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銀の太陽 紺の月  作者: ミソラ


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浅見side3

 今、目の前に俺が作ったタクトがいる。

 依頼者の理想を体現した美しい外見に最新のチップ。『会話』も『感情』も『表情』も会得してヒューマンと遜色のない存在だ。

 そしてリーアのことが『好き』だと言う。


 こういうことか。斎木教授が言っていたことは。

 

 俺は神じゃない。


 タクトのような存在を生み出したことに、俺はだんだんと恐れを感じていた。


 それでも俺にとってタクトは大切な存在だ。

 俺が生み出した子供であり、共に現状を打破するための同士でもある。外見は俺と同じ二十六才の青年で、膨大な知識を有しているが、まだまだ幼い。

 タクトの内面は純真で『善』なのだ。

図らずも依頼者の扱いを経て、それが実証された。

 

 あらかじめAIに学習させていた道徳観や倫理観に反することを実行するたびにタクトの胸の奥に小さな火花が散るように細工していた。

 それが功を奏したのか、どんなにひどい扱いを受けてもタクトの『善』が失われることはなかった。

 依頼者の命令で人を傷つけたり暴力を振るったりしたことはあったけれど、タクトは自分の意思で反抗した。


 依頼者に「命令を聞かないから初期化かスクラップしろ。」と言われた後、タクト本人にも懇願された。


「初期化してくれ。」

 と。


 それは『自殺』だ。


 もしかするとタクトが自分で自分を停止させる恐れもあると、俺は急いでタクトのOSを組み直し逃亡した。なぜならどんな目にあっても失うことがなかった純真さは、それこそアンドロイドの未来にとっての『希望』だからだ。

 ()しかない。なんとしてでもタクトを守る。

 研究室にある全ての機器を破壊し、資料になりうるものは燃やした。多少は自分の頭の中にあるし、何度でも再構築できる。

 そしてパソコンをひとつだけ持って逃げ出した。


 現在では現金を持ち歩く習慣はなく、静脈認証で支払いをするのが一般的だ。しかし静脈認証をすれば捜索願が出ている俺はすぐに捕まるだろう。


 情けないことに逃亡する先は斎木教授の元しか思い浮かばなかった。教授ならタクトの素晴らしさも理解してくれる。タクトだけでもソピアにたどり着くことはできないだろうか。


『浅見を置いていくなんて、できるわけがないよ。』

『でも彼女の追っ手もすぐやってくる。』

『僕はアンドロイドだよ。浅見一人ぐらい背負って走るよ。充電も満タンだし。』

 明るく話すタクトに励まされ、なんとかソピアにたどり着くことができた。

 たどり着いたものの、どういう顔をして斎木教授に会いに行けばいいのか。中央センターが管理している建物に潜伏しながら鬱々とした気分で動けなくなった。


 そんな中、タクトが『自分の判断』で教授の家に忍び込みリーアと会った。数日後には俺が未練がましくハッキングした教授宅の予定を見てリーアに接触した。

 そしてにこにこしながら「リーアが好き」だと言う。恋情まで獲得したのか。

 再びOSを書き換える。OSはアンドロイドを動かす上で基本的な根幹のプログラム。


 アンドロイドはアンドロイド相手にしか恋をしない。


 タクトから恋情を取り上げるつもりはない。リーアには恋情も感情もないけれど、タクトは幸せになってほしいんだ。

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