タクトside2
ここは特区の端にある、中央センターが管理する建物の一つ。浅見がセキュリティソフトを無効化して僕らは潜伏している。監視カメラも過去の問題のない映像を延々とセンターに送っているらしい。
天才ってすごいな。知能はアンドロイドが上のはずだが、突拍子もないことを実行するのは、やはり人間なんだな、と理解する。
「僕は食事の必要がないからいいけど、浅見は大丈夫なのか? 持ってきた食料も少なくなったんじゃないのか?」
「もともと引きこもり体質だし別に。外に出ると知った顔に会うかもしれないし。タクトもあまりフラフラすると危険だ。」
「うん、リーアも特区の住人の顔と名前は全て入っていると言っていた。」
「話せないアンドロイドがほとんどだけど、警備員に遭遇すると危険だ。中央センターのデータベースに侵入できればタクトの情報を潜り込ませられるんだけど、パスワードが変わってて……。」
ここにあるパソコンは中央センターと繋がっているのでハッキングの必要はないが、データベースの認証が何段階もあって侵入が難しいらしい。
「俺の静脈で入ったらここにいるのがバレるしな。」
「バレてもいいんじゃないの? 早く教授に会わないといけないんだし。」
「……。」
「とにかく食料を手に入れてくるよ。浅見が倒れたら困るのは僕だ。」
「でもねぇ、コードで管理されている店にタクトは入れないよ。」
店の前で読む機械には特区の住民とアンドロイドのデータが入っており、合致しないと入店できない。入店時のコード読み取り(ヒューマンの場合は静脈)で支払いまで行われる。
「あー、それなんだけどね。リーアの明日の予定を書き換える時にちょっとね。」
浅見は呆れたようにため息をはいた。
「そういや、お前にはプログラムの自動生成機能をつけてあったな。おまけに抜け目がなくなってきた。すごい成長ぶりだ。」
「えっ、僕やばいかな。バレたらスクラップにされる?」
「多分ね。俺もスクラップにされるだろうね。」
「……浅見もぺっちゃんこになるのか?」
「ものの例えだ。リーアとの接触もほどほどにしておけ。」
「でも僕、リーアに『好き』って言ったんだよ。『好き』なのに接触しないって『寂し』くない?」
「……タクト、『寂しい』って感情も理解したのか。ていうかリーアのことが好きって?」
「うーん、可愛いからずっと一緒にいたいって感じ?」
浅見が眉間に皺を寄せて目を閉じた。
「えーっとね、タクト。念のため君のOSをアップデートするからちょっと待っててくれるかな?」
「ここに来る前にアップデートしたばかりだったけど。うん、わかった。」
二時間後、僕のOSには『好意を持つ相手はアンドロイドに限る』というプログラムが追加された。




