対峙2
「彼は恋人用アンドロイドですから、新しい恋人でも見つけたんじゃないですかね?」
「ふざけたことを言わないで! タクトは私が資金提供をして作ったのよ。早く出しなさいよ!」
「……でもあなたは法律違反をしたじゃないですか。アンドロイドに、タクトに暴力を振るわせましたね? この警備用アンドロイドにしてもそうです。こんな意味のない器物損壊をさせるなんて。あなたはアンドロイドの所有者にふさわしくない。」
「ふん、特区の外でアンドロイドを作り上げたあんたが何を言っているのよ。」
浅見さんが伸びた前髪をかきあげました。
「そうですね。あの時は正常な判断ができなかった。死への恐怖がありましたから。」
「殺しはしないわよ。ただ、ちょっとした事故に遭ってもらって二度とアンドロイドを開発できないようにはしたかもしれないけどね。それがあんたにとって一番苦しいことでしょう?」
「それが俺にとっては『死』です。でも今ならそうなったらそうなったで諦めもつきます。ただタクトを制作するのもメンテをするのも俺以外には不可能です。例え海外の優秀な研究者でも俺の頭の中を理解することはできないでしょう。……量産するのは無理ですよ。」
浅見さんが清々しい笑顔でそう言うと、杏香さんはイライラした様子で私の腕を掴んでいるアンドロイドに目を向けると、アンドロイドは私をずるずると引っ張って前に突き出すようにしました。
「このアンドロイドはタクトのエサよ。このアンドロイドが壊されればタクトに『恨み』と『憎しみ』の感情を教えてあげられるわ。ふふっ、あなたの大切なタクトがまた成長するわね。」
そこで初めて浅見さんが眉を顰めました。
「さあタクト、出ていらっしゃい。あなたが出てくればこのアンドロイドと一緒に大切にしてあげるわよ! 出てこないなら破壊してあげる!」
それでもタクトは現れませんでした。
「……だからタクトはここにはいないんです。ここでリーアを壊しても意味がありませんよ。それにリーアのデータは中央センターに保管されている。今ここでリーアを壊してもまた復活させることができるんですよ。……だけどタクトはそうはいかない。データを保存していないんです。なにせ禁じられた存在なのでね。」
杏香さんは舌打ちし、警備用アンドロイドに命令しました。
「この建物の中を探しなさい! 設計図がなくてもタクトを分解してデータを取り出せばいいのよ!」
私を掴んでいたアンドロイドが私を地面に叩きつけ、浅見さんを押しのけてもう一体のアンドロイドと共に杏香さんと建物の中に入って行きました。
衝撃で動けなくなった私の方に浅見さんが歩いて来ます。
「あの人も存外にバカだよね。俺らの監視を怠るなんて、かなり頭に血が昇ってるな。」
そう言いながら私を立たせてくれました。
「大丈夫?」
「はい。メインは壊れてないようです。」
立ち上がって服をぱんぱんと払っていると、ふいに頭上から聞いたことがある声が降ってきました。
「君も一緒に逃げるよ、リーア。」




