2話 村に付きましたが、人間は不穏です。
とりあえず町を探索することにした。
道中で確認した硬貨は、銀っぽいのが100枚と、銅っぽいのが150枚、なんと金っぽいのも5枚あった。
問題は相場である。出店で売っている食べ物らしきものがとてもおいしそう・・・
さすがに、おなかが減ってきた。そろそろお昼だ。
「おっちゃん!これいくら?」
そのうちの一つに近づいて声を掛ける。疲れたし、お肉が食べたい。
「うちのは銅貨5枚だよ!ちょっと高いけど、それなりにおいしいよ!」
高い?ってことは、銅貨5枚以内で食事はできるというイメージかな。
「じゃあ、一つください」
いい匂いに、考える余裕を失ってしまった、もっと相場を見て回るんだったかな・・・でもくださいって言っちゃったし。
「まいどあり!」
銅っぽい奴を5枚渡して、串焼きを受け取った。少々後悔したが、串焼きを頬張ると、そのうまさは確かに一品だ。
その場を離れようとすると、次のお客さんが来た。
「お、毎度!1本銅貨3枚だよ!」
「3本ください」
はぁぁぁ??え、それでも高いってこと?ってそうじゃなくて!
「ちょ、ちょっとおっちゃん!さっきと違うじゃんか!」
つい叫んでしまった。
「何を言っているんだい。変な格好をしたお上りさんの相場は5枚だよ。それに、この人は常連だから特別なのさ!」
確かに、毎度って言ってたけどってそうじゃなくない?せめていなくなってからとかさぁ!
「にしても、二枚も違うとか、せっかくおいしいのに!差額返してよ!」
腑に落ちない現状に、地団太して抗議する。
「返すわけがないだろう!!ほら商売の邪魔だからあっちいけ!」
納得いかなかったが、周りが私が悪いような目でこっちを見てくる・・・
なんだこれ?これが当たり前?マジかーー外国に来た気分だわ。いや、異世界なんだけど。
悪人じゃない普通の人には消極的な俺だ。すごすご店を離れると、また怒鳴り声が聞こえた。
「こんなこともできないのか!!この役立たず!」
見れば、通りの横道で、動物耳の生えた少年が叱られていた。
叱っているおじさんも大していい服着てないが、それと比べてもずいぶんとみすぼらしい、ボロ布を着せられている。
よく見れば、首に首輪があり鎖でつながれていた。
「うえぇぇ?奴隷ってやつ?てか、みみ?犬っぽい?」
よく見ればあちらこちらに耳の生えた少年少女がいて、一様に首輪と鎖でつながれていた。
「なんで、獣人って奴隷になるんだ?しかし、幼い子ばっかりだな。」
よく転生ものの本で見た。獣人は大抵奴隷扱いだ。主人公は、そんな中、獣人に対して対等な扱いをしていて感謝されて慕われているなんてありきたりな展開だ。
しかし、人は何かを虐げないとダメなのか・・・
というか、町は出店も出ていてにぎやかだが、全体的な雰囲気は悪い。
虐待やいじめで持ちきりだったニュースを思い出す。引っ切り無しだった記憶に、しばらく囚われてぼーっとしていた。
「お嬢さん、奴隷をお探しですか?」
「うわぁぁぁぁぁ!」
いきなり声を掛けられて飛び上がる。
「だ、だれだ!?」
格闘技など知らないが、拳を構えてみる。さっきの盗賊の時のことを思えば、なんとかいけるはずだ。
「これは失礼いたしました。ワタクシはトルノと申します。奴隷商人をしております。」
見ると、細身で長身だが、いかにも怪しいオジサンが立っていた。
ぼーっとしていたのを、羨ましそうにしていたようにでも見えたのだろうか。
「奴隷商人??奴隷なんて、買うつもりは・・・」
でも、俺が買えばあんなひどいことはしない。むしろ、可愛がって、着飾らせて、おいしいものを与えて・・・自分のものなのだからあの耳とか、尻尾とか、おさわりはし放題なのでは??いや、それは仲間っていう位置ではない。それにそれは、俺が悪い奴になりそうじゃないか??でも、奴隷っていわゆる所有物だから俺のものに何をしたって・・・って、そんなのそこらのやつと変わらなくないか!?だが、だがしかし、あの耳や尻尾は、触ってみたくて仕方がない。
「まあ、まあ、一度ご覧になってもいいと思いますよ?」
俺の荒れる内心を他所に、トルノは半ば強引に、俺の手を引いていく。
路地の裏の奥まったところに、古物商のような店があった。
中に入ると、檻がひしめき合うように並べられている。
「どのようなものがよろしいですか?」
トルノは大仰に手を広げていう。
「どのようなといわれても、だから買うとは・・・」
いくらするかもわからない、一応お金はあるけども。まさか、借金をさせられるのか?
