壊れた塀
三日後だ。教官たちの会話を盗み聞くと、どうやら一日会議のため人手が足りなくなるそうで、自由時間が与えられるらしい。
(恐らくこの機会を逃すと機会が無さそうだ。長く収容されるとこの能力がバレるリスクが高くなるし、最悪もしかしたら洗脳され外に出られなくなったら困るからな。)
このチャンスをモノにするためにも、事前の準備を終わらせよう。
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実行日当日。予定通りに自由時間を与えられた。ほとんどの子供たちはグラウンドに出て魔法の練習などそれぞれ自主的に訓練していた。
まず、グラウンドの木の根元近くに移動し声を上げた。
「皆!聞いてくれ。俺たちは何でこんな塀の中にいるんだ?俺はこの中の世界しかしらない。このままだと、俺たち二級は外の世界を知らずに戦争で死んで行くんだ!外の奴らは今ものうのうと生きてやがる。可笑しいだろ!こんなところ出てやろうぜ!」
大声の出したためか、のどか痛い。しかし、そのおかげか周りから「そうだよな」「俺たちは魔法があるし、数もいる」と賛同の声が上がった。一級から反対の声もあった。
「お前ら二級がそんなこと出来るわけないだろ?教官たちに殺されて終わりさ。」
とバカにした態度で言った。
「ふざけんな、馬鹿にしやがって。何時だって一級のお前らは見下しやがる。しかも、何人か意味も無く仲間を殺しやがって!」
「そうだ!」とまわりも同調する。
(頃合いだな。)
先日開発した魔方陣を起動させる。原理としては地面に刻んだ模様に魔力を流す、今回は言葉に魔力を載せて運び、一級に向けて【火球】を発射した。
「やりやがったな!」
それを皮切りに魔法の撃ちあいになった。
(今のところ、計画通りだ。後は爆発魔法を撃てば終わりだ!)
そして、1枚の魔方陣を出し、爆発魔法を起動させる。
爆音と爆炎が上がった。それはグラウンド全体を覆うぐらいの大きさだった。
塀は破壊され、木の根本の死体は掘り出された。
(危なかった。予想以上に威力が大きくて、防御魔法を使って無ければミンチになってた。)
そして、破壊された塀の所からはじめての外に出た。
(さて、そろそろ大人たちが来るから逃げないと。しかし、これだけの威力だったら死体要らなかったな。)
87番と呼ばれた少年は塀の外の森の中へと消えていった。もう、彼は数字で呼ばれることも無いだろう。曇り空の間から日が差しはじめた。
やっと外に出られました。