屋根の上から愛を聞く(レルミッド視点)
お読み頂き有難う御座います。お待たせしました。
フォーナのお話、ラストです。
レルミッド視点でお送り致します。
……あー、いけねえ。
思わず屋根に乗っちまった……。
つーか、何なんだこのモヤつくの。何でこう、イラッとすんだよ。
オーフェンのオッサンの助言通り花はやったし、フォーナは喜んで、それで……良かったのによ……。
「ハー……」
「お前、趣味悪いね」
「ハァ!?だっ、アッ」
「煩い」
何で此処にアレキちゃんがいんだよ!?つか、真後ろから見下ろしてくんな!!ウゼえ!!マジで腹立つ!!
つかコイツ、もしかして義妹を付け回してんのか!?見張らせてんのかよ!?
……迷惑過ぎだろ。
「お前の趣味は最悪だし、綿毛神官の趣味も悪過ぎ」
「何だと!?アァ?」
「全然分かり合えない思考同士なの、理解しといてこれだもん。面白くてならないね」
「……っ!」
本気で嫌になるが、アレキちゃんの指摘は胸を突いた。
俺とフォーナは分かり合えない思考同士。
そうだ。
分かってる。
フォーナの甘い所は好きだが、イラッともする。
アイツはくだらねー事で怒鳴る俺を怖がってる。
……仲良しこよしには、無理が有るのは分かってる。
「お前の胸の大きい歳上好みなのも、無意識に相性が良いのを見繕ってるんじゃない?
どうでもいいけど」
「っ……つか、しつけーぞ!!む、胸とか別に……つか、関係ねーだろ!」
「初対面で私の胸を見てた上に、悪魔の四騎士やらコレッデモン女王陛下にデレデレしてた鳥番に言われてもね」
「みっ……」
「チラチラとしつこめに見てた。男は隠してるつもりでも、顔と胸への目線の往復は滅茶苦茶目立つよ」
こっ、この野郎……!!
つか何でコイツ、マジで男にも女にもなれやがるんだ!?何でもいーがこの性根、マジ滅茶苦茶面倒臭え!!前から思ってたが本気で面倒臭え!!
つか、本性知ってからはお前なんか見てねーよ!!
「まあ、お前が破綻した方が溜飲も下がるんだけど……アローディエンヌの娯楽になる内は我慢しないとなあ」
「ハァ?義妹?」
「あーあ、何でこんな煩いだけの馬鹿共見物が面白いんだろ。
そんなに拗れた恋愛に浸かりたいのかなあ。
僕と実地でしたら良いのに。
可愛いアローディエンヌとなら、拗れたフリでも悲しいけど……ちょっとだけ付き合うのにい……!」
うっとりすんな!!つか誰が拗れた恋愛に浸かりたいんだよ!!義妹は……まあ、フォーナに付いてるから多少野次馬根性でも許すけどよ!
「気持ち悪ィ事言うなや!!」
「気持ち悪い想像しかしない鳥番の脳内が悪いんだろ。よく動くように頭蓋骨に園芸砂突っ込んで来いよ」
「ざけんなボケが!!」
「大体、仮にも好きなら何で口説かないのか意味不明だね。優しくも出来ない相手なら相手にするだけ無駄」
「っ……」
優しく出来ない相手なら、相手にするだけ無駄。
何でコイツは一々人の神経を刺して来やがるんだ。大体よく知らねーが、義妹義妹義妹マジ煩えし、ツラの割にドヤ顔で語れる程恋愛経験無いだろ!多分!ムカつく!
「あーあ、本当につまらない奴。流石王家の血を変な風に作用させて引くだけ有るね」
「お前も引いてんだろーが!!」
「だから円滑な親戚関係は築いてないだろ。馬鹿なの、鳥番」
「だったら関わんな金輪際!!」
「綿毛神官がアローディエンヌに関わらなきゃ、俺だってそうしたいね」
ああ言えばこう言うコイツをマジでブッ飛ばしそうに……なったが。つか、手にブチかまし用の風は集めてたが。
……眼下に、アタフタするフォーナが見えた。
俺の部下のせいで、振り回されてるフォーナが。
「……」
「ダサ。良い所で踏み込もうと思ってる?お前の気性的に似合わない」
「違ぇよ!!」
つか、思考が纏りそうな時にチャチャ入れんな!!
って、あの変な色合いの頭はフロプシー?何で居やがるんだ。
アイツ、ニックと結婚とかして即位して、滅茶苦茶忙しーんじゃねーのか。脱走し過ぎじゃねー?
……その辺のペットみたいな奴だな、マジで。
「フロプシーもやっと来たか」
「ハァ?何でフロプシー……。ちょい待てや、まさかお前の差し金かよ!?」
何であんな都合良く……!?
