表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
新たな家族のお話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/152

フォーナはヒロイン属性過多なのよね

お読み頂き有り難う御座います。間が空いて申し訳なく。

四代目ヒロイン、フォーナがいつも通りテンパっております。

「はわ、はわわわわわ」

「あらー可愛らしいわー。裾を短めにしてみたけどー」

「ここここ、これでですか!?す、裾を踏んじゃいます!!」


 え、ええ……?

 フォーナったら、運動神経良いのに脹ら脛丈のスカートを踏むのか……。謎ね。

 流石に私は床に摺りそうなスカート丈で長年暮らしてるから、転けた事は無いのだけれど。まあそれだけは自慢できるようなそうでもないような、よね。うう、運動神経欲しいわ。


 しかし、マデル様のお持ちものだけあって、センスの良いドレスね。フォーナの髪の色とよく合う明るい黄色かぁ。ああいうのもとっても素敵。顔が可愛らしいからよく似合うなぁ。

 ……でも、ちょっと……上半身に足掻きいえ、詰めた跡が見てとれてしまうのは、知らないフリをしなきゃね。ええ、フォーナは細くてスタイルがいいのよ。私と違ってね。


 えー、此方はコレッデモン大使館なのよ。

 朝からまた……テンプレかと思う程喚いて怒る義兄さまを宥めて、シアンディーヌが転がって、アウレリオにじっと見つめられたりして……いや、シアンディーヌとアウレリオは騒いでもいいのよ。問題は義兄さまよ。

 あのひと、仕事に行くのに何なのよ本当に!?


「あーらー、いらっしゃーいー。お花ちゃんー」


 いや、いかんいかん。お呼ばれしたのに私ったら!


「お邪魔しておりますわ、マデル様。ええと、フォーナ。もう少し……膝を伸ばしてみてはどうかしら……」

「はうううう!裾が足に纏わりつきます……!!スベスベで可愛らしいお服ですが、私には似合いません……!!」


 せ、静電気かしら。そんなくっ付いてるようにも……いや、ちょっと何故か……スカートと分離してるペチコートが滅茶苦茶足にくっ付いてるわね。どうなってるの?そんなに今日は乾燥してた?


「あのあの、アロンさん?どうしてそう優雅なんですか?お嬢様だからですか?」

「いえ、全然優雅なお嬢様じゃないわよ。

 付け焼き刃な私の立ち居振る舞いよりも、マデル様を参考にした方が良いわ」

「お花ちゃんはー、自然に出来てるーわよー。偉いえらーい」


 そ、そうかなぁ。

 マナー本を読んだ甲斐が有ったかしら。マデル様に頭を撫でられてしまったわ。


 でも確かに静かに姿勢よく歩くのって……大変だものね。

 そういや義兄さまは浮いてんの?って位に足音がしないけれど……。アレはマナーの成果なのかチートなのかどっちなのかしら。


「はわあああー!あ、あわあああああ!!」

「え、ちょっとフォーナ!!」

「あーらまー、縫い目が弱ってたかーしらー」


 目を離したらズベシャアアアアって、ああ!!

 可愛らしいドレスが、膝から転けたフォーナが踏み抜いて……縫い目が破れちゃった!!

 ……裾は分かるけど、何故袖まで?それ所じゃないけど、気になるな。


「すすすすすみません!!べ、弁償を!!いえ、足りませんよね!?私の全財産を!いえ、これから生涯高金利で弁済させてくださいいいい!!何なら身売りをおおおお」

「落ーち着いてー。型落ちの古いドレスが多少ー破れた位でー気ーにしないで良くてよー」


 え、型落ち?こんな素敵なのに?

 ……流行が全く分からん……。やはり、追った所で似合わんからと諦めるべきではなかったわね……。

 それに奴隷宣言が聞こえた気がしたのだけれど……。


「ととととんでもありません!マデルさんの素敵な思い出のお衣装を破ってしまったのに!!

 はわああああ!!どうやって償えば!?」

「いいーのよー。普通にー昔はー泥汚れとかー付けてたーしねー」

「えっ、マデル様が泥汚れ!?ですの!?」


 全く想像が付かないわ!外遊びがお得意そうには……ああ、でも……ソーレミタイナでは、普通に埃っぽい階段の上り降りもされていたわね。


「普通にー領地視察とかで歩くとー、雨もー降るしー泥ぐらいー被るわー。今でもよー」

「まあ……!!流石公爵様ですわね!

