目玉焼きスペースオペラ
《黄身を制する者》
西暦2147年、宇宙は「味覚帝国ガラム」と「調味料連邦シオミール」に二分され、百年戦争の末期を迎えていた。
舞台は銀河辺境に浮かぶ中立惑星フライ・パン。かつては平和な農耕星だったが、今では「目玉焼き宗主星」として両陣営の神経が張り詰めていた。
惑星の民は古来より、目玉焼きを神聖な儀式食とし、「何をかけるか」によって成人の儀を済ませるのが習わし。
そして、かけるものによって、属する宗派が分かれるのだ。
醤油派:古の味、東方の知恵。深い旨味とノスタルジーを重視する。
塩派:素材を活かす高潔なスタイル。無駄を嫌い、精神の研ぎ澄ましを求める。
ソース派:かつての覇権者。混沌と融合の美学を持つ、少数精鋭の戦闘民族。
ケチャップ派:若者に人気の新興宗派。甘美なる誘惑と自由の象徴。
マヨネーズ派:異端として迫害されながらも、一部で熱狂的信仰を持つ地下組織。
主人公:リュウ・タカハシ(17歳)
彼は孤児であり、どの宗派にも属さぬ「ノンタレ」だった。しかしある日、彼は父の遺品から謎の調味料チューブを発見する。
ラベルには、古代文字でこう書かれていた。
「うま味エッセンス ∞」
直後、リュウはガラム帝国の刺客に襲われる。どうやらその「∞」なる調味料が、全宗派を超越する「究極のタレ」らしい。
彼を助けたのは、シオミールの女騎士セレス・シオナ。彼女は言う。
「あなたこそ、予言の『黄身を制する者』……!」
ふたりは宇宙船「サニサイド1号」に乗り、伝説の目玉焼き神殿がある“太陽黄身星”を目指す。
その途中、各宗派の使徒たちと味覚対決を繰り広げる。
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クライマックス:銀河目玉焼き審判会議
ついに目玉焼き神殿にて、銀河の全宗派が集結。
リュウは宣言する。
> 「かけるものなんて、自由でいいじゃないか!」
「大切なのは、黄身と白身がひとつであるように、僕らもまた——分かちがたく、つながってることだ!」
そして彼は、父の遺した「∞」をかけて目玉焼きを焼く。
……その香りは、すべての宗派の味覚を一つにした“宇宙の真理”だった。
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結末
目玉焼きをめぐる争いは終わり、「目玉焼き共存憲章」が締結。
リュウは初代“宇宙味覚調停官”となり、今日もまたどこかの星でこう言っている。
「かけるもので争う時代は終わった。だが、お前が何をかけるかは……俺が見届ける!」
彼の背後で、サニサイド1号のフライパン砲が静かに火を灯す——
【完】
短編というより、プロットっぽいけど(笑)