新世界へ4
二年後、私とタクトが住まう管理センター兼住居を備えた大規模農場の特区アグロが完成しました。
その間、私たちは農業に関するプログラムの更新や紫外線を浴びても劣化しない皮膚へ交換しました。その皮膚の交換の際、私の肌はそれまでの銀色ではなくヒューマンと同じような色になりました。
初めて見た時はびっくりしました。
「いいのですか? 法律に抵触しませんか?」
「どうせ人がいない所に行くんだし、このぐらいいいでしょ。」
浅見さんが悪戯っぽく笑い、その横では多野さんが手を組んで目をキラキラさせて見ています。
「リーアちゃん、可愛いーっ。」
「ありがとうございます。」
「あ、そのセリフを平坦に言うプログラムは変更してないんだ。」
多野さんは残念そうです。
「ついでに表情を表せるように表情筋に近いものもつけた。これからは『感情』に合わせて『表情』も変えられる。その代わりヒューマンではないという印をつけさせてもらったよ。」
そう言いながら私の眉間をつっつきました。そこには青い小さなクリスタルが嵌め込まれています。タクトの眉間にも同じように嵌め込まれています。
「ソピアでの検証結果、銀色の肌っていうのも人間の不安感を煽るみたいでね、こっちに移行しようかという計画もあるんだよ。それを少し先取り。」
タクトが「これ、光るの?」と浅見さんに尋ねて「……光らない」と冷たく返事をされています。
紫衣さんは私の周りをぐるぐる回りながらうんうんと頷きました。
「お化粧の仕方を教えてあげる。あとは、もうメイドじゃないから服も準備しなきゃ。一緒に買いに行きましょ。所長、中央センターに請求書を回していいですか?」
「農場でおしゃれは必要ないと思うけど……。ほどほどにね。」
*
ご主人さまとおぼっちゃまにお別れの日です。タクトと並んで挨拶をします。
「では今からアグロに出発します。」
「うん、なにかあったらすぐに連絡をするようにね。そういうプログラムをしてあるから大丈夫だと思うけど判断が重要だからね。」
「AIがしっかり学習します。」
「ふふっ、そうだね。」
おぼっちゃまの方へ向くと、おぼっちゃまはずっと俯いています。
「おぼっちゃま、お元気でいてください。」
「……おぼっちゃまはやめろ。もう十五才だ。」
「プログラムが書き換えられてないので、ずっとおぼっちゃまです。」
私がにこりと笑うと、おぼっちゃまは目の周りを赤くして私をじっと見ました。
「仕事に飽きたら、たまには帰ってきてもいいぞ。……故障するなよ。」
「はい。おぼっちゃま。」
おぼっちゃまも斎木教授のような工学博士を目指すそうです。
「斎木教授、本当にありがとうございました。リーアと一緒にプロジェクトを成功させます。」
「うん、期待しているよ。」
ご主人さまとタクトが握手している横で浅見さんが「落ち着いたら子供アンドロイドを作ってあげるよ。」なんて言っています。思春期も搭載されるのでしょうか。
私とタクトは路面電車に乗り込み、ソピアを囲っている壁にある正門まで移動してソピアの外へ出ました。
そこから自動運転の車に乗り、新天地へと旅立ちます。




