プロローグ 01
薄暗い森の中。乱立する木々の狭間で、険呑に向かい合う一組の男女が居た。
周囲に人影はなく、第三者から見れば男女の逢瀬に見えなくもない状況だが、男が女の喉元に付き付ける剣と、女の人間味の消された無表情が一切の甘さを感じさせない。
男の名前はヤスヒロ。年齢は二十歳で、日本人の大学生。ヤスヒロと言う名前は本名ではないが、今の彼にはこれ以外に名乗れる名前が思い出せない。
身長は高めで、身体つきは大柄でこそないものの、鍛えられて引き締まっている。服装は黒い長袖シャツに黒いズボン、履いている靴の色も黒で、全身の凡そ九割が黒一色で統一されており、お世辞にも趣味が良いとは言えない。
趣味はともかくとして、現代的な装いの上から何故かファンタジー調の擦り切れたロングコートを纏っており、その手には腰に吊るす鞘から抜き放たれた、刀身に赤錆びの浮く剣が握られている。その切っ先は、男が対面する女の喉元に突き付けられていた。
顔立ちは一つ一つのパーツを観察すれば平凡だが、その中で目付きだけが異様に悪く、鼻頭まで伸ばされた前髪の隙間から、悪鬼の如き眼光で女を睨みつけている。
女の名前はシャーリィ。年齢は二十歳。ヤスヒロと同じく、彼女もまた自分の本名を思い出せないでいた。
光の加減次第では銀色にも見える美しい白髪、不健康ではないが白磁の様な白過ぎる肌、白髪白肌では一際目立つルビーのような紅い瞳。およそ現実世界では滅多にお目にかかれない冗談の様な容姿だが、それでいて容姿は非常に整っており、感情の抜け落ちた人形の様な無表情も相まって、その佇まいはいっそ神秘的ですらある。
女性としては比較的長身。スレンダーだが均衡のとれたバランスの良いスタイルを、白のブラウスとシックなロングスカートと、特徴的過ぎる容姿に対して地味過ぎる装いで固めており、非現実的な美貌と現実的な服装が奇妙な調和を生み出している。
そしてヤスヒロと似たようなデザインのコートを着込み、腰には鞘に納められたままの短剣を吊るしている。
剣を喉元に付き付けられているというのに一切の感情を表さず、凶悪な人相で睨み付けるヤスヒロの眼光を、無機質な瞳でただじっと受け止める。
人相の男が剣を突き付け、喉元に剣を突き付けられながらも無表情を保つ神秘的に美しい女。対峙する二人は、傍から見ればどの様に見えるだろうか?
強盗と、その被害者というのが妥当だろうか。
当然ヤスヒロが強盗で、シャーリィが被害者だ。
おそらく、この二人の対峙を見た第三者は大多数がそう結論付けるだろう。
あるいは強盗がシャーリィで、彼女が短剣を抜き放つ前に自衛としてヤスヒロが抜刀したとも考えられなくもない。
前者に比べて、圧倒的に第三者の支持を得られないだろうが。
「どういう状況なんだ?」
「答えかねます。私もまた、この状況に困惑していまして」
押し殺している訳でもないのに低い声でヤスヒロが問い、無表情なシャーリィの口から抑揚のない声色で答えが返る。
沈黙が一秒、二秒と続き、たっぷり三十を数えた。
ヤスヒロは凶悪な人相をそのままに、シャーリィの喉元に向けた剣を引く。
そして腰の鞘に左手を添え、手元を窺う事なく手慣れた様子で剣を鞘の内に納める。
「すまない、少々過敏になっていた」
「お気になさらず、異常事態で警戒心を解くのは難しいことです。貴方はそれで脅迫した訳でも無し、非はありません」
「剣を抜いたのは早計だった。こればかりは咎められて然るべきだ」