いや、しかし……フロプシーがコイツの頼みで通り掛かるか?義妹なら兎も角、アイツ、絶対アレキちゃんの言う事なんか聞かねーだろ?何で……どーやって誘き寄せやがった。
「汚職まみれのソーレミタイナで、隠されてた塩害なんて結構有るらしいしね」
「ハァ?汚職?」
何の事だ……。いや、隠された塩害?それを穿り返してフロプシーの住まいからソーレミタイナに行かせて……此処を通過させてこっちに誘き寄せたって事か?
……いや意味が分からねえ!!
つかフロプシーも態々他国を通るなや!!義妹の顔でも見に来たんだろうが……ああ!全て今更だがよ!!
「綿毛神官を甚振る役柄なら丁度良いだろ」
「お前……まさか、フロプシーをフォーナをイジメさせる為に呼びやがったのかよ!?」
「……察しが悪い鳥番」
「ハァ!?
あくどい顔で見下ろすな!!逆光で余計に悪者臭えっつーか、悪者だったな!」
「ふーん、俺が悪者?
じゃあ鳥番は何様?正義の使者様?
じゃあもうちょっと派手な色着たら?そこの服屋に掛かってる水玉と縞の鱗みたいな服とか」
「誰が着るか!混ぜっ返すなボケ!!」
つか何であんな旅芸人みたいな服が大通りで売ってんだよ!?何用だよ!?
「本当につまらないね」
「何の為にんな事仕出かした?アァ?俺への嫌がらせかよ!?」
「それを聞く?察しも悪い鳥番」
「それしかねーだろうが!!」
「何で俺がお前なんかを構わなきゃならない。もっと綺麗な愛の為に決まってるだろ。お前と綿毛神官のみみっちい軋轢なんて退屈しのぎ程度、どうでもいい」
「……」
キレイな愛もへったくれもあるか!ブッ飛ばしてえ。
マジブッ飛ばしてえ。だが、流石に屋根の上とはいえ、往来で……しかもフォーナが居やがる前だ。
「ホラ、綿毛神官が叫んでるよ。
煩いなぁ、黙らせれば?鳥番」
コイツマジブッ飛ばしてえな!!
でだ。
掻き回すだけ掻き回してフロプシーは帰りやがるし、アレキちゃんは義妹無理矢理連れて帰りやがるし。
結局何かグダグダしてたな。
全部アレキちゃんのせいだと思うが……。
いやマジアレキちゃんのせいだよな。
つか、多分アイツが裏で手を引いてやがったんだよな。
フォーナと俺を混ぜっ返す為に。
……マジでどういう性格してやがるんだ。
「えへ、えへへへへ」
「おい」
「えへへへへ」
「口半開きは止めとけや」
「はうっ!?す、すみません!う、嬉しくて!!」
何であれで笑えるんだコイツ。
フォーナの手を取って歩いて帰る事になったから、まあ……いいか。
まあ、性格のどーのは……結局は何も解決してねーんだがな。
取り敢えず……明日はあの部下にヤキ入れる位か。
「レルミッドさん!」
「何だよ」
「貴方は、素晴らしい方ですよ!」
「……ハァ?」
いやこういう所だよな。
俺の悪い所は。意味不明でも取り敢えず聞かなきゃなんねー。
「私、貴方に追い付きたいと……さっきまで考えてましたけど。そもそも無理ですし、あの」
「何の話だよ」
……本気で意味が分からねーな。
「ええと、すみません。言いたい事が溢れて……」
「あー」
「ええと、あの」
「おう」
「……そういう所が好きなんです」
「おう、……ハァ?」
「アロンさんみたいに的確に言えませんし、オールちゃんみたいに積極的にもなれません。マデルさんやミーリヤさんみたいに素敵なおむ……貴婦人じゃ有りませんし」
「……他は兎も角、フロプシーは参考にすんな」
つかまた胸の話かよ。どんだけドスケベだと思われてんだ俺は。言わねーけど。
確かにねーちゃん達は美人だが、もう身内の女みてーなもんだし。
つか実際親戚関係だよな。益々スゲー家系図になりそーだ。
「利発なレルミッドさんに一杯我慢させる愚鈍ですみません。ですが」
フォーナの顔は、俺と居る時は大概笑顔か慌ててる……。苦労してる割に、笑顔が多い。
滅茶苦茶ボロクソに言われたのにな。俺のせいだって怒りゃいいのに、笑う。
「……凡庸ですみません。努力し続けます。好きです」
「俺も、お前の笑顔が腹立つ時も有るが好きだ」
だから、俺も。
正直に言おうと思ったんだが。
「……はわ」
「アァ?」
「はああああ!!す!すみません!!腹立たしい笑顔ですみません!!で、ですが好き!?好いてくださって……ど、どうすれば……!?」
「いや、オイ!!どーすればもねーだろーが!!」
……いやマジで。
慌ててる方が多いな。
取り敢えず引っ張って帰って……。
滅茶苦茶じーちゃんと叔父上様に怒られんだろーな。まあいいか。
懲りない四代目ヒロインで御座いますね。




