★7 盗賊
よろしくお願いします。
色んなケースを考えてみたが、
「やっぱり奴らは盗賊だと思う。あの馬車を助けたい、どうかな?」
「私たち、勇者じゃないけど勝てると思う?」
「うん、自信しかないけど。」
「ヒロトがそういうなら。」
俺の根拠のない自信を信じてくれた!勇気百倍だな!
「そうなったら、奴らと殺し合いになる。嫌なら、ここに隠れていて。」
「一