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こぼれたミルク  作者: 若松ユウ
Ⅲ 歪んだ過去と歪な未来
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 帰宅後に経緯を説明すると、ミネは元の場所に戻せと突き放すどころか、小屋を作ると言い出し、先程まで図面を引いたり、捨てられていた木箱を解体してサイズを測ったりしていた。どうやらミネも、一度は犬を飼ってみたかったらしい。

 その間、ミキは庭先でナナと名付けた仔犬と戯れている。ちなみに、ミネがダイナミックに後ろ脚を持ち上げて調べた結果、仔犬はメスだという事が判明している。

 

「じゃあ、ホームセンターに行ってくるから、ミキの事、よろしく」

「行ってらっしゃい。くれぐれも安全運転でね」

「わかってる。あっ、そうそう」


 ミネは、キーを差し込んでエンジンを掛けた直後、言い忘れに気付き、早口で言った。


「電話があって、夕方、マツが来る事になったから」

「へぇ、久しぶりだね。元気そうだった?」

「フラれた愚痴を零すくらいには」

「あっ、また駄目だったんだ」

「だから、そんな男は止めとけって、私も言ったんだけど」

「言っても聞かないよ、彼女の場合」

「そうなの。そういう訳だから、後でミキと買い物に行った時に、チーズやハムなんかを買っておいて。マツがビールを持って来るらしいから」

「わかった。買っておくよ」


 僕が了解すると、ミネはアクセルを踏み、木材や金具の調達へと向かった。

 車が通りの角を曲がって見えなくなり、ガレージの三枚引き戸を閉めた頃、ミキが仔犬のナナを従えて駆けてきた。


「ママ、どこいったの?」

「ナナのお家の材料を買いに行ったんだよ。ミキも、ランチが終わったら買い物に行こうね」

「おかいもの! どこいくの? サウスマーケット?」

「違うよ。今日は歩いて行くから、ノーザンモールの方」

「な~んだ。そっちか」


 ミキは、少しばかりがっかりしたようだった。

 ノーザンモールは、安く豊富で大量にが売りのサウスマーケットと正反対の経営方針の小売店で、良品を適正価格で欲しい分だけということをモットーに、量の多さより質の高さを売りにしている。まとめ買いするには向かないけれど、徒歩圏内にあるので、ちょっとした不足を補う時に重宝している。

 ただ、その為に、お子様には地味で面白味が無い店に見えるようだ。

 とにもかくにも、まずはランチを済ませる事が優先事項なので、僕はナナを抱え上げ、ミキの手を引いて庭へ、そしてリビングへと向かう事にした。

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