よくあるツボを売りつけてくるあれか??!
「そういえば獣人をご覧になっておりましたね!獣人は現在、2匹ほどおります。」
そういって、布の掛けられた檻に近づき、掛けられた布を開ける。
そこには、猫と犬と思われる獣人の少年少女がいた。服はぼろ布でひどく怯えている様子で寄り添っている。歳は10くらいだろうか。可愛い盛りの子供に、こんな格好で檻に入れるなんて非道もいいところだ。見てしまうと、無駄に庇護欲が膨れ上がってくる。俺が買わなくてもいつか誰かに買われていくのだろう。そして、町で見たような、あんな扱いを受けるのだ。
「ちなみに、獣人ってなんで奴隷にされているんですか?」
不意な疑問が口をつく。
「・・・ご存じない?奴隷を見るのは初めてなのですか?よほど辺境からお越しになられたのですねぇ。獣人族は人間族から迫害されておりまして、魔族に近しくて悪である認識と、とても弱く、下等だという認識であるからですね。村もあるようですが、盗賊に襲撃されることも多く、現存しているのは見つかっているものだけで2か所ほどしかないようですね。」
思ったよりも丁寧に解説してくれた。知らないのはおかしいという口ぶりだったが・・・まあいいか。そのあとも、他の商品の説明が続いていく。
丁寧にというか、売り込みをしているようだ。
獣人の他に、魔獣と呼ばれるものが、戦闘特化や荷車引き、騎乗用など様々いるようだった。
いろいろと気にはなったが、半分は人である獣人の子がやはり気になる。
ことさら可哀そうに見えてしまい、どうにかしなければと無駄に正義感が出てくる。
私の世界では獣人は愛でられるべきものである・・・は、語弊があるが、このような扱いを受けていいものではないはずだ。
耳やしっぽがついているだけで、人とちょっと違うだけで・・・
人より抑制が効かない自分と、少し重なった。
「この二人おいくらですか?」
買うつもりなどなかったのに。後先考えずに聞いてしまったが、買えるものならば買いたい。
買えるのであれば、どうにかしてやりたい。
「二匹共ですか!?それは誠にありがとうございます!少々おまけさていただき、金貨10枚です!」
そうだよねーーそのくらいするよねーーー
当たり前だが、手持ちでは足りない・・・
諦めるしかないかと、名残惜しく檻の中の子たちを凝視していると・・・
「少し高いですね。ん?この子達、ちょっと顔が赤くないですか?」
よく見れば、二人とも息が乱れ汗をかき、少し赤いというより顔色が悪い。
「おや、バレてしまいましたか。病気を患ってしまって、買い手がつかないのですよ。大負けに負けて、金貨7枚ではどうでしょうか?」
あちゃーっと頭に手を当てて、がっつり金額を下げてきた。
ん?もう一声で買えそうな金額ではないか・・・?
