1章 非日常とかクソ食らえ
1.非日常とかクソ食らえ
唐突ではあるがここで自己紹介を始めよう。
僕の名前は神田康一。
普通が幸せ、というのがモットーの大学2年生。
頭の中はド文系。数学関係は勘弁してください。
趣味は歌舞伎や能の鑑賞。そこ、渋いとか言わない。
自他共に認めるグランドファーザーコンプレックスであり、
性格・趣味にじっちゃんからの影響がもろに出てる。
そんなじっちゃんが死んだのは3年前のそれはそれは寒い冬の夜だった。
いきなり胸を押さえて苦しみだしたので、すわ、キ●かと思ったがうちのじっちゃんは犯罪者ではない。
「康一、過ぎたるは及ばざるが如し。これから生きていくうえでいろいろあるじゃろうが、どんなときも気は緩めすぎず、また気は張りすぎず。それが男子に生まれ、長に生まれたものの心構えじゃ。忘れるなよ。」
鈴のように小さな、それでいてよく通る声だった。
その後のことはよく覚えていないが、気づいたらじっちゃんは墓の中だった。
訳わからん状態が数日、狂ったように泣いたのが数日続いたのをよく覚えている。
それ以来、僕はじっちゃんの言葉を胸に、流れに逆らわず、流されすぎずを貫いてここまで生きてきた。
話がそれ気味なのでここらで引き戻そう。
が、それ気味になるのも仕方ないのかもしれない。
なにせ僕は今生命の危機をひしひしと感じる場にいるし、まさに絶体絶命なのだ。
そう考えるとさっきのじっちゃんのくだりは、いわゆる走馬灯と言うやつなのかなと思われる。
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「さっさと食われてよ。この後見たいドラマあるんだから。」
「いやいやそんな軽めの理由で僕の人生に幕閉じてたまりますかいっ。」
はい、というわけで突然ではありますが野山にて謎の獣と謎の美少女に追い掛け回されてます。
美少女に追い掛け回されるってのがこんなにもつらいシチュエーションだとは思わなかった・・・
まあ僕が住んでるところがやや田舎っぽいんで野性の動物をたまに見かけたりってことはある。
が、ない。これはさすがにない。
もの●け姫に出てくるような特大サイズの獣(真っ黒だけれどもおそらく猪)だもの。
こんなの普通田舎でもお目にかからないどころかギネスとれんじゃないかなってサイズ。
口が相当でかいので横向きならば僕のサイズだと一口だろう。一応156cm以上はありますよ。ええ。
とか何とか言ってる間に進行方向上に金網フェンス。上は有刺鉄線があるので上れそうにない。
が、下は・・・うん、野球のヘッドスライディングっぽく行けば通れるサイズの穴が開いている。
向こう側には足首までの長さ程度の草が生えているので、うまくやれば擦り傷も少なそうだ。
他の方向には逃げられないか。右には崖、獣は左斜め後ろから追いかけてきている。
というわけで、南無三っ!!