第1音 邂逅
始めまして、あるいはお久しぶりです。この度、新しい作品を書き始めることにいたしました。
どうぞゆっくりしていってください
一人の人生が終わった。
その男は生前にのみならず後世に多大な影響を与え、多くの人が癒され、多くの人に愛され、そして多くの人に勇気を与えた。
ついに息絶えてしまったか。
何故死んだと分かるのか。単純だ、生きているのであればあの地獄のような苦しみが今頃体を襲っているからだ。
だが、今はそれがない。
あれほど渇望した状態になったのにかかわらず、何も感じない。もし、仮に生きていたとして何も感じない状態であれば、それはきっと死んでいるのとさほど変わらないだろう。
つまり、私は死んだのだ。
振り返ってみるとどうだろうか、一言で表すならば「創造と苦悩の人生」そんな名前を付けられそうだな。
そこから断片的に歴史の流れと自身が後世に与えた影響を目の当たりにする。大量の映像が男の中に流れ込み本人の意思とは別に思い知らされる。自分の存在を、功績を、評価を。
目の当たりにした彼は、静かに泣いていた。いいや、あえて言うならば歓喜に震えていた。彼と彼の歩んだ障害は確かに時代を変え、彼の苦悩に満ちた人生を洗い流すかのようなものだった。
『いかがかな、少しは喜んでもらえただろうか』
どこからか声が聞こえる。どこか聞き馴染んだ声ような初めて聴くような、心地いいような悪いようなそんな声だ。私から言わせれば、そんなものは邪道であるが今はそんなことはどうでもいい。
男とも女ともとれる声の主は続けて話した。
『これは君へのお礼だよ、君の人生は我々の中でも評判でね。君はいいものを作り出した。退屈な時間の中に娯楽を提供してくれたからね。
さて、前置きはいいか。君を前に言葉で語るなんてあまりに無粋なのはわかっているから、手短に話すとしよう。
君が考えている通り君は死んださ、そしてさっき見せたのは君の後世の話で、ざっと250年分かな?』
なるほど。私は今、主と対話しているのだな。
それにしても随分大盤振る舞いなことだ、私の死んだ未来を見せてくれるなどと
『ああ、君が進行している神とは違うだろうけれど、まあいいか。
話を続けようか。君は後世にも多大な影響を与え、なおかつ我々神々にも娯楽を提供してくれた。その功績を讃えて新たに人生を歩んでもらおうとそう思っているのさ。
早い話、君のことが気に入ったからもう少し生きてみろって話だね』
神々の思考は人智を超えている、よくそんな話をするがまさにその通りだったな。
それならどうしてあのような、いや、考えるのはよそう。
『そうだね、君の思う通り神々の思考は人智を超えるのさ、何事も度が過ぎているからね。
さて、君は多くの試練を乗り越えてここまで来たが新たに人生を謳歌するにあたって恩恵を授けようと思う。
何か希望はあるかな?』
決まっている、私の願いはただ一つだ。どうか神よ、その願いをかなえてくれ。
私の願いそれは――――――――
『そうだと思ったよ。では新しい人生を思う存分過ごしてきたまえ。
音楽の革命児』
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