「病気ね・・・直すにはどんな薬が必要なの?」
病気があるなら、治してやりたい。見たところ、風邪っぽいし、どうにでもなるのではないか。
「わかりません。医者にかけるにも金がかかりますし、薬も非常に高価なので・・・」
なるほど。だから放置していると。下がった金額はその費用かな。
「金貨4枚に銀貨50枚。で、どう?」
手持ちに余裕の出る金額を提示してみた。最初の半額以下だ。
「いやいや、一人分にも満たないです!!勘弁してくださいよ!」
俺の提案にトルノが慌てだす。そりゃそうだ。
最初に負けたところは、はした部分だったのだろうし。
「えーーー。じゃあ、金貨5枚に銀貨100枚は?」
正直、出せるぎりぎりだ。この後どうしようか・・・病院代とか、負かんないだろうしなぁ。
あ、そういえば、この服って売れるのではないだろうか。
「金貨6枚相当ですね。まあ、今後、うちを贔屓にしていただけるのなら・・・」
ほう、銀貨100で金貨1枚になるのか。銅貨は何枚で銀貨になるのかな?
「よし買った!」
生活費がなくなってしまった。ま、食事代はあるから何とかはなるだろうし。
セーラー服売って、最低限の分、せめて今夜の宿の分だけ手に入れば、とりあえずはなんとかなる。
「あ、荷車用の魔獣っておいくらくらいするの?」
不意に思いついて聞く。三人で旅をするなら、必要になるはずだ。
「荷車用のものでしたら、金貨10枚が相場ですね。基本は商人が買っていくのと、弱い魔物であれば対処してしまう利便性の高さからお高めです。」
なるほど。馬とは違うのね。それって懐くのかな??野生のやつを見つけたらもしかして・・・
とは思ったが、野生のものなど簡単に見つかるものでもない。相場は聞いておこう。
「騎乗用に3人乗れるタイプのいる?」
さっきの説明にいたやつだ。魔獣はなかなか大きいみたいだし、いても不思議ではないのではないかと思った。
「それは、さすがに、非常に高価ですね。基本は2人乗りですので、3人乗りとなると金貨25枚ほどです。ちなみに、2人乗りは金貨15枚です。こちらは、騎士様方がお買い上げになられますね。」
やっぱりいたが、そこらの村人には買えそうにない値段だ。元の世界の車みたいな感じか。
「荷車ってどのくらいするの?」
魔獣だけ買ってもダメなのだ。
「こちらで扱っているものは、金貨5枚からですね。ピンキリです。」
金貨5枚でどんな具合なんだろうか。魔獣に比べたらずいぶん安く感じる。後で見せてもらおう。
「わかった。ありがと。」
話がひと段落したので、2人を檻から出してもらう。
すると、街中で見た首輪のようなものをトルノが取り出し、2人に取り付けた。
「それでは、契約をしますので人差し指を貸してください。」
指紋認証のようなものだろうか。
そう思って差し出すと徐に針を刺された。
「いったぁぁあ!」
急なことでびっくりして叫んで手を引っ込めてしまう。しかし正直、痛いとは言ったがあまりいたくはない。
痛覚も鈍くなってしまったのだろうか。盗賊を殴っても自分はいたくなかったし。
「これは失礼。奴隷自体ご存じないのですから、お分かりにならなっかですよね。少量の血液で契約するのですよ。」
なるほど。
一応納得し、血が垂れる人差し指を差し出す。
「それでも一言ほしかったわけですが・・・」
納得はしたが、びっくりしてしまった恥ずかしさから恨み言は漏れる。
「本当に失礼いたしました」
意に介さないようにトルノが笑いながら、2人に取り付けられた首輪に血をつけていく。
「血の契約により、この者に絶対の服従を」
短い詠唱を紡いで首輪が一瞬強く光る。まぶしいほどではない光はすぐに収まった。
「よかったな。買い手がついて」
意外と優しい言葉をかけるトルノ。しかし、あの怯え方はなんだろう?
