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犬は狼に成り、何を為す  作者: ぬーん
人間とは
6/19

人間になった日

 どれくらい走っただろうか。脱出してから数回昼と夜を繰り返した。外は深い森であり、途中休憩をいれたが休憩を入れるたびに動物や魔物が襲ってきた。そのため、休憩は短くしかとれず満足に睡眠もとれなかった。


 (甘かった。外に出れば何とかなると思っていたが、どれが食べられるのかもわからんから飢え死にしそうだし、気を抜けば俺が餌になる。)


 しかし、木の根だろうか足を引っかけ倒れてしまった。立ち上がろうとしたが、力が入らず立ち上がらない。そして、意識が朦朧とし、遂には意識を失った。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 白髪の混じった高齢の男はいつも通りいつものコースで狩りをしていた。


 (いつもより、森が騒がしい。何かがあったのか?)


 嫌な予感がしたため、男は早めに狩りを切り上げる事にした。

 帰り道、気配を感じた。辺りを見渡すと何かに襲いかかろうとしている魔狼を見つけた。

 動物は何かに集中しているときは無防備になる。この機を逃すのは勿体ないと思い、男は魔狼に矢向け放った。

 急所にあたり魔狼は絶命した。男はすぐさま周りに魔狼の仲間がいないか確認した。

 すると、少し先に人間の子供が倒れていることに気づいた。


 (息はあるが、見たところ脱水症状がおこしとる。このままではマズいな。こいつが狩りの囮になってくれたことは、間違いないし家に連れてってやろう。)


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「うっ…」

 目が覚めた。頭が覚醒するのに少し時間を要した。

 ここは何処だろうか。暖炉の近くに椅子があり、そこに人影がみえた。その影はゆっくり立ち上がり、近づいてきた。


 「起きたか。ほれ、水とスープだ。まずはそれを食え。」

ベッドの袖机に暖かなスープが置かれた。

スプーンで一口入れた。


 「おいしい。スープが暖かいなんて…」


 「何言ってんだ。スープは暖けーもんだろ。冷たいスープなんか不味いだろ。」


 施設では食糧をだされたがどれも冷えたものだけだ。しかし、目の前の食べ物は暖かくどれも身についていく気がした。

 はじめて料理を食べた。今まで食べてきた食糧は料理ではなく餌であった。ただ死なない為の餌だったのだ。

 無我夢中でスープを食べ、すぐに容器は空になった。


 「食べ終わったか。それでお前は何だって一人は森の中で倒れていた。」

 空の容器をみると、彼は話しかけてきた


 「それは…」

言い出せなかった。施設のこと、脱出したこと。


 「まぁ、いいや。話したくないこともあるだろうからな。仲間とかとはぐれたのか?」


 「いえ、仲間はいません。詳しくは話せませんが、とある場所から離れたくて逃げてきました。」

  

 「そうか。しかし、名前だけは教えてくれよ。」

 名前、今まで87番としか呼ばれてこなかった少年にとって一番答えづらい質問であった。


 「すみません、産んでくれた親の記憶が無いもので、自分の名前は知りません。」


 「ははあ。これは悪いことを聞いた。となると、お前さんはもしかして行くところに困ってるのかい?」


 「そうですね。飛び出してきたのは良いものの、出ることに頭がいっぱいで後先のことは考えていませんでした。」

 そうなのだ。施設の中に入る限り、外の情報が全くはいってこなかったのだ。


 「俺はお前を養うには、金も何もない。しかし、このままお前を見殺しにもできん。俺は狩人だ。だから、お前に狩りの何たるかをたたき込んでやる。お前が望むならな。」


 「…良いんですか?俺だったらこんな怪しい奴が追い返しますよ?」


 「馬鹿か。俺はもう老人だ。例えお前に殺されようが別にそれまでの話ってことよ。逆にお前がここで殺しなんかするかよ。そんなリスクたけーことするか。そこまでお前は馬鹿じゃない。」


 確かに言ってることは、理解できる。理性的に考えてそんな割に合わないことはしない。しかし、怪しい奴を警戒しないことにはならない。何故こんなにも人の為に助けようとするのか。少年は動揺した。


 「そういや、名前無かったよな。そうだなぁ、アドルフ。アドルフはどうだ?」


 このとき、少年は人間を知り、人間になったのだと感じた。


第二章突入


ようやく、ここで主人公に名前をつけられました。

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