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雨ケ崎汐里と神隠し村・2-1

毎週日曜更新予定とか……既に大嘘

(最低でも毎週日曜更新って事だと思います)

   02

 服を脱ぎ、仲居さんらしき女性が用意してくれた浴衣へと着替えを済ませる。僕が眠り込んでいた部屋は、見た目どこにでもありそうな民宿の一室、民宿とはいえ宿なのだから扉に鍵がついていても良いものだと思ったのだが無駄に和室らしく襖を一枚挟んだだけで、その外は既に共用スペースらしき廊下になっていた。案の定、更衣室らしきものなどは存在しておらず、その為、僕が着替える分には何も問題はなかったのだが、サクラが着替えをする際に僕は早々に着替えを済ませて部屋の外で待つことにした。

「別に気にしないのに、何か問題がある?」と、サクラは露骨な笑みを浮かべながら口にした。

 僕が気にする。問題ならある。

 階段を降り、玄関口へと向かう。部屋と同じく木目が広がる廊下や階段を覗きながらとぼとぼと進む、ひとつ、ひとつと階を降り、玄関へと辿り着いた。

 降りきってみると四階だったという事がわかる、こういった古い木造建築は二階建てだというのは僕の思い込みだったようだ。そう考えながら外に出ると散歩をしていた時のような田舎道が広がっている。

 人が、いない。

「サクラ、さっき雨ヶ崎なんて存在しないって言ったよな……それってどういう意味?」

「んー?」と、とぼけた様子でサクラは首を傾げた。

 僕は半分わかっている様な事を質問したのだった。

「これは、当たりを引いたって事でいいんだよな」

「……」サクラは少し黙った後、くすくすと笑う事で返事をした。

 何も、楽しい事ではない、と……つっこみたい気持ちもあるが、僕も半笑いで聞いたのだからお相子だった。


   ×××


 ……あれ、携帯電話がない。どこやったんだっけ? そういえばさっき目が覚めた時から手元になかった。携帯電話どころか荷物が全部ない……。これは困った。

「サクラ、僕の携帯電話しらない?」

「知らない、ボクのはある」と、そう言って白い携帯電話を得意げな顔で見せつけた。

「へー、よかったね、僕のはない」

 僕がサクラに小さな苛立ちを感じていると後ろから声をかけられた。振り向くと先程の仲居さんらしき女性がこちらへ向かって歩いてくる。さっきまで僕とサクラが旅館の入り口付近で気持ち悪くニヤケていたのを不審に思われたのかとも思ったが、そんなことではなかった「間に合ってよかった」と、近づいた彼女は、はい、と言って僕に黒い携帯電話を渡してきた。

「あ、ありがとうございます……?」

「どういたしまして」

 僕が怪訝そうな顔をしていると彼女は「これおにぃさんが倒れた傍に落ちとったんよ、運ばれてきた時に拾ってあったらしくて渡すん忘れてました」と、また笑った。

 よく、笑う人だなぁ。

「じゃぁ、今度こそ私は仕事に戻りますんで、お出かけするならご自由に、夕飯は18時からですんでお忘れのないように」

 そう言って、彼女は旅館のほうへと戻っていった。どうやら僕は完全に客扱いらしかった。

 なんだかなぁ。違和感。

「よかったね、携帯あって」と、サクラ。

「そーだな」

 僕は素っ気なく答える。

 PiPiPiPiPi――――。返ってきたばかりの携帯電話が手の中で震えた。電話?

「はい、高坂です」

『もしもーし、今どんな感じですか?』

「どちらさまでしょうか?」

『なにそれ、辛辣だなぁ高坂くんは相変わらずツンデレなんだから』

 そう軽口を叩く人物に心当たりが一人だけいる事が、僕にとっては軽く懸念材料だった。

「何の用ですか、眼鏡さん」

『名前で呼んでくれていいっていつも言ってるのに』

「苗字ですら呼んでいない事にそろそろ気がついたらどうですか」

『愛しのサクラちゃんは?』

「……横にいますけど」

『それは良かった、高坂くんの位置情報が探索できなくなったから心配してたんだよ、でもサクラちゃんが横にいるって事はとりあえずは無事の様だね、一安心』

 位置情報?

「で、なんの用なんですか?」

 と、言うか何で僕の電話番号知ってるんですか。

『え? 何言ってんの? 電話してくれっていったの高坂くんじゃんか』

「……は? え、ちょっと、それどう言う事ですか?」

『えー? 高坂くん本当に大丈夫? 頭でも打ったの?』

 倒れた後らしいから、事実頭は打っているのかもしれないけれど、小馬鹿にしたようなその口ぶりに不快感を抱きながらも僕は質問を重ねた。

「いや、言っている意味がよく分からないんですが……」

『あー、もしかして高坂くん―――雨――汐―――る? な――――ちゃ―どこ―――』

「あれ、眼鏡さん? もしもし?」

『気――な―――』 ――――ブツンッ。と通話は切れてしまった。ん……何だ? どうしたんだ、電波か? この辺りは田舎も進んだ奥の方に見えるし、電波の入りでも良くないのだろうか?

「ねぇ、圭哲」

 僕が思案していると、横からサクラが声をかけてくる。

「なんだよ」

「圭哲はさっき、何で携帯電話を取り出そうとしたの?」と、サクラは言った。

 は? 何でって……携帯電話がないと眼鏡さんからの電話が、て――――――あれ? なんかおかしい。

続きます

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