対峙1
「あなた、斎木教授のメイドよね?」
原嶋杏香さんが窓を開け、にこやかに私に話しかけました。
「あなたとタクトが接触したのは知っているの。だから後をつけてきたのよ。……タクトがいるのはこの先ね?」
「……。」
「あなたが話せることは知っているわ。……捕まえなさい。」
警備用アンドロイドが両脇から私の腕を掴みました。
「さあ、利用価値があるかどうか分からないけど、一緒に来てもらいましょうか。」
*
雑木林の中の一本道を進むと、しばらく手入れがされていないモルタル造りの
無機質な建物が見えてきました。
この建物は外部からの侵入者を防ぐシステムのための機器の格納施設で、それほど大きくはありません。
原嶋杏香さんと一体の警備用アンドロイドが建物に近づき、私はもう一体の警備用アンドロイドに腕を掴まれて車から引き摺り出されるように降ろされました。
杏香さんが横の警備用アンドロイドに頷くと、アンドロイドが建物のドアをノックしました。
再び『危険』と私の中にアラームがなりました。でもどうすることもできません。私の強度では警備用アンドロイドに一瞬で壊されてしまいます。そしてタクトに知らせる手段もありません。
アンドロイドが何度かノックをしてもドアは開きません。私が動けずにいると、杏香さんがもう一度頷きアンドロイドがドアを蹴破りました。
「やれやれ、手荒なことですね。」
一人の男性が壊れた扉の向こうから頭をがしがしかきながらゆっくりと出て来ました。私の記憶の中にあるより少し痩せて髪の毛が伸びた浅見さんです。
私の姿を見て少し目を見張りましたが、すぐに冷静な表情に戻りました。
「あーもう。こんなにしたら空調が効かなくなってしまうじゃないですか。精密機械は暑さに弱いんですよ。」
「タクトはどこよ?」
「あー、お久しぶりですね。どうかしましたか?」
「タクトはどこか聞いているのよ! それから設計に関しての資料!」
「さてねえ。タクトは自由にふらふらしていますよ。それから資料はここの中。」
浅見さんはくすくす笑いながら指でとんとんと自分の頭をつつきました。