「ねえ、言葉は通じるの?」
2人に向かって聞く。今更だが、言葉が通じないとなると結構困る。
「わかるよ。」
猫っぽい女の子が端的に答える。犬っぽい男の子も頷いているので安心だ。
しかし、耳は2人とも震えている。怯えられているようだ。
「そう。名前教えて?俺は要。」
警戒心を解いてもらおうと笑って声を掛ける、2人は目線を交わして交互に答えた。
「私は、リリィ。」
「僕はミディ。」
なんだか語感の似ている名前だ。
「君たちって知り合い?種族が違うようだけど・・・」
聞くとリリィが率先して答える。
「ここで出会ったから、違う村なの。でも、同じ村でもいろんな種類がいるよ。」
そういえば、村自体が少ないと言っていた。
「もっといろんな種族がいるの?年齢は?育つのって人と一緒なの?」
頭に上った疑問をそのまま口にしてしまった。
「え、えっと・・・」
急に質問攻めにしたためか、言い淀むリリィ。今聞くことじゃなかったな。
「要様。ここで話し込まれるのも難なので、この近くに安い宿がありますが、どうされますか?手持ちはほとんど使われたでしょう?」
ぎくっ。なんだろう。バレている。
しかし、私には秘策があるのだ!来ているセーラー服である。いや、相場などわからないが。
「宿は一応教えてもらえると助かります。それで、古物商とかありますか?この服、そこそこの値段になると助かるのですが。」
服の裾をつまんでくるりと回ってみる。この布は、この世界にはないもののはずだ。
「ほほう?確かに、その服は大変珍しいですな。デザインも非常によろしいと思います。なんでしたらワタクシのほうで買取いたしましょう!銀貨50枚でいかがですかな?宿泊にも余裕の出るお値段です。」
余裕というのがどの程度なのかは測りかねるが、やはりそんなものだよな。
「一度他所にもっていってからでもいいですか?信用していないわけでもないのですが、物価がわからないので。」
それで諦める私ではないのだ!このまま売ってしまった方が楽は楽だが。
「もちろん構いませんよ!しかし、もし他でもっと高額だった場合、うちとこで色を付けさせていただきますので、売らずにまたお立ち寄りください。」
深々と頭を下げるトルノに、これは思ったよりも高く売れそうだと思った。
珍しいってことは、新しいってこと。何に使うつもりか知らないが、何か思いついたのだろう。商魂たくましいことである。
トルノに古物商の場所を教えてもらい、そこに立ち寄った。
結構近くにあったそこは、奴隷商に負けず劣らず非常に怪しかった。
店内には、武器防具はもちろん、何に使うのかわからないものが所狭しと並べられている。
「こんにちはーー。トルノさんからの紹介で来たのですが。」
奥のほうに声を掛けると、やはりトルノに負けず劣らず怪しげな小男がひょこっと出てきた。
「トルノさんとこの?どういったご用向きで?」
店主はもみ手をしながらひょこひょこと近づいてくる。
「今着ているものを売りたいのだけど、おいくらになりますか?また、この子達と俺の服も欲しいんだけど。」
すると、店主は目を見開き、しげしげと嘗め回すように見て回って、服に触れてきた。
「これは・・・絹とも麻とも違う。どういった繊維ですかな?」
服を間近で見ながら、目線をこちらに向ける。値踏みをしているのだろう。
「ポリエステルだと思うけど、やっぱりこの布、こっちにはないんだね?」
店主の様子に顔がにやける。着ていてもどうせボロになるし、俺はスカートが苦手だ。制服だから仕方なく着ていたものである以上、金になるなら早々に売り払いたい。
「ぽりえ・・・?初めて見るものです。どういった工程で作られるものなのでしょうか?」
店主は好奇心をくすぐられたようで、詳細を欲しがったが・・・
「俺は知らないんだよね。でも、ここの人が作れないことはわかってるし、多分材料もないからどうしようもない。似たデザインはできても、この生地はもう二度と手に入らない完全一点ものだよ!」
見たことがないというのだから、存在しないはず。
こういう人は、珍しいものに目がないと思う。思い込みかもしれないが、売り込んでみる。
「二度と、と言われると、違うかもしれませんし、あまり高額を出せるものではありませんな。しかし、この生地が見たことも聞いたこともないものなのは確か・・・デザイン自体は、海岸沿いに似たようなものを見たことがあります。しかし、このひだは、どのようにつけられたものですかな?これだけでもすごい技術であると思いますな。」
スカートのプリーツをしげしげとみる。あんまり持ち上げないでほしい。
しかし、店主の様子から、服にしか興味はないようなので、我慢する。
しばらく触って確かめた店主は押し黙って考え込んだ。しばらく考えて・・・
「金貨2枚!これ以上は・・・」
言いかけたところで、後ろから声がした。
「待った!うちは金貨2枚に銀貨50枚!」
急に声を上げたのは奴隷商人のトルノだ。結局気になってついてきたのか。
「金貨3枚!」
負けじと店主も金額を上げる。これ以上はって言ってなかった?
