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独身の理由

独身の理由


オレや春男くらいの年齢になると結婚する先輩方が増えてくる。一年に三回は結婚式に呼ばれているような気がする。出費のほうもかさむが、こればかりはしかたがない。

 あるとき、この間結婚したの男性先輩と、町で偶然に会った。

「おー、佐々木。」

「あ、先輩。」 

三年ぶりに会ったせいか、話は盛り上がり、お互いに仕事終わりだったこともあってか、そのままどこかで飲もうという話に発展した。

店に入ると、先輩は奥さんに連絡を入れ、オレは春男に連絡を入れた。

「お前、独身か?」

「ええ。先輩のところはお子さんがいるんでしたよね?」

「ああ、いま、二人目が腹の中にいるんだ。」

先輩はにこにこしながら、言った。

「携帯に、写真があるんだ。見ろ。」

そこには、奥さんと子供が写っていた。

「いいですねぇ。オレも家庭が欲しい。」

 オレはため息混じりに言った。

「お前は難しいだろうなぁ。」

先輩はそういって、ビールを飲んだ。

「え?なんでですか?」

その先輩が言うには。

いつも春男の料理を食べているせいか、男の一人暮らしの割りにはあまり栄養が偏って体調不良になるということがない。それはいいことだが、たまには弱らないと、女性にもてないと先輩は言う。

「なんでですか?健康じゃダメなんですか?」

「だって俺、カミサンと結婚しようと思ったときって、俺が一人で熱にうなされているところに見舞に来てくれたのが決め手だったんだ。お前の場合はあの作家がいるからなぁ……。だいたい、自分で健康管理できる奴が結婚しようと思うか?」

「いや、でも、あいつは男ですし。オレだって、家庭欲しいですよ?」

オレはそう言ったが、春男が女性だったとしても交際には至らないだろうという妙な自信がある。外見がどうの、というより性格上の問題だ。

「その作家がいる限りは無理だろうなぁ。その作家、もてるか?」

「よくわかりません。」

「わからんって小学校時代からの付き合いなんだろ?」

「そうなんですけど、担当になるまでしゃべった記憶がほとんどないんですよ。」

「へぇ。それも面白い運命だよなぁ。まぁ、その作家が結婚でもして、お前の健康管理に手が回らなくなったら、お前にもチャンスがあるかもな。」

先輩はケラケラと笑ったが、オレにとっては笑い事ではない……。いつかやめようと思っていた担当。すっかり春男に馴染んでしまった……。

春男が結婚?そんなことがありうるのだろうか?ぐるぐると、あるとないが駆け巡る。

結婚した先輩にもそれなりに愚痴があるようだが、やっぱり幸せなことが多いようだ。

「ま、幸せになる日がきたら式には呼んでくれよなぁ。またなぁ。」

先輩はそういってそんなに遅くない時間に去っていった。家に帰って、家事を手伝うのだと、うきうきしながら帰っていった。

オレと春の二人がそれそれ、誰かと結婚する日がくるのだろうか。結婚式にあの先輩を呼ぶことがありうるのだろうか。

外で付いた、溜め息が白かった……。


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