どんぐり、コロコロ
どんぐり、コロコロ
「君、ドングリって知っているよね?」
「・・・・・・。」
オレは言葉を失った。春男の質問にはだいぶ慣れてきたが、ごくまれにやっぱり理解できないことを聞く。
「あ、当たり前だろう?お前、知らないのか?」
「いや、知ってるんだけど、ここらへんで見たことある?」
オレは考えてみた。そう言われてみると・・・・・・。
「そういや、最近みてないな。ああ、でも小学校の裏になかったか?」
「あった。あの空き地だろう?僕もそう思って見に行ったんだ。そうしたら、あの辺一体が新築ラッシュでなかったんだよ。綺麗なモデルハウスだらけになっていた。」
「見に行ったのか。そうか、あそこにないとなると、オレはしらないかなぁ。」
「そうだよねぇ。」
春男はため息をついた。その様子を見て、オレは思いついた。春男の運動だ!
「どんぐりのありそうな場所、調べておいてやろうか?」
「そう?いい?」
「いいとも。」
オレはにっこりと笑った。
三日後。オレと春男はでかけることになった。本当はもっと近くにあったのだが、引きこもりの手前の春男を引っ張り出すには、嘘も方便だと自分に言い聞かせている。
「おお!」
春男は感動して、これまでの道のりの疲労も飛んでいるように、なにやらドングリを拾い上げては見つめている。
「あ、クルミ!おおおお!!!」
なにやら、春男は感動しているが、側にいるとちょっと恥ずかしい。オレは春男の側からは離れて、適当に椅子に座って、休んでいた。しばらくして、寒くなり、ふと気がつくと、夕方になっている。
どうやら、寝ていたらしい。ちょっと辺りを見回したが春男の姿が見ない。オレは立って探すと、すぐに近くの椅子で見つかった。
「春男。春男?」
「んー?」
春男は椅子に腰掛けてなぜか、老人と話していた。
「春男、そろそろ帰るぞ。」
「わかった。それじゃあ、僕はこれで。」
春男はぺこりと頭を下げた。
「うむ。気をつけてな。」
老人は手をちょっとあげて見せた。
「なにを話していたんだ?」
老人が逆の方向へと帰っていくのを見ながらオレは聞いた。
「ああ、昔、どんぐりのクッキーを食べたことがあるって話。」
オレはなんだか、嫌な予感がした。
「まさか、それを作るために拾ってきたんじゃないだろうな?オレは食わないぞ。」
「まさか。そんなもの、食べてもあんまり美味しくないよ。これは、あやちゃんが、シマリスを飼い始めたって聞いたもんで、シマリスを見せてもらう代わりのお土産だよ。」
「そうか。」
ほっとした反面、オレは思った。なぜ、どんぐりで作った料理が美味しくないと知っているのだろう?
オレはあえて聞かずに、いることにした。