「それを言うならば、この状況下で無遠慮に近付いた私にこそ非があります。お互い同じ境遇であると容易に判断出来た状況で、配慮を失したのは問題でした」
「しかし、な――」
「いえいえ、私こそ――」
「俺が――」
「こちらも――」
ヤスヒロが言葉少なげに謝罪し、謝罪を受け取ったシャーリィは剣を突き付けられた身でありながら、それを当然のことだと許した。それを皮切りにして始まったのは、お互いが己の非を交互に主張し合うという奇妙な光景だった。
広大な森の中、木漏れ日の温もりに包まれながら眠り続けたヤスヒロの目覚めは、まるで世界から祝福されているかのような心地良さによって先延ばしにされていた。
彼と同じ境遇の者達が一人、二人と広大な森の何処かで目覚め、その数は千、万と増えて行き、やがてシャーリィが目覚め、99999人を数えた所で、ようやくヤスヒロは目を覚ました。
生い茂る草の葉を寝台に、大樹の枝を天蓋に、虫の羽音を目覚しに。
目を開けることすらも億劫な、長い夢を見ていたかのような倦怠感。
夢現な浮遊感の後に訪れたのは、五感を満たす世界の感触。
廃棄ガスに汚染されていない澄んだ空気の味を噛み締める。
瞼裏からでも感じる陽光が温かい。
身体を縛り付ける重力は大地の重過ぎる寵愛で、草木の揺れる音は森の大合唱。
気だるげに目を開き、寝転がったまま辺りを見回すと、そこは森の中だった。
乱立する木々の枝から覗いた空は眩しく、木漏れ日が降り注ぐ。
生まれてからただの一度も経験したことのない大自然の息吹に包まれ、草の上に寝転がったままのヤスヒロは朧気に思考する。
サク。
――ここは何処だろうか?
少なくとも、ヤスヒロの記憶の中にあるどの場所にも当てはまらなかった。
最新の空調設備の完備された新東京の、その第三層に設けられた自然公園でさえ、ここまで空気が清浄ではなかった筈だ。
サク、サク。
――自分は何故ここに居るのか?
記憶を手繰り寄せる。この状態に陥るまでの最新の記憶は、五年間通い続けてきたアルバイト先へ向かう途中で途切れていた。
自分は何か事件に巻き込まれたのだろうか?
それとも自分は既に死亡していて、ここはいわゆる死後の世界なのだろうか?
寝覚め直後で上手く働かない思考では、答えは出ない。
サク。
(――なんだ、夢か)
サク。
思考の袋小路に突き当たったヤスヒロが選んだのは、思考の放棄だった。
ここが何処であろうとも、このまどろみの心地良さを手放す理由には成り得ない。
このまどろみが、この心地良さが。
面倒臭い思考を放棄する正当な理由に思えて仕方がなかった。
瞼を落としたヤスヒロは、まどろみに身を委ねた。
サク。
委ねようとした。
委ねようと、した。
委ねようとして、土と草の匂いに交じってほのかに漂う『甘い』匂いに気が付いた。
――『甘い』匂い?
急速に意識が覚醒した。
朧気だった思考が戻ってくる。
継ぎ接ぎだらけだった理性が修復される。
自分が、復元される。
見開いたヤスヒロの眼に飛び込んできた景色は見慣れた自室の天井ではなく、木漏れ日の眩しい森の風景でもなく、記憶に鮮烈に焼き付いた三ヶ月前まで友人だった十年来の付き合いのある忌々しい×××××(自主規制)の×××××××(聞くに堪えない罵詈雑言)の部屋でもない。
その目に映ったのは、草の上に寝転がったヤスヒロの枕元に座り込み、覗き込むようにして顔を窺う、無表情な女性だった。
(……誰だ?)