 ……私なんて公爵夫人の癖に、そんな視察を単独でした事が無くて恥ずかしすぎますわ」

「親がー行かないもんだからー仕方なくよー。単独で普通はー行かないわー」

「ご、ご苦労なさっておいでですのね」


 色々お有りなのね。

 まあ、私も親には……いや、どんなんだっけ。顔忘れたわね。私の親なら多分モブ顔よね。

 養父母もボヤーっとしか思い出せないのだけれど。まあどうでも良いか。多分もう関わる事も無いでしょう。家名も分からないし必要もないわ。


 しかし私も忘れっぽいわね。その割にはゲームの知識とかこびりついていたし……。よく分からないわね、我ながら。


「あのあのあの!せめて!私にお掃除をさせてください!お庭なら綺麗に掃き掃除出来ます!」

「まあー掃き掃除がーお得意なのねー?素敵なー特技ー」

「はいっ!お掃除だけは物を壊さないんです!お食事を用意したり、お使いしたりすると壊してしまうんですが!」

「そ、そうなの……」


 クラッシャーなヒロインだったのね、フォーナ……。

 いや、ブライトニアもクラッシャーか。……姉妹って、似るのね。何でや。

 でもなぁ、確かに掃除が得意なのは良いことだけれど、其処に特化チートなの?よ、よく分からないな。


「先日雨が降りましたし、お砂を撒いてお掃除しますね!」

「やーる気ねー」

「あの素敵なお服には届かないでしょうが、毎朝お掃除に来させてください!」

「気ーにしなーいでー」

「はわわ、そんな訳には……」


 でも、あのドレス……滅茶苦茶高そうだしなぁ。私も援助を……いや、個人資産も無いのに口を挟めない。うう、もどかしい!

 って、あら?ノックの音が。


「マデリーン様、お客様で御座います」

「はーやかったわねー」

「え?何方かお約束の方がいらっしゃいましたの?」

「はわあ!?」

「と言うかー、フォーナちゃんのーお客様ーよねー?」


 え、どういう……はっ!まさか!


「レルミッドちゃんよー」

「はわっ!?」

「やったわね、フォーナ!」


 そして私とマデル様は、レルミッド様とフォーナの邪魔をすまいと席を辞そうとしたのだけれど……。


「お願いです!レルミッドさんに失礼や粗相をしないよう居てくださいいいいい!!私には、緊張感が足りないんです!!」


 とフォーナが泣くものだから……。続き部屋に居ることになってしまったの。しかもフォーナったら破れたドレスを着替える暇も……い、良いのかなぁ。一応ショールで袖は何とか誤魔化せてるけど、裾が……ペチコートが誤魔化してる、かしら?


 で、何と、壁が特注の薄さで隣の声が丸聞こえらしいわ。

 ……凄いな。壁の特注って分厚くするんじゃないのね。


「あー、フォーナ」

「はいぃ!?」

「……当たって悪かった」


 おお、本当によく聞こえるわ。良いのかしら……。


「いいいいいえ、レルミッドさん!私が愚鈍なのがいけないんです!私、私……オールちゃんみたいに、シャキシャキしてませんし」

「オールちゃん……って、フロプシーか?……いや、お前が妹みてーになるの止めとけや……」

「似合いませんか!?」

「つか、俺はフロプシーには惚れてねーだろ」


 ま、全くよね……。良かったわ、レルミッド様がマトモでいらして。と言うか、其処まで気にするなんて……。ブライトニアへの根深いコンプレックスが有ったのね……。意外……。


「……はわわ、でしたら何方を参考に……はっ!アロンさんを参考に!」

「いや聞けや!今結構恥い事言ったぞ!?て言うか義妹の真似も止めろ!」

「はわあ!?え、ええと、す、すみません……!!」


 何て事……!!ヒロイン難聴はフォーナにも備わってたのね……。

 いやあ、手に汗握る展開だわ……!!サポートキャラやってて良かった!ま、まあ今更?って気もするけれどね。良いのよ!可愛くて素直な悪どく無いヒロインの恋愛は尊いものなの!


「えーとだな、その……取り敢えずこの花、やる」

「あっ、マデルさんへのお土産ですね!今使用人さんにお渡しします!」

「違えだろ!お前にだよ!!」

「はわ……?」


 え?い、いい雰囲気なのに、ちょっと……!?

