動したの!?

 ……な、無い訳ではないのよね?部下には……優しいし。悲しい状況下だったり不遇な人が多いから、手を差しのべるのは良いことよね。


 ただなぁ。役立たせる為の下心アリの優しさ……に見えなくもないのだけれど。て言うか其処を認めたら皆に申し訳が無さすぎるわ。いや、別に認めても良いのよ! 嫌だわ毒されてるな! ……更に改めて部下の皆に感謝しましょう。


「だから私、お礼がしたくて……」


 でも、あのタイプの女性には親切にしそうにないな。

 濡らしたハンカチで泣き真似してるものね。ちょっと離れた此処からでも見えるレベルでポケットがビシャビシャだわ。気持ち悪くないのかしら。

 それにしてもこのクッション、重い!! シアンディーヌとアウレリオを膝に乗せてるレベルで重い!!


「ギャッ!」


 あ、ハンカチが炭になった!! これはヤバい。義兄さまがブチ切れてる!!


「其処を退け、って聞こえない? それなら耳は要らないな。俺の妻を貶す汚れた喉も要らない。審美眼の欠片の無い目玉も不要。首から上も下も不要か。存在が不要」

「あ、あ! あああ!!」

「ちょっと、アレッキオ……」

「奥方様」

「え?あ、有り難う」


 耳元でそっと呼ばれたもんだから、つい振り返ると……使用人がお茶のカップを差し出してくれた。

 まあ、湯気がとっても良い香り……。この香りは林檎かしら?


「って、いやそうじゃなくて! 義兄さま! あまり残酷な真似は……」

「なあにい?」


 …………。

 ………………!?


「ちょ、ええ!?何で横に居ますのよ!?」


 さっきの人は!?あっ、居ない! ええ!? まさか、燃えカスとか死体も……何処行ったの!?


「ええー? アローディエンヌったらあ! ひどおい! 僕は何時でも君の傍に居るってばあ!」

「そっちじゃなくて、さっきの人は!? 居ない!!」

「全くもう、困っちゃうよねえ。アローディエンヌと居るから、ちょっと緩んじゃったのかなあ」

「何がですか!?」

「ふふう!アローディエンヌが魅力的だから、魅了抑え込みが緩んだみたいかもお!」

「ふざけないでくださいな! 意味が分かりませんわ」


 と言うか、さっきから何なのよ!? 魅了抑え込みが緩んだ!? そんな事有り得るの!? 義兄さまの悪意有る故意以外で!? わざとらしく小首を傾げないで欲しいわ!!


「アレは売り込みに来た商人でねえ。却下! シーランケードとかにしよっかあ」

「いや、話の流れ!」


 何よシーランケードって!! 良く分からないけれど、変な名前ね!?


「シーランケードはねえ、アレカイナにある保養地だよお。結構萎びてるらしいねえ」

「しな……鄙びたでしょうが!!」

「要するにね。昔ちょっと流行ったからって調子に乗って寂れちゃって、経営者が萎びたとこだってえ」

「要するにが全て悪口じゃありませんの! それよりも殺人は」

「ねえアローディエンヌ? 僕さあ、きみがあ、綿毛神官に煩わされてる間、寂しかったなあ」

「はあ?」


 え、何の話なの?

 妨害しかされてない上に、毎日顔を合わせてて……寂しかった?

 はあ? はあー!?

 あ、開いた口が塞がらないと言いたいけれど、あんまら大口が開けられないわ。


「余所の国ではさあ、新婚旅行って言うのが有るらしいよ。ウチにも取り入れようと思うんだあ」

「新婚旅行……?」


 そういやそんな習慣有ったわね。

 基本、家の中に居るから其処まで困らなかったし……性根がオタクで引きこもりだしな。

 いやそれよりも、鄙びた保養地に子供達も連れてくのかしら。大丈夫かな。

 アウレリオは兎も角、巨大芋虫であるシアンディーヌが受け入れて貰えるかしら……。アレカイナっで獣人多いなら、誤魔化せないかな……。


「温かい泉……温泉が有るんだってえ。大体の建物と設備は潰れかけらしいけどお」

「それは構いませんが、子供達とお邪魔しても騒ぎになりませんの?」

「ふふう! 別荘を綺麗にさせておいたからあ、人と会わないよお!」

「別荘? 他国に別荘なんて有りますの?」


 初耳だな。まあ、ユール公爵家は……把握出来てないレベルでお金持ちだものね。……いかん、スケールが大きすぎて他人事ぽくなってくるわ。


「押し付けられたのを放っておいたの、思い出してねえ」

「え、押し付け……? 誰からですかしら?」


 別荘を貰って忘れる感覚が分からないわ……。


「その辺の屑だけどお、立地はまあまあかなあ。一応馬車は乗り付けられるしい、こじんまりした館では有るよお」

「その辺の屑!? まさかカツアゲ……」

「酷おい! 僕、理由も無しにそんな事しないもん!」

「はあ!? 理由が有るならするんですか!?」

「だってえ!空き部屋に僕を連れ込もうとしたんだよ」

「はあ!? ……それはご無事で良かったですわ」

「ふふう、心配してえ! 燃やしちゃったけどお! 傷付いたあ!」


 ……過剰防衛……いや、そもそも既婚者いえ、嫌がるひとを空き部屋に連れ込むのは犯罪よね。

 ……何でよりによって義兄さまを……。自殺願望のあるアホなのかしら。いや、そうじゃなくて……!!


「と言う訳でえ! アローディエンヌと愛し合う新婚旅行とお! 家族旅行! 明日からあ!」

「あ し た あ!?」


 いや、どういうことよ!? 早すぎるでしょう!!

 旅行に計画とか、無いの!?

アレカイナ連合シーランケードは温泉地です。地味に義兄さまがアローディエンヌと行きたいねって話してましたが、覚えてお出ででしょうか。

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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
[気になる点] アロンさんでは跳ね除けられない重たい愛の詰まったクッション。 [一言] 義兄様の気性なんて国中に知れ渡っていると思われるのに、 灯火に集まる蛾の様な輩が後を絶たないのは本当に気の毒です…
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