お互いの呼吸が聞こえるかのような至近距離で、見つめ合う。
ヤスヒロは女性に見覚えがなかった。雑誌で見たとかもしれないとか、もしかしたら街角で擦れ違ったとかもしれないとかいう可能性の話ではなく、一目で初見だと確信出来る程に、その女性の容姿は際立っていた。
銀色にも見える白髪、染み一つない白い肌、そして紅い瞳。西洋人形のように整った顔立ち。外見的な特徴は日本人離れしているが、だというのに彼女の顔立は日本人そのもので、それが人形的な無表情も相まって神秘的な違和感を演出している。
――こんな個性の塊を、忘れる筈がない。
「おはようございます」
女の形の良い口から、抑揚のない無感情な音が紡がれたが、驚愕と混乱の二色で思考を受け尽くされたヤスヒロには届かない。
急速に冷え切った思考に突き動かされるがまま、ヤスヒロは仰向けから身体のバネで飛び上がるようにして起き上がり、無意識で左の腰に吊るされた馴染み深くも違和感のある重さへと手を伸ばし、柄を引っ掴んで抜刀した。
座り込んでヤスヒロを窺っていたシャーリィは、跳ね起きたヤスヒロを視線で追うものの一切の反応を行えず、一息も付かぬまま、気が付けば喉元に剣を突き付けられていた。
そして冒頭の膠着状態へと至ったのである。
剣こそ鞘に納めたが、ヤスヒロの凶悪な目付きは和らいでいない。
これが地顔である。
初対面の人間が、この男は世界を憎悪してるんじゃないか、と誤解しかねない程に険のある目付きだが、これが素の表情なのである。
シャーリィも変わらず、一切の感情が抜け落ちた無表情だ。
これが、地顔である。
しかし無表情だが無感情と言う訳ではなく、透き通る紅い瞳には理知的な光が灯っている。これほど人の目を惹く特徴的な容姿なのに、その表情一つで彼女の存在感が希薄になりそうな程の無表情だが、これが彼女の素の表情である。
かたや凶悪な人相の青年、かたや無表情の美人。
しかしその内面は、非常に生真面目で、存外に似通っていたらしい。
「きりがありません。私達はお互いに非を認め、そして謝罪を行い、両者がそれを受け取りました。先程のことは一先ず水に流して、お互いの状況を確認しましょう」
「そう言って貰えると助かる。――それでその恰好から見るに、貴女もか?」
「はい、私もです」
お互いがお互いの服装と、その上から纏った似通ったデザインのコート、皮帯から吊るされた武器を眺め合う。現代日本では先ずあり得ないチグハグなコーディネイト、それどころか時代遅れの剣や短剣で武装しており、街中で見かけえば間違いなく通報、職務質問からの問答無用の連行のコンボが炸裂するだろう。
ヤスヒロは服装に頓着はしないが、あからさまに世界観の違うコートを纏う程ズレたセンスは持ち合わせていない。ましてやヤスヒロは現代日本人であり、事情あって刀剣類に馴染みがあるが、常日頃から帯剣している筈もなく、腰の剣を帯剣した覚えもない。
それはシャーリィも同様で、気が付けば森の中で倒れており、身に覚えのないコートと短剣を身に付けていたのである。無論、これらは彼女の所持品ではない。
「ヤスヒロだ。本名かどうかは自信がないが、今はこれ以外に名乗れそうな名前がない」
「シャーリィです。個人的には魂の名前なのですが、本名ではありません。貴方に同じく、今は他に名乗れるそうな名前はないようですね」
「それは思い出せないから、か?」
「思い出せないと言うよりは、暗示や催眠などで外部から干渉され、意図的に記憶を封じ込められているかのように感じます。といっても、根拠はないのですが……」
ヤスヒロは日本人である。シャーリィも容姿こそ日本人離れしているが、日本国の生まれである。しかし、今の彼らにはお互いが名乗り合った名前以外の己を指す固有の名前を思い出せないでいた。
慣れ親しんだ筈の名前が思い出せない。名字を浮かべようとすると霧消する。あだ名や愛称さえも、浮かんでこない。