「ぐぬぅ、金貨3枚に銀貨10枚!」
お?もうつらくなってきたか。
「銀貨20枚!」
店主も刻んできた。
なんだかオークションのようになってしまった。
トルノさん、銀貨50って言ってたのに。本当に何に使うつもりなのか・・・
「金貨4枚!」
意を決したようにトルノさんが叫ぶ。
「も、もう無理だ・・・」
崩れる店主。結局、トルノさんが勝った。
「ほほほ。先ほどの売り上げがあるのでもう少しいけましたが、私の勝ちのようですね。」
その割には刻むの早かったな。
「じゃあ、とりあえず、服を何種類か見繕ってもらえますか。トルノさん、支払いは一部銀貨でもらえると助かります。」
店主とトルノさんにそれぞれに要求する。
「わかりました。代金を持ってくるので、ごゆっくり。」
無事、手持ちの回復に成功した。どこの世界でも珍しいものには価値があるものだ。
しかし、思っていたよりも高くなりすぎた感はある。ま、制服は万単位するものだし、ある意味相場とも言えるが。
「うちとこは専門ではないのでこのくらいしかないですが、お安くしときますよ。」
そういいつつ、奥からお店用のハンガーラックのようなものを出してきた。買い物は逃したが、商売はできると少し浮上したようだ。
とりあえず適当に見繕う。
「おや、お目が高い。それは防御力アップの効果が付与されております。」
自分に選んだものは、着やすそうなパンツとシャツだ。装飾もいい感じ。後、マントと装備を身に着けるようなベルトもあった。
「先に着替えてくるから、リリィたちも選んでおいて。」
店主に更衣室へ案内されながら、そう声を掛ける。
残されたリリィとミディはお互いに見つめ合い、とても困惑した。
「自分で選ぶの?」
「何を選んでもいいのか?」
「普通、私たちの服ってこのままだよね?」
「どうされましたか?お悩みでしたらこちらなどいかがでしょう?」
2人で話していると、店主が戻ってきて声を掛けてきた。
「お嬢さん方にも、防御力アップの付与がされているものがありますよ。」
そういうと、揃いのような服を差し出す。店主は適当なものを見繕ってきたのだろうが、リリィたちには過ぎた物のように感じた。
「あ、それいいね!それにしようか!」
早々に着替えて帰ってきた俺の言葉を聞いて、リリィ達は驚いた。
店主の手に持っているのは、似たようなデザインのワンピースとつなぎみたいな服だ。
「え、でも、こんないい服なんて・・・」
あわあわしている。耳も尻尾もピンとして震えている。
「こちらにも防御力アップの負荷がついておりますので、非常におすすめです。お値段は三名様併せて銀貨20枚でいいかがでしょうか?」
店主が私に対して売り込み始める。能力負荷のアイテムにしては安価なのではと感じた。
「じゃあそれにします。この子達にも着替えさせてください。」
代金はトルノさん待ちだ。
「お安い御用です。」
困惑して慌てている様子のリリィ達を店主は引きづって奥に連れていく。
「とりあえず、良さそうな服があってよかったーー」
服を売ってしまった後の服がいいものがあってよかった。あの子達にもあのままじゃ絶対よくないし。
でも、見かけた獣人たちは最初の服と似たようなボロばかり着せられていたなぁ。
まあいいか。あの状態じゃ可愛くないし、自分のポリシーを貫くのだ。
物思いにふけっている間に、リリィたちが着替えて出てきた。
ついでに、料金を取りに行っていたトルノさんも戻ってきたので、服を渡して代金を受け取り、店主に支払いを済ます。