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出会いは最悪

新作投下です!よろしくお願いしますー!!

10年前。



・・・・あの災厄の業火を、僕は一生、忘れない。



 ある、満月の夜。

墨を流したかのような、艶のある黒髪を腰までのばした青年は、キラキラと輝く眼下の街並みを、紫水晶アメジストのような色をした瞳で、ただぼんやりと見つめていた。


 青年が腰かけている窓辺の高さからして、高貴な身分な人物だと見て取れた。そのせいか、夜からワインを片手に呑む仕草も、品があった。青年はぽつりと、

「・・・・・シア。必ず見つけ出す。必ず」

そういった青年の瞳にはゆるぎない確固たる決意が熾火のように灯っていた。



・・・・こうして夜は更けていって朝になり、昼になった。

バルストロメイ国の首都、アレキサンドリアの外壁周辺付近に、二人の影があった。一人は小柄な少年で剣を携帯している。その両手には重そうな車椅子を小さな体で軽々と押して山道を歩いていた。少年は赤い髪をみつあみにして、瞳は綺麗な翡翠色の快活そうな少年だった。


「今日は運が良かったね!ダヴィデ兄さん!盗賊とかも襲ってこなかったし!」

そういって、少年は目の前の車椅子に座っている成人男性を見た。その男性は栗色の髪を後ろでみつあみに編み込んでいて、瘦せ型で肌も青白かった。彼は目のあたりを布で覆っていて、どうやら盲目のようだ。ついで、車椅子ということは足が悪いようだった。兄と呼ばれた青年は苦笑しながら、

「すまないね。ユーリ。私がこんな体なばかりに・・・」

「嫌だなぁ!何言ってるんだい、兄さん!たった二人の兄弟なんだから、支えあうのは当然だろう?盗賊とかきても、僕強いから追っ払えるしさぁ!」

「ふふ。確かにユーリは強いね。そういえば、次の国で、仕事はもう見つかったのかい?」

「うっ・・・・!いやー・・・・それがまだぁ・・・見つかってないんだよねー」

肩をがっくしと落として落ち込む弟を、ダヴィデと呼ばれた兄はまた苦笑して、とくに彼を責めなかった。

「別に心配しなくていいよ。私がアレキサンドリアの神殿にかけあって神官の仕事につけば、二人分の食い扶持ぐらい稼げるから」

「そ・・・そういうはいかないよ!兄さんだけ働かせて、僕だけふらふらするわけにはいかないって!とりあえず腕っぷしだけはあるから、首都についたらなんとかなるさ!」

そういって、気合をいれるために両頬を両手でパチンと叩くと、ユーリと呼ばれた少年は、兄が乗った重そうな車椅子を軽々と押しながら、意を決して、バルストロメイ国首都、アレキサンドリアへと入っていった。



思ったよりも、入国に時間がかかってしまい、ユーリことユリウスとダヴィデの兄弟が宿屋についたのは、昼過ぎのことだった。宿屋に手続きをすませると、今度はユーリはおなかが減ってきたので、兄に尋ねた。

「ねえ、兄さん!市場のところへ行ってお昼ご飯買ってくるね!」

「いや、宿屋でも食事は販売されてるだろう?・・・・ああ、そうか。ユーリはアレキサンドリアを探検したいんだね」

「うっ!ま、まぁー、そんなとこ!せっかくの首都なんだしね!」

「ははは。いいよ、私はここで待ってるから」

「うん!」

そういって、ユーリは宿屋の人に兄を頼むと、足取りは軽く、市場へと向かっていった。


「たんけん♪たんけん♪」

久しぶりの市場にるんるんしながらかけていくと、いろんなお店が出店されていた。それこそ、とくに食、フルーツやらちょっとした料理を出す店なんかも多く出ていてユーリは目を輝かせた。


「あ!あのりんご、おいしそうー!!焼きたてのパンも売ってるー!」

そして、何より目を引かれたのは・・・・

「ああ―――!豚の串焼きが売ってる―――!!」

とくにお肉に目がないユーリは、興奮した様子で出店に駆け寄った。

「よ――し、兄さんの分も買っちゃおうっと・・・ん??」

さっそく懐から財布をだして、串焼き肉を買おうとすると、背後の方から大きな怒号が聞こえた。

「てんめぇ、コラ!!シリウス様に謝りやがれ!」

「ひっ!ひぃぃ!!もう、お許しくださいぃぃ!!」

褐色の肌の黒髪短髪で、筋骨隆々とした男が、肥え太った商人らしき男の胸倉をつかんで激昂していた。

「なんだ?・・・あれ」

ユーリが喧騒の方に目をやると、売店のおじちゃんが顔をしかめて彼に声をかけた。

「ああ、あれはここいらを治める上流貴族、クラディウス家のおつきのレオンハルト様だろう。・・・アンタ、関わらない方が身のためだよ。・・・・って、ちょっと!?」

潔く屋台のおじちゃんの忠告を聞けばいいものの、ユーリは風のように喧騒の中へ突っ込んでいった。人ごみをかき分けて、ユーリが中心へ向かうと、先ほどと全く同じ状態で半べそをかきながら胸倉をつかまれている商人らしき人物と、剣を携帯して柳眉をつりあげて怒る青年がいた。それを見た瞬間、気づいたときには、ユーリは口をだしていた。