ただ一つの例外として、それぞれがヤスヒロとシャーリィという、己を指すのであろう固有の名詞が思い浮かぶのみだった。
「異常事態だな」
「間違いなく異常事態です」
『気が付いたら見知らぬ場所に居た』
『気が付いたら、身に覚えのない装備を身に付けていた』
『慣れ親しんだ筈の、自分の名前が思い出せない』
『一部の記憶が曖昧で、明らかに不自然な状態なのに混乱は少なく、その状態が自然な状態なのではないかと無意識下で誘導されているかのような気がする』
極め付けは、ヤスヒロが脳裏で奇妙に自己主張する知識に気付き、不審に思いながらもその知識の指示に従って虚空に手を翳すことで表示された、半透明のディスプレイの存在である。
驚愕したヤスヒロを見て、シャーリィも虚空に手を翳し、ディスプレイを表示させる。
ディスプレイには『アイテム』『装備』『ステータス』『スキル』
『マスタリー』『システム』と簡素に記された六つのアイコンがあった。
「……本当に、何なんだろうな?」
「空間投影ディスプレイならプロジェクタの類がある筈ですが、見当たりません。なんらかの端末を身に付けている訳でもなし。これはまさか、VRでしょうか?」
VR技術。それはヤスヒロやシャーリィの生まれる一世紀近く前では、都市伝説の域を出ない架空の科学技術であった。現在は次世代の技術として軍事・医療を中心とした様々な分野から注目されており、世界各国で研究開発が行われているらしいのだが、一般公開されている情報は数少ない。
ヤスヒロは意を決してディスプレイに触れてみた。指先で軽く突っつくと、壁を叩いたかのような固い感触が返ってくる。
(――本当にVRか? だが、まだ一般公開には速過ぎる。なら今のこの状況は、一般公開に当て嵌らない、何らかの試験か? 俺はともかくとして、この女――シャーリィを参加させる意図はなんだ? 佇まいから見ても、訓練を積んでいるようには見えないが)
ヤスヒロは半透明のディスプレイ越しに、表示されたディスプレイと無表情に睨めっこするシャーリィを見やった。華奢な体格で、ディスプレイに触れる指は白くて細い。
とてもではないが、身体能力的に優れているとは思えない。
考え込んだヤスヒロは、ディスプレイの項目を順番に流し見る。
項目を叩く度に新しくウィンドウが開かれ、一通り確認した後、『スキル』と『ステータス』の項目を残して他のウィンドウを閉じた。
一つ一つのパラメータにカーソルを合わせ、表示されたテキストを注意深く読み込む。
暫くして解ったのは、現在ヤスヒロが所持しているスキルは、
『剣技』『格闘(蹴り)』『直感』『軽業』
の四つであることと、ステータスに設定されているパラメータの数は膨大で、完全に把握出来そうにはない、という事だった。
(この項目、これではまるで――RPGじゃないか)
己の中を駆け抜けた予感に戦慄し、ヤスヒロは口内に溜まり込んだ唾液を飲み込んだ。
ディスプレイを閉じたヤスヒロは、確認を取るようにシャーリィに窺う。
「スキルとかステータスは、この身体に設定されていると思うか?」
「装備の項目に限定すればですが、装備中のアイテムのアイコンは私の身に付けている物に酷似しています。つまりは、そういうことなのでは?」
シャーリィが、己が身に付けたコートと短剣を指差した。
その行為が意味するヤスヒロへの答えは、確証はないが概ね肯定というものだろう。
少しづつ、状況が見えてきた。
記憶への違和感。
見覚えの無い森中で目覚めた直後の意識の混濁。
そして、名前の喪失。
(こんなことが出来るのは、こんな真似を平気でやりそうな連中は――ッ)
ヤスヒロは唐突に片膝を突いて、生い茂る雑草ごと掌で土を掬い、感触を確かめるように握り込む。土と草の柔らかい感触、正常に機能する五感。
森の中を一陣の風が吹き、ヤスヒロの前髪を揺らす。
ヤスヒロが顔を上げると、シャーリィが光加減で銀色にも見える白髪を、木漏れ日を反射してに淡く輝かせながら靡かせていた。
