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こぼれたミルク  作者: 若松ユウ
Ⅱ ボタンの掛け違え
12/67

011

 今日は昨日と違い、青い象の描かれた水色のエプロンをした男性保育士だった。

 この男性。保育士よりナイトクラブでホストをした方が稼げるんじゃないか、と思うような風貌なのだが、絵や歌が上手でフレンドリーなので、園児からは人気らしい。

 子どもというものは、見た目に惑わされず、その人の本質を見抜く力に長けているのかもしれない。

 

「せんせい、さようなら!」

「はい、さようなら」

 

 キンダーガーデンの前を離れた後も、ミキは窓越しに手を振っていたが、十字路を曲がると前を向き、今度はルームミラー越しに僕へと話しかけてきた。

 

「パパ。これから、どこいくの?」

「サウスマーケットだよ。卵とか牛乳とか、色々と買わなきゃいけない物があるからね」

「おかいもの!」


 サウスマーケットとは、その名の通り、街の南側の海岸沿いに立つ大型ショッピングセンターで、安価でまとめ買いするのにピッタリの場所として、広く利用されている。高級品こそ置いてないが、センター内を一周すれば日用品のほとんどが揃うので、庶民の強い味方だ。

 行き先を聞いたミキが、後部座席から飛び上がらんばかりに喜び、両目をキラキラと輝かせたので、勝手な期待をさせないように、先手を打っておこう。


「言っておくけど、お菓子は買わないからね」

「やすい、ひろい、もりだくさん」

「ミキ。パパの言うこと、聞いてる?」

「みんなでいこう、サウスマーケット!」


 駄目だな、これは。久々に車に乗ったことと、行き先が好きな場所なのとで、すっかり自分の世界に入ってしまってる。

 店に入ってしまうと、棚に陳列された商品群に目移りしてしまうだろうから、パーキングに停めたところで、もう一度だけ釘を刺しておくことにしよう。キンダーガーデンに入園する前なら、キッズスペースに預けておけるんだけど、もう六歳だからなぁ。


「おかいもの、おかいもの。パパといっしょの、おかいもの~」


 今は、こうして僕との買い物を喜んでるミキも、そのうち反抗期を迎えて、家族で一緒に出歩くことを嫌がるようになるのだろうか。

 まぁ、そうなるかどうかは、きっと家庭教育と周囲の環境次第なんだろう。

 取り留めのない事を考えるのは、これくらいにして、とりあえず運転に集中しよう。今は、安全に目的地に到着することが最優先事項だ。

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