「おい、その人もう謝ってるだろ?いい加減、その手を放せよ」

「ああん!?なんだ、テメェ。通りすがりのよそ者が!」

「こいつはなぁ、市場を優雅に散策されておられたシリウス様に水をぶっかけやがったんだよ!」

そういわれて、レオンハルトという人物らしき人の後ろに二人の人物が控えていた。一人は丸眼鏡をかけた亜麻色の髪の少年で、しょうがなさそうに深くため息をついていた。もう一人はこのクソ暑い中に黒いローブを身にまとった人物だった。衣服がすでに濡れていることから、この人物が彼の言うシリウス様なんだろう。

(あいつ・・・上流貴族だな)

黒いローブに金の縁で刺繍された地味だが高価そうなローブだった。だいたい貴族は庶民と分けるとために、縁に赤やら金色やら装飾を施したりするものだ。

その、当のシリウス様はというと、特にどうでもいいという感じで気だるげな瞳でぼんやりとしていた。



・・・しかし、じっと彼を観察していたユーリとたまたま目が合うと、その顔色が一瞬で変わった。

まるでユーリに信じられないものをみるかのように、食い入るように視線をあわせると、先ほど気だるげだった瞳が爛々と輝きだしたのである。この変化にユーリも内心すこし、戸惑った。

(え?・・・・なんだよ、ガン飛ばしたのがばれたのかな?)

「とにかく、もういいだろ?服なんて日に当てれば乾くんだからからさー」

あっけらかんというユーリに、レオンハルトらしき人物は額に青筋をたてて怒っていた。

「ばっかやろう!俺は見たんだ、こいつはなぁ、わざとシリウス様にぶつかって水をぶっかけやがったんだよ!」

「・・・・え?そうなの?」

「は、アハハハ。いや、そんなまさかぁ」

ユーリが怪訝そうに商人らしき人物を見ると、商人は苦虫をかみつぶしたかのように罰の悪そうな顔をすると、ヘラヘラ笑いながらもみ手をしながらごまかしてきた。すると、先ほど丸眼鏡をかけた中世的な顔をした少年が、

「・・・・・はあ。大方シリウス様の偉大な貴族の地位をやっかんだ者の仕業でしょう。さっさと行きましょう、レオンハルト。このままではシリウス様が風邪をひかれてしまう」

といって、踵をかえそうとするも、彼の主らしき人物はまったく動かなかった。




「・・・・・・待て」

「・・・は?シリウス様?」

怪訝な声をあげる従者を無視して、シリウスと呼ばれた者の視線がさっきから、痛いほどユーリに注がれていた。一方、ユーリはというと、初めてシリウスの発した声があまりに低く艶のある美声だったので、びっくりしていた。

「・・・・其方そなた、名前は?」

「え・・・?僕?」

「僕は・・・ただのユーリだけど・・・」

「ふ。・・・・・そうか」

「このままでは俺の面子がたたん。其方、その男をそこまでかばい立てするなら、このまま決闘してもらおうか?剣には自信があるのだろう?」

主のいきなりの申し出に慌てたのは従者らしき少年だった。

「シ・・シリウス様!?一体どうし・・・」

「ティテュス。木刀を用意しろ」

「はっ。し、しかし、たかがあんな小僧などに、シリウス様が相手なされることでは・・・」

「・・・俺の言うことが聞けないのか?」

「はっ。御意!」

そういって、ティテュスと呼ばれた少年は、急いで人ごみをかき分けて走っていくと、やがて木刀を二振りもって帰ってきた。その一本をシリウスが受け取ると、もう一本をユーリに投げてきた。そして、シリウスと呼ばれる男がするりとローブをぬいだ。



 ユーリが改めてみると、シリウスと呼ばれた人物は、びっくりするくらいの美青年だった。身長もユーリがうらやましいくらいに高く、黒髪は首の後ろで縛っていたが腰まで届く黒髪は陽光にあてられて艶やかに光っていた。何より、瞳だ。珍しい紫色の瞳が先ほどから爛々と光ってユーリを見つめている。

(はあ・・・・変なのにひっかかちゃったなぁ。早く兄さんのもとへ戻らないといけないのに)

内心軽くため息をついたが、なぜかユーリの胸は心躍っていた。それもそのはず、シリウスなる人物が剣の達人なのは、雰囲気でも見て取れたからだ。ユーリも剣に携わるものとして、強い人物と戦うのは嫌いではなかった。


―――――――そして、闘いがはじまる。


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