まるで、住む世界が根本的に違うかのようで。
ここがヤスヒロの想像通りの場所だとするなら、ますますをもって彼女は場違いだ。
否、場違いなのは自分の方なのかもしれないとヤスヒロは思った。
(――いや、見惚れてる場合じゃないだろう)
手を叩いて土を落とし、ヤスヒロは立ち上がる。
「違和感が無さ過ぎてとても信じられんが、もしここが仮想現実空間だとすると、この身体は造り物になる訳だ」
「違和感がないと言うのは、どちらに対してです? 信じられないと仰る割には、貴方はどこか納得されているようにも見えましたが」
シャーリィがヤスヒロの胸中を見透かしたように言った。
彼女の指摘は事実であり、しかしヤスヒロは確証を持てないが故に断定が出来ない。
さて、どうしたものかと再び考え込んだヤスヒロは、突如として視界に表示された目に痛い赤い警告文を読み上げ、咄嗟の判断でシャーリィを抱えて倒れ込んだ。
「――ッ!?」
もつれ合うようにして倒れ込む二人の頭の上を、風を切り裂きながら一条の閃光が奔った。高速で飛来するソレをヤスヒロは視界の端で捕え、閃光の正体が殺意を以って射出された矢であることを突き止めた。
少々乱暴だったが、的確な危機回避だったと自賛する。
飛来する矢の存在にシャーリィは気付いていなかった。ヤスヒロの背後から完全な死角を狙って放たれた矢は、仮にヤスヒロだけが避けたとしても、シャーリィを確実に射抜いていたことだろう。
怪我の有無を確認すべく、ほとんど零距離のシャーリィに顔を向ける。
「強引ですね。ですが、意外と嫌いではありません」
「お前そんなキャラだったのか、というツッコミは後回しだ」
異性に押し倒されていると言うのに、随分と余裕らしい。
無表情に真偽を判断しにくい冗談を口にしたシャーリィを庇いながら立ち上がる。
ヤスヒロは矢の飛来した方向を警戒し、一息に腰の剣を抜き放った。
シャーリィもまた、立ち上がって短剣を引き抜く。
幾重もの木漏れ日のカーテンの先、警戒した二人の視線の向こう側。
木々の奥から小柄な人影が向かって来た。
それは少年だった。
ヤスヒロ達とはサイズの異なる、これまた二人の纏うコートと似通ったデザインのコートを羽織っており、少年らしい活動的なハーフパンツからは健康的に焼けた足が覗いている。年齢は十代前半、おそらく中等部生だろう。性別の曖昧な、化粧をすれば少女に見えなくもない整った顔立ちに人好きのする明るい笑顔を浮かべたその少年は、警戒心を薄れさせる幼い容姿に反して酷薄な光を瞳に宿していた。
その手には、矢の番えられた木製のクロスボウが握られている。
ヤスヒロは確信した。
――コイツが、狙撃手か。
剣を握る手に力を込める。ヤスヒロは平常時でさえ凶悪な目付きを更に歪め、少年を射殺さんばかりに睨み付けた。少年の一挙一動から目を離さず、いざとなればすぐさま斬り込めるように。
殺人鬼も斯くやという視線に晒されながらも、少年はどこ吹く風と言った表情で、余裕を崩さず無防備に歩み寄ってくる。
だからといって気を抜いてはいけない。何故ならこの少年は、確固とした殺す意思を以てヤスヒロ達を襲撃した、童顔の死神なのだ。
「勘の良い人ですね。いえ、そういうスキルでも所持しているでしょうか?」
やがて少年はボーイソプラノを響かせながら、同年代の友人と小突き合うかのような自
然で緩やかな動作で、クロスボウの先端を持ち上げる。
「ですが、貴方達はここで終了です。お疲れ様でした」
クロスボウに番えられた矢先が、ヤスヒロを捕えた。
――初期装備を入手しました 5P
――自分以外のプレイヤーと遭遇しました 5P
――初めてメニューを操作しました 5P
――合計獲得点数 15P
――目標点数まで 185P
今回の謎
①ヤスヒロの怪しげな経歴
②シャーリィの容姿
③思わせぶりに現れた謎の少年
④獲得点数と目標点数