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こぼれたミルク  作者: 若松ユウ
Ⅳ セキの災難とミネの心境 
44/67

042

 よっぽど楽しかったのか、それとも疲れていたのか、日が暮れる頃には、ミキはうつらうつらし始め、帰りの車中では、後部座席ですやすや寝入ってしまった。

 視線をバックミラーから助手席に移すと、そこにも大きな子供が、大口を開け、ぐったりとシートに身体を預けるようにして熟睡している。

 

「運命の女神は、こういう幸せそうな顔をしてる人間に微笑むんだろうなぁ……」


 二人の寝顔を見比べながら、僕は、頭の片隅でトランクに入れている荷物の事を考えつつ、誰にともなく呟いた。


 ここで、話の時間軸を昼過ぎまで戻そう。

 ミネが喧嘩慣れしてる事が明らかになった後、僕達親子三人は、聖堂に行って古代の偉人に捧げる賛美歌を聴いたり、広場の中央で行われていた路上パフォーマンスを観たりと、ごくごく平和に収穫祭を楽しんでいた。

 賑やかなのは良いけれど、あまりにも人がごった返して身動きが取れないような所は苦手な僕は、この国に留学する前までは、こうした催し物に参加する事が少なかった。その背景には、家族で休日に出掛けるという経験をして来なかった事も大いに関係しているに違いない。


 それが、ミネと出会ってからは、半強制的に連れ出されるような形で、あちらこちらのイベントに顔を出すようになり、そのうち、こうした場での楽しみ方が分かってきたように思う。その点では、ミネには感謝している。ミネは幼い頃から、たまの休みに家族で遊びに出掛ける事が多く、また、ここは地元で知り合いも多い事から、自然と我が庭のように親しんで来たという。こうした、ふれあいの場が有るか無いかによって、社交性だとか、コミュニケーション能力だとか、自己肯定感だとかが変わってくるんじゃないかな。

 そのうちミキも、ミネと同じように喧嘩慣れするようになったらどうしようかと言ったら、ミネは、それは取り越し苦労だと笑った。自分は血の気が多くて相当にヤンチャだった父親に似ただけだから、ミキが僕に似れば、お淑やかな女性に育つだろうと言うのだ。どっちに似るかはミキ次第だろうけど、僕としては、杞憂に終わって欲しいな。


「ムゥ……。今、どの辺?」

「家まで、あと十分くらいかな。寝てて良いよ」

「そう。じゃあ、着いたら起こして」


 ミネは、半開きの目を再び閉じると、すぐに眠りの世界へと誘われて行った。

 キリが悪いので、帰り道に途中に寄ったサウスマーケットでの話は、次回にまとめてお話しよう。

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