バフ、物人化
「さあ、行こうかグラス君」
「ヒサカツさんだから1人でも勝てると思うけどなあ?」
2人は知らせてきた店員らしき人に近寄る。
「あれ、情報ギルドマスターじゃないですか。よかった。それなら安全ですね。」
「どんなモンスターが出たの?」
「ゴブリンライダーです。20ぐらい」
「ゴブリンライダーって?」
「フォレストウルフにゴブリンが乗った状態のモンスターだ。フォレストウルフのスピードとゴブリンの人間並みの器用さが厄介な相手だ。」
「ちなみにお連れのお方は?」
「僕の友達。彼も戦える・・・よね?」
「俺単体では正直弱いですけど。」
「いや、まあ、テイマーだからそうなんだけど。その仲間たち。」
「もちろん戦えますよ。いくよ、みんな!」
「「「「おう!」」」」
「じゃあ、グラス君。ちょっとじっとしてて。」
「えっ?」
「『速度強化:対仲間』」
グラスを含め仲間たち全員の足元が光り、グラスたちは体の異変に気がついた。
「体が、軽い。」
「なんだこれ、すげー早く動けそうな気がする。」
「僕の技。バフをかけた相手のスピードを早める効果があるんだ。」
「すごいっすね、バフはRPGには欠かせないけどまだ持ってないからなあ」
「なあ、バフってなんだべ?」
「一時的な能力強化のこと。」
「さ、行こうか。『神隠し』」
森の奥に進んでいくと、ゴブリンライダーの群れのような集まりがあった。
「隠れて不意打ちしたいな。」
「安心して。今奴らに僕らの姿は絶対に見えないから。」
「?」
「じゃあ、見てて。」
するとヒサカツは手を後ろに組み、ゴブリンライダーに一直線に近づいていった。
「見つかる!」
「おーいグラス君!全然気づいてないでしょ?」
ゴブリンライダーの30cmほど離れた場所でもゴブリンは気づいた様子を見せない。
「僕の能力で見えなくなってるの。だから不意打ちし放題だよ!」
ライは『エレクトリシティ』をゴブリンの集団の周りに敷く。
それは戦闘ではなく、狩りに近かった。
あっけない、じつにあっけなかった。
「勝った気がしない。」
「僕はもう慣れた。」
少し虐殺感があったが、それは深く押し込むことにした。
「肉も魚もそういうもんだと考えれば・・・」
「我らのことを食料と?」
「ごめんってフニクス。」
店に戻ってきたグラスとヒサカツは客から歓喜の声をもらった。
「ありがとう!!」
「流石情報ギルドマスター!」
「にいちゃんもありがとな!」
「この笑顔が守れるなら、僕はなんだってするよ。そのためには勇者様も必要だ。そしてそれをサポートするのに君が欲しい。でも、今はそれを抜きにしてドリア食べよう!冷めてるけど・・・」
2人は冷め切ったドリアをニコニコしながら食べた。




