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犬は狼に成り、何を為す  作者: ぬーん
塀の内で
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魔法訓練開始

2018.4.11 ある程度話ができあがり次第、全体的に修正する予定。

 施設に集められた子供の中には、数は多くないが魔術において特異な性質を持つ子供がいる。総じて特異な能力を持つ子供は一級にわけられやすい。ただ、割合が多いだけで二級や三級にも存在する。


 その特異な性質を研究者からは、固有性と呼ばれた。

固有性は、いくつか系統で分類できる。水を生成する場合水では無く氷が生成するが代わりに火を生成する魔法の場合は熱が高くしにくいといったような魔法の性質に変化をもたらす第一系統。一つの詠唱で二重詠唱を可能にするような魔法の発動に変化をもたらす第二系統。最後に、身体の一部が魔力と親和性が高くその部分が発達する第三系統。


 少年は第三系統の固有性を持っていた。第三系統は魔力的要因なだけで普通の才能と変わらず、この施設では重視されず、二級に割り振られたのであった。


しかし、少年は自分の固有性は他の固有性により有用であると確信しているからだ。なぜなら、親和性が高い部分は脳及び神経であるからだ。脳と神経の発達により、演算能力が高くなり、伝達信号が早くなることにより体を速く正確に動かすことができた。とりわけ、一番の利点とも言うべきものは視神経により、魔力を見ることが出来た。


 この少年の能力は研究者たちには理解されず、ただ運動能力と五感の向上としか思われていない。また、別の話になるが固有性の有無を検査するために色づけした魔力を体に通した時、体の中心から手足の先まで細くて長く脳と連結した神経を発見した。そのため、医療の進展につながり、その晩の夕飯のパンが一つ増えたのは良い思い出だ。


 魔力は身体に若干影響がある。そのため、魔法を使うにはある程度、体が出来上がらないと障害が発生する可能性がある。

 この施設では、10才になると魔法の座学と訓練がはじまる。もちろん、個人差があるため10才を越えても障害が発生する場合もあるし、逆に10才なる前に魔法を使っても問題ない場合もある。


 少年は、10才になりいよいよ今日から魔法の訓練がはじまる。グラウンドにまとめて同年代の子供たちが集められ、教官の男が口を開ける。


 「さて、今日から貴様らも魔法の訓練を開始する。まずは、座学からだ。座学といっても研究者のお偉い様のように詳しく説明することは無い。お前らのようなガキに理解できるような話では無いし、あまり意味が無いからだ。これが終われば後で出す課題を期限までに終わらせろ。いいな!」


 そう言って、座学がはじまったが、確かに教える内容は多くなかった。要約すると、魔法は正しく詠唱を唱えられれば発動するらしい。しかし、詠唱するのにコツが必要でそれが難しく、詠唱の種類が膨大であった。

 課題は5種類の魔法の習得であった。いずれの魔法も基礎中の基礎であったが、初めて魔法使う者にしてみればすぐに使えるはずもなかった。


そもそも、魔法を使う以前に魔法使うための源である魔力を先ほどの座学で初めて知ったのだ。


 (まず、魔法を使う前に魔力について調べないとな。幸い魔力が見えるし、取っ掛かりとして良さそうだ。)


 座学の中で教官が前で魔法を実演していたことを思い返す。


「いいか!魔法を使うために必要なのは、正しく発音、アクセントできてるか、そして詠唱文を間違えて無いかだ。もちろん、これは魔力を持ってる奴しかできん。ここにいるお前らはそれができる。今から、課題の魔法をやって見せる。一回しかやらんからな。」


そういうと、教官は詠唱を始めた。


【火球】


詠唱を始めると同時に、魔力が口あたりに集まり、詠唱とともに魔力が放出され、魔力によって幾何学模様を形成したことに少年は気づいた。おそらく、幾何学模様は魔法によって異なっていた。しかし、全てが違うわけではなく、全てに共通部分があった。

少年は、推察する。

(おそらく、詠唱というより、模様が重要なんじゃないか?)

