変なフラグはいつの間に
お読み頂き有難う御座います。
間が空いていて申し訳なく。
フォーナとアローディエンヌはレルミッドを追っていたら変な人に捕まりました。
「……貴方、一体何方?」
「……?お前こそ誰だ。何処ぞの穀潰し娘のようだが」
うーむ、穀潰しか……。まあ、当たってはいるわね。娘ではないけれど。しかし中々に傲慢な奴ね。
私への対応は兎も角、フォーナへの態度が気に食わないわね。全体的に苛つく奴だわ。
「あ、アロンさんに何て事を仰るんですか!!謝ってくださいいい!!」
「煩い小娘だな。お前こそ失礼な其処のお友達に黙らせておけ。それよりも私の申し出に早く頷かんか!」
「落ち着いて、フォーナ。貴方の申し出?……ああ、思い出したわ」
あー!フォーナに絡んできた、徽呪章院の……レルミッド様の部下の……変な職員だったわね。聞いてた髪の色は確かに紫だわ。
それにしても……優しい気性のフォーナが強く言い返せないからって、この態度……。
ああ、腹が立ってきた!!何て奴なの!滅茶苦茶腹が立って来たわよ!
「貴方こそ、その無礼な口を閉じるのね。
フォーナ嬢の御身分を知らない不心得者」
「はわ、アロンさん……?あのあの……」
ポカンとしてる所申し訳無いけれど、此処はガッと畳み掛ける所よね!……多分!……勢いの出し具合がよく分からないわ。声も張れていないし……居丈高な振る舞い難しいわ……。
「ふん、その娘は他国の皇族の末席崩れだろう」
「はわ……」
え?知っててその態度って、かなり酷くないかしら。国交を何だと思っているの?フォーナがお父様やブライトニアとレギ様に告げ口するとか考えないのかしら。馬鹿にしているわ。
「まあ?随分な物言いね。忘れられそうにないわ。
御身分を返上されてはおられるけれど、高貴な御身分の方の血を分けた、姉姫に」
「……何?」
……はん!顔色が変わったかしら!?義姉さまの真似……巧く行ったかしら?ハッタリを効かせられそうかも!こういう権威が好きそうな奴には権力を!!
……何だか、此方が悪者っぽいわね。まあ、嘘じゃないから別にいいか。
んん?
あれ、何か横切ったわね。鳥かしら。
「アロン!」
「何かしらブライトニア……え?」
だだだんだん!!
……え、何今の音……。それに、私今、誰に返事した?
「あら、何か踏んだわね。靴を履いていて良かったわ。アロンは汚れてなくて?」
「お、オールちゃん!?」
「ブライトニア!?」
其処に居たのは……毛先に掛けて黒いグラデーションの薄茶の髪を耳のすぐ上でツインテールにした髪がばさっと揺れる。
垂れ目に収まった紫の瞳が煌めく、掛け値なしの美少女……。
滅茶苦茶知ってる、その姿……。
……いや、何で此処に居るのよ。オルガニックさんと新婚生活満喫中では無かったの?
「何よ、駄姉まで居たの?ウザったくてよ。早く消えなさい」
噂をすれば、ブライトニア本人が……何故。そして相変わらずフォーナに酷い!
「いや、フォーナにそんな事を言っちゃ駄目でしょう!?大体何でそんな突然なの!?お仕事は!?」
「ソーレミタイナの塩害被害を見に行くの。そのついでに、アロンの様子を見に寄ってやってよ」
「お、オールちゃん。優しい子に育って嬉しいです!」
「出来損ないのお前に、養育された覚えはなくてよ」
「そ、そうですが……それでも嬉しいんです!」
た、態度悪いわねブライトニア!鼻で嗤う事は無いでしょうに!!
「フォーナに酷い事を言っては駄目よ、ブライトニア!……と言うか、来た理由は分かったけれど今は込み入っていて……あ、あの失礼な人は?」
……あれ、居ないわ。何処行ったのかしら。
まさか帰ったって事は無いわよね?滅茶苦茶見回したけれど、全く姿形がない……。何故なの?
「今、目の前に居たわよね?」
「はわあ……ど、何処に行かれたんでしょう」
え、フォーナも見てないってことは、本当に神隠し的な感じなの!?
「お、お嬢。踏まれては……。よ、汚れた御靴をお替えになられますか?」
「穴も空いてないし替えは要らないわ。でも、国に着いたら棄てて良くてよ」
……ブライトニアの後ろに居るのは……青ピンクの髪の青年……。あっ、まさかあの時の獣人の子?ええと、ヴァン君だったかしら?大きくなって……。じゃなくて、え?踏まれては?
「踏んでる!?ブライトニア、人を踏んでいるから!」
「アロンにイチャモンを付けた輩でしょう。八つ裂きにして良くて?」
「やめて頂戴……。
と言うか、何処から来たのよ……」
何で退かないのよ。
「ふふん、あっちよ」
ブライトニアったら、ドヤ顔で上の方を指差して……え?上?
あの人に飛び蹴りしたんじゃなくて、上!?
「道が混んでいるからしゃらくさくて、屋根を走ってきてよ。配下も跳べるのを連れてきたわ」
「お久しぶりです。ユール公爵夫人、フォーナ様」
「は、はわわ……お久しぶりです……」
「お、お久しぶりですわね。
ブライトニア、普通に混み合っている道は徒歩か、馬車を使ってよ……」
……と言うか、目に見える範囲は混んでないし……何故屋根なのよ。
何処の世界に屋根の上を走ってくる皇帝陛下が……案外居そうかしら。
嫌だわ、二次元脳なの。常識的に考えたいのに!この頃新聞も読んでるのに!!