 これは……ヒロイン勘違いも装備中なの……?可愛らしいけど、でも、お声でもレルミッド様がブチ切れつつあるのが分かるわ。どうしよう。


「こ、こんな綺麗なお花を私に……!?はわわわわわ!も、勿体無いですよお!」

「……もう毟ったんだからしゃーねーだろ。要らねーなら」

「要ります要ります!!はわあ!お花を頂いたのはニックから以来です!」


 フォーナああああああ!?

 思わずレルミッド様のお言葉を聞いていられなくて、マデル様を見てしまったわよ。ええ、見事に美しいお顔が固まってしまっているわ。


「あ、そ……」


 く、暗いお声……。抑えた、抑揚の無い……。まるでゲーム中の対ロージア向けのお声のよう……。


「はわあ……。お花って頂けるとこんなに素敵なんですね」

「……」

「れ、レルミッドさん?ど、どうなさいました?あの、お返しを」

「要らねーよ。

 つか、今日も帰らねーんならそー言っとく。じゃーな」

「え、あの……?あ、あのあのあの!?レルミッドさん!?」


 バタン、と……!!音がしたってことは……扉は無情に閉まってしまったの!?

 こ、これ……。

 本家本元の乙女ゲームなら、フラグがバッキバキに折れてない?

 そ、即死ルート……は言い過ぎか。でも、確実にルート続行不可能の選択肢では?

 ……いえ、落ち着くのよ……。取り敢えず乙女ゲームのシステムの支配下からは逃れてる筈……。


「わ、私……何かマズい事を……」

「フォ、フォーナ……」


 あ、フォーナが駆け込んできたわ。可哀想な位、滅茶苦茶顔色が悪い……。


「お、おおお教えてください!おふたり!一体私は何の失言を!?」


 え、分かってないの!?鈍くない!?フォーナってそんな空気読めない子じゃないわよね!?いや時々ボケボケだけど!!レルミッド様には気を遣いまくってた……いや、変わった行動には突っ込まれてはいたけれど。


「んー?じゃーあー、直接的に言っちゃうーわねー」

「マ、マデル様!?」

「レルミッドちゃんにー『貴方のー贈り物はー素敵だけどー?所謂二番煎じーだわー』って受け取らせちゃったーわねー」


 ……本当にストレートなお言葉だわ。当事者でない私の頭と胃とを直撃するくらい。

 フォーナが更に真っ青になっているもの。


 もしかして。

 乙女ゲームのシステムの支配は、まだ続いているの?

 4はゲームとしてもう終わっているのよね?攻略対象オルガニックさんは悪役令嬢フィオール・ブライトニアの手に落ちた、のだもの。

 3の攻略対象と4の主人公の恋が成就しないよう……未知の魔の手が!?


 現実だとして見てきたけれど……、このゲームでは有り得ない組み合わせ……すれ違いっぷりは乙女ゲーぽい。

 考え過ぎ、かしら?

 例えそうだとしても……現実として、この恋をゴリ押し出来ないものなの?

 ……そうよ、私はヒロインの素敵な恋を応援するサポートキャラなのだもの。

 現実でも何でも、出来る限りフォーナをサポートしたいわ。


「フォーナ、レルミッド様を追い掛けましょう」

「はえ!?」

「泣いていてはダメよ。このままではすれ違いが重なって、誤解が深まってしまうわ」

「お花ちゃんはー思い切りがー良いわねー」

「で、ですがご迷惑」

「レルミッド様はフォーナに迷惑だとか言われる方ではないと思うの。違うかしら?」

「ち、違いません!!」


 こうして……。

 コレッデモン大使館から走り出したフォーナは、レルミッド様に無事追い付いたの。そして愛を告白し合った往来で抱きしめあうふたり。

 道行く人々からは、ヒューヒューと皆さんの口笛を浴びて……沿道には花を撒く人々が押し寄せ……。


「何の用だ、小娘。お忙しいレルミッド様の邪魔をするな」

「はわあ!?貴方は……」


 え、誰よこの紫の髪の人!?滅茶苦茶邪魔なのだけれど。

 と言うか、妄想してた通りに行きそうだったのに!邪魔なのはどっちよ!

 ん?紫?それに、この偉そうな物言い……。何処かで聞いたような……。


アローディエンヌがサポートキャラ的に頑張ってますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
[一言] 口下手なぶっきらぼうと根っからの天然で場が読めないドジっ子。 心通じあったのが不思議なカップルですね。 結ばれても上手く日常生活が送れるのか、本当に心配です。 それに引き換え、アロンさんとこ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