模様と魔法の因果関係を調べるために、周りで練習している他の子どもたちを観察すると、失敗している時は模様がメチャクチャになってたり、模様に足りない部分があった。逆に成功しているときは、きれいにあの時の教官の模様と同じであった。


 (魔力を操作する必要がありそうだ。そもそも魔力ってどこからくるんだ?)

 自分の体を見てみると、丹田のところに魔力の塊があった。操作できないか意識を丹田に向けると操作できないか試すと、簡単に魔力を動かせた。しかし、頭に移動しようにも何かにつっかえて移動できない。何度も試すと段々と苛つきを覚えた。苛つきのせいか強引に移動させた時、体に痛みが走った。

 (痛っ、何だ!?)

 魔力の塊から血管のようにいくつもの線が伸びていた。これが魔力の通り道だと気づく。

 (これを全身に巡らせれば。)

 かなりの痛みを伴ったが、全身に巡らすことができた。

 その後は早かった。確かに、詠唱の速さ、声の高さ、発音など正しくないと発動しない。しかし、魔力が見える少年にとって、どこが間違いだったわかるし、どのように修正すれば良いのかわかった。魔法を覚えるのに半日もかからなかった。


 一通り、魔法を使うと空いた時間は魔法の実験をおこなった。


 魔法についてわかったことは、

・習得した魔法すべてに共通した模様が存在する。

・共通した部分は詠唱の最初と最後に生成される。

・最初に生成された模様を除いた模様を生成しようとしたが模様がバラバラになり不発になった。

・生成した模様は、時間経過とともに薄くなり、やがて消える。

・最後に生成する模様を生成しないと魔法が発動しない。

・最初と最後に生成する模様だけ生成すると、魔法自体は発動するが何も起こらない。

とわかった。さらに上の条件から推定すると最初に生成する模様が開始のキーで最後に生成する模様が終了のキーであろう。中間に生成された模様によって魔法の性質が決まることも推察できる。


 初回の座学から5日が経った。グラウンドには同年代の子供たちが魔法の練習をしていた。

ほとんどの子供たちが魔法を習得している中、落ちこぼれた子供がいた。ストレスが溜まっている子供にとって格好のおもちゃであった。


 「おい!お前、まだ一つも魔法を使えないそうじゃないか。」

という声が聞こえた。赤髪の少年が茶髪の少年を馬鹿にした態度で笑っていた。赤髪の少年は、一級で爆発という固有性をもっていると話題になっていた。対して茶髪の少年は、落ちこぼれであった。

 (能力によってヒエラルキーが決まる。至極当然の事だが、自己顕示欲の現れだ。馬鹿らしい。)

特に介入はせず、事の顛末を見届けると決めた。

 「俺が教えてやるよ!お前の体にな!」

と赤髪の少年は茶髪の少年に課題の魔法である【火球】を何度も放った。左手、右手、右足と死なない程度の威力で正確に当てる。しかし、威力を抑えたとはいえ、火の威力は体を蝕み、固有性の爆発によって肉がはじけ飛ぶ。痛みの許容量を超えたのか茶髪の少年は、遂には動かなくなった。

 「何だ、もう終わりか…」

赤髪の少年は壊れたおもちゃに興味を失せ、取り巻きを連れ去っていった。

 その後、教官が来て死体を処理するために運んでいった。恐らく今日の食事は肉が出るだろう。

どういう因果が考えたくは無いが、恐らくそういう事だろう。まあ、食べないが。


 しかし、見ていたことで得られたものがあった。爆発の固有性の模様を見たが、通常のものとは違う箇所があり、それを再現できれば自分でも使える可能性があるとわかった。あと、脱出にアイツは使えそうだ。


固有性について

本当は固有性なんて存在しない。つまり、爆発なんてものは誰でも使える可能性がある。


魔法について

幾何学模様を分解するとそれぞれの意味がある。何故詠唱によって魔法が発動するのかは、魔力を音つまり波にのせ、波紋が模様となるためである。

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