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銀の太陽 紺の月  作者: ミソラ


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対峙5

「私を脅迫するの!?」

「必要とあらば脅迫でもなんでもしますよ。」


 杏香さんとご主人さまの会話が続いている中、先ほどの言葉が引っかかりました。


 タクトがスクラップ。

 

 私はゆっくり瞬きをし、タクトの顔を見上げました。タクトはご主人さまと杏香さんを見つめながら静かに佇んでいました。目の前の浅見さんも地面を見つめたまま拳を握って立っています。


 私の中で凄まじい速さで演算が行われ、一つの答えが導き出されました。瞬きをして周囲を見回しました。


 タクトをスクラップにするのは正しくない。


 私はそっとタクトの手を握りました。

「逃げましょう。」

「……えっ?」


 ソピアの壁の向こうは森と山。みんなの意識がご主人さまと原嶋さんに集中している間に逃げられると判断したのです。……充電は、三日はもちます。


 タクトがくすっと笑いました。

「ダメだよ、リーア。その計算は間違っているよ。」

 タクトはまっすぐ前を見据えました。

「仕方ないよ、僕は禁じられた存在だから。教授の、国の決めたことに従うよ。」

 

 間違っています。タクトは「完成品」です。スクラップされていい物ではありません。

「では、私も一緒にスクラップされます!」

 大きな声で言いました。

「リーア!?」

「リーアちゃん!?」

 ご主人さまと多野さんが驚いた顔をしてこちらを見ました。

「タクトがスクラップになるのならっ、一緒にスクラップされて一緒に溶かされます!」


「え、リーアちゃんもしかして……。」

 多野さんの焦った声の後、浅見さんが伺うように言いました。

「『感情』を手に入れた……?」


 わかりません。『感情』なのかどうなのか。ただ『正しくない』という思いから溢れた言葉だったのです。


 *


 その後、ご主人さまと研究者さん達の手で杏香さんの警備用アンドロイドの動きは止められ、杏香さんは連れて行かれました。

 それを見送るタクトは、なんだか寂しそうな表情をしていました。


 *

 

 私とタクトと浅見さんも中央センターの所長室に連れて来られました。


 ご主人さまとテーブルを挟んで座っている浅見さんは少し青い顔をして膝の上で拳を握っていました。

 ちなみに私とタクトは浅見さんの後ろに立っています。


「……斎木教授、申し訳ありませんでした。」

「うん、連れて行かれたのはわかったけど、君にも隙があったってことだからね。重要な任務に就いている自覚が足りなかったね。」

 浅見さんはますます顔を青くして項垂れました。ご主人さまはタクトを見てはあっと息を吐きました。

「それにしても君の才能には恐れ入るね。タクト、いくつか質問してもいいかい?」

「あ、はい。もちろんです。」

 慌てたように答えたタクトに向かって、ご主人さまはふふっと笑い、「その受け答えだけで大体わかるよ。」と言いました。


「浅見くん、タクト本体とプログラムのソースをしばらく預けてもらえないか? あとリーアもしばらくセンターにいるんだよ。」

「明日のおぼっちゃまの予定は。」

「今日の予定も大幅にすっぽかしたのに何を言ってるんだ。予定はマーサに送っておくよ。」

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