マイディ
マイディは、広い居室にグルボを迎え入れた。
「何の用?」
「エス、エスタ。メルナシ」
「ふうん、借金ねえ?」
彼は床にがばっと這い蹲り、額をすりつける。
「やめてよ。あんたはもっと、プライド高い男でしょ」
「ネクナス、エスタ、ネクナシューゼ」
「そう、そんなことまでするほど、あの女を愛しているの……」
「エス、エスタ?」
「いいわ、貸すんじゃなくて、買ってあげる」
「ユラフ? ミヤクブス……」
「やあね、小松菜じゃなくて、あんたをよ」
グルボは慌てて両手を振った。
「メスエシタ! ユクレス!」
「へえ、じゃあ、私が最初のオンナね」
もたれかかってきた女を、彼は受け止めてしまった。もちろんそうしなければ、彼女は床に転がっていただろう。
だが、それでも、受け止めるべきではなかったのかもしれない。
「グルボ、私はね……あなたが好きだったの」
その一月後、村では盛大な結婚式が執り行われた。
花嫁は白無垢に日の光を返して、むくげの花のような清楚を振りまいている。
花婿は寡黙に俯いて、それでも口元に幸せそうな笑みを浮かべていた。
参列者に紛れ、その様子を眺める女は、口の中だけで小さくつぶやく。
「……ばか」
のどかな光に彩られた、そんな昼下りであった。