第7音 アルペジオとの契約
想像していた通り、ここは私の知っている場所ではなかった。
アルペジオの話はまるでおとぎ話のようにこころ踊るかと期待したが、どうもよくわからなかった。
確実に言えることはここが地球ではなく異世界で、森の中で今で生活してきたがここから出れば世界は広がっているというわけだ。
アルペジオも外にいたことがあるようだが、詳しくはわからないようだ。
そして極めつけは
「恩恵の存在だな」
どうやらこの世界の知性ある生き物は恩恵と呼ばれるものを所持しており、それを生きるかてにしているようだ。
「むしろ旦那が恩恵の存在を知らないことに驚きですぜ、普通に使っているんっすからね」
そう、私は使っているのだ。この恩恵を、至極当たり前のように、まるで自分の体の一部のように、そこにあるのが当然のようにだ。
このピアノ、これこそが私の恩恵である。中にはすごい戦いに特化したものや便利なものの恩恵もあるそうだが私にとってはこれが一番いい。一番長く寄り添ってきたものだ、これ以上にない恩恵だとも
ちなみにアルペジオの恩恵は『変幻』というらしい。
「あっしのギフトを見てみたいですって?いいですけど、たまに使ってましたよ?」
そういって、アルペジオは一瞬にして姿を鳥の形に変えた。
音もなく、あたかも最初からそこにいたように、自然に変わっていた。
「てっきり旦那の前でも変わってたので気が付いていたのかと」
「気づくわけなかろう、私は基本的に音楽に熱情をささげているのだからな」
「そうでしたね、旦那は音楽一筋の人ですもんね」
どうやらこの『変幻』によってアルペジオは食糧を見つけていつも調達してくれていたようだ。実に有効的に恩恵を使っている。
なるほどな、こうしてギフトをしようして生活を気づいているとなると大きくこの世界は違うのかもしれないな。私の常識を超える体験ができるかもしれない。
私が尊敬する作曲家も旅をしながら作曲活動をしていた、ならば今世は今までの私と違うように生きてみるのもいいかもしれないな。
幸いにもピアノはどこでも弾けるしな、そう考えるとなんだか楽しみになってきたな。
「アルペジオ、私は旅に出るぞ」
「ちょ、急にですか!」
アルペジオには世話になった。いや、むしろ助けてもらいすぎたな、アルペジオがいなければ私は野垂れ死んでいたかもしれない。感謝しなければな
「アルペジオ、今日までありがとう。では私は」
「ちょちょ、ちょっとお待ちを!
旦那!待って下せえ!」
アルペジオはあまりの同様にしたが回っていない
「そんな後生ですぜ!どうかあっしも連れて行って下せえ!あんないい演奏を特等席でこれからも聞かせてくれるって契約だったろ!忘れたわけじゃねえだろうな!?」
契約、ああ、名付けのときにしたものか。
「確かにしたな、まあ、いいだろう。君は私の良き隣人であり良き友であるしな、どうも気が急いていたようだ、許せ」
ほっとしたアルペジオを横目に新しい未来に胸を膨らませるのであった。
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