新世界へ2
それから私はおぼっちゃまのメイドを務めながら農業に関するデータを読み込んだり、農作業に適した体の動きができるように改良するために毎日中央センターに通いました。
農場を作るまでしばらく期間があるので、中央センターの敷地内に畑をいくつか作って細かい動作確認作業も行います。
私とタクトが畑に生えた雑草を抜いていた時でした。
雑草を抜く作業用ロボットに学習させる、苗と雑草を見分ける情報を集めていたのです。
「芽吹いたばかりの苗と雑草を見分けるのが難しいですね。」
「間引きも、どれを残すか難しいね。」
小松菜の畑のロボットなら小松菜の形とそれ以外を覚えればいいのですが、雑草も様々ですし、私とタクトは全てを管理しないといけないので地道にデータを収集する必要があります。
長身で黄金比の美しいアンドロイドがしゃがみ込んで草を抜く姿はなかなかシュールです。でもなんだか楽しそうです。……毛先がくるんとしたツインテールの女子はどうなんでしょう?
私が自分の髪の毛を触っているとタクトが気がついたように顔を向けてきました。
「どうしたの?」
「……。タクト、草抜き『楽しい』ですか?」
「『楽しい』。初めての経験だからかな。新しいことを知るのは『楽しい』ね。」
「髪型を変えようかと思います。」
「え、なに急にどういうこと?」
雑草を抜き終わり、周囲を広く見渡します。畑はだんだんと傾いた太陽に照らされています。
「タクト……。」
「うん?」
「キス、しましょうか。」
「えっ?」
「『嬉しい』がどんなのか知りたいんです。雑草を抜き終わった『達成感』はわかったのですが。」
「……なるほど。」
タクトの顔が近づいてきて私の唇に自分のそれを押し当てました。
「どう?」
私は首を傾げました。
「視界の明度と彩度が上がった気がします。」
「あはは、そうかぁ。少し進歩してるのかもね。」
どうやら間違ってはいないようです。
「ところで、その敬語は直さないの?」
「そうですね、メイドではなくなるので直してもいいのですが。敬語を使わないのはタクト限定でいいですかね。」
単にシステム的に簡単な方を言ったのですが、なぜかタクトがとてもいい笑顔を浮かべました。
毎日二人で畑の世話をしながらぽつりぽつりと会話をします。
「……杏香さま、最初はあんな感じじゃなかったんだよ。仕事以外の時間はずっと一緒にいたけど、僕と二人だけの時は笑ってたんだ。でも、いつのまにか怖い顔ばかりして笑わなくなった。」




