第8音 前準備
旅に必要なものは何か、それを真剣に考えたことがある。
まずは旅の計画だ、旅の目的や行き先、予算などを決めてスケジュールを作る。今回でいえばこれは何もないといってもいいだろう。なぜか、何もわからないからだ。未知への探検ともいえよう。そういう意味では旅というにはあまりにも過酷なものになるかもしれないな。
そして次にいるもの、それは旅行用品だ。衣類や靴、必要なら薬などだが当たり前だがこんなものは今着ているもの以外はない。アルペジオが薬草なるものを用意しているようだが効き目があるのかも不明だ。何せ、リス基準だからな。そして、どこで食事にありつけるのかわからない以上は食料と水分を持っていく必要上がる。おそらく荷物の大半はこれになるかもしれない。
お金や交通手段、宿泊施設などは検討するまでもなくないため、考えるだけ無駄になる。つまり、私が用意するものはなく、なんとアルペジオがすべて用意している。
どうやら、彼は私に万が一のことがあったらと入念に準備をしているようだが、その荷物を持つのは私なのだと理解していないらしい。非力とは言わないがあまり重いものを持てる自身もないのだがね。
それにしても量が多い、このままだと荷物が思い余り進まない可能性があるな、一度くぎを刺しておくか
「アルペジオ、悪いがそんなに大荷物を持つことはできないぞ。私はそこまで頑丈じゃないぞ」
「旦那ー!何言ってんっすか!これ全部あっしが持ちまっせ!」
「はぁ?何をいって」
この小さなリスが何を言いているのだ。全部持つ?馬鹿をいえ、その小さな体に何ができるのだ
ベートヴェンはアルペジオを見ながら小ばかにしたような表情を浮かべたが、逆にアルペジオは得意げな顔を浮かべて
「まあ、見てて下せえや!」
瞬間、アルペジオはリスの姿から人の姿になった。
「!!」
「どうです?これならいけるでしょ」
得意げな表情に腹立つより前に驚きが勝った。そこにはベートヴェンよりも少し背の高い成人男性の姿があり、普段の口調からは想像できない凛々しい顔立ちをしていた。いわゆる整った容姿である。
ひとしきり驚いた後に思ったこと、それは「そんな姿ができるなら最初からしとけよ」だ、だがどうやら、長い時間は難しいらしく、休憩をはさみながら姿を維持するらしい。
「なので、旦那には悪いんですが休憩を多めにもらいますぜ、それと進むのが少しばかり遅くなりますぜ」
「いいさ、この旅は行く当ても目的もないのだ、少々ゆっくりなっても何も支障がない。それよりも君が休んでいる間は私が荷物を持とう。なに、もう少し荷物を減らしてくれれば何も問題ないさ」
アルペジオは私の提案を最後まで受け入れようとしなかったがこれも旅の醍醐味だと押し切って交代制にした。
アルペジオは従者じゃないのだし、対等な関係である以上そんなことはしたくないのが正直な心情だな
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