「それはそうと、駄姉はレルミッドに振られたの?」
「はわ!?」
「ふ、振られていないわよ!!」
「レルミッドは役に立つから持って帰りたくてよ。
何処に行ったのかしら」
「ブライトニア!?」
持って帰る!?レルミッド様を!?何ちゅう事を言い出すのよ!!
「レルミッドは、胸の大きい歳上の女が好きなんでしょ?
あの飛び地にも該当者は居るから、適当に与えれば良くて?」
「そ、そんな……オールちゃん、待ってください!」
「煩くてよ、駄姉!お前の言うことなんて聞くと思っていて?」
「う、う……」
其処まで言う!?滅茶苦茶涙目じゃないの!
「ブライトニア!レルミッド様はフォーナを振ってなんかいないわよ!」
「フン!どうせ、駄姉の責任感皆無で偽善的で無神経な発言がレルミッドを怒らせたんでしょ。
オルガニックに昔から面倒を見させて、本当に碌でもない女だわ」
「オルガニックさんは、この話に関係無くないかしら?」
「アロンに庇われて、本当に忌々しい女ね!」
「す、すみません……」
うっ、人が集まってきた!こういう野次馬は要らないのよ!もっとハッピーな時に集まって欲しいわ!!
「ねえ兎に角、その人から降りて頂戴。ブライトニア」
「とどめを刺しても良くてよ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいいい!」
「え?フォーナ」
フォーナがしゃがみ込んだら、キラキラキラって……柔らかい黄色の光が……。
え!?もしかして、フォーナの回復魔術!?まあ、何て……綺麗な色なの。前に見た時より透き通ってファンタジーな……って、そうじゃなくて!!
「う、うう……」
「あのあの、大丈夫ですか?」
「くっ、何なのだ貴様は……」
……えっ、あの失礼な人を癒やしたの!?確かに、屋根から飛び蹴りいえ、踏まれたら大ダメージなのは分かるけれど……。さっきまで酷い事を言ってきた人を癒やすだなんて。何て献身的なヒロイン的行動なのかしら。いや、ヒロインなんだけど……。
「何なの駄姉。あたくしの行動に嫌味?偽善者ね」
「そ、そうじゃありません!ですが、この方はレルミッドさんの大事な部下さんなんです!」
「フォーナ……ちょっと、ブライトニア!蹴らないで!!」
「へ、陛下……いえ、お嬢。往来で喧嘩は」
折角いい事を言ってるのに!隙あらば蹴ろうとしてくるわねこの子は!!
お付きで付いてきたヴァン君と一緒に、フォーナとブライトニアを遠ざけてるのなあ。傍から見たら、絶対滑稽だわ!!仕方無いのだけれど!でも、フォーナを助けようとしてくれてるんだけど……!!
ああ、折角姉妹の仲が深まりそうなのに、どうしたもんなの!?
「あのですね、オールちゃん!」
「お前の言う事なんて、聞く価値無くてよ」
「こ、この方が深いお怪我をされたりしたら、お仕事が出来なくなります!」
「だから何なの。アロンに偉そうに振る舞う輩はあたくしが許さなくてよ」
「えっ、私?」
フォーナを助けてくれたんじゃなくて!?私なの!?
「そ、それもそうなんですが!
レルミッドさんが……お体を壊されてしまいます!!私はレルミッドさんの婚約者です!
だから利己的に、レルミッドさんの不利にならないよう、この方を治します!
いっ、一杯反省して、沢山お仕事してください!!」
「ぐっ」
フォーナ!!何て……何て、良い子なの。
あの踏まれてた人もちょっと感動……?顔を真っ赤にして背けてるけど、アレは感動よね?ヒロインの慈悲に震えてるパターンよね?テンプレ!
でもテンプレなら本当にフォーナに惚れないで欲しいわ。お邪魔虫系イベントはもう必要無いのよ。
「レルミッドはウチで働けば良くてよ。そんな使えない部下は棄てればいいわ」
「ブライトニア!」
「偽善者駄姉の茶番劇に付き合う必要は無いわ、アロン」
「お、オールちゃん!あのあの!」
「煩くてよ、駄姉!」
「い、いいえ!き、聞いてください!!レルミッドさんを連れていっちゃ、だ、駄目です!!」
「嫌よ。オルガニックと未だに連絡を取り合ってるだけでも忌々しいから、レルミッドは奪ってやってよ」
え、えええええ!?どういう理屈なのよ!!
益々ややこしい事になってしまったじゃないの!!
んん?でも、待てよ。
これって……もしかして、ヒロインが悪役令嬢に虐められる場面!?こんな時にまさかイベント発生!?
「……いや、でも何時もの普通の光景よね」
ブライトニアの意地悪はフォーナに常に発揮されていたわ。私も大概ゲーム脳が過ぎるわね。
「どうしたの?アロンもあたくしと来なさい」
「いえ、今日は遠慮しておくわね」
流石にソーレミタイナ迄着いていくのはなあ。子供達を置いていけないし。義兄さまも煩いしなあ。
「ねえ、ブライトニア。もしかしてオルガニックさんと離れて寂しいの?」
「当たり前よ!!あたくしはオルガニックと片時も離れたくないのに!!撫でなさいアロン!!許すわ!」
あ、フォーナがあの偉そうな紫の人をそっと逃している。
……本当に心優しいわね。
しかし、早くレルミッド様を追い掛けて欲しいわ。ブライトニアは私が抑えるしかないかなぁ。出来るかしら。ラブストーリーを最後まで見たかったけれどなぁ。
……レルミッド様、お戻りにならないかしら。
レルミッドは颯爽と現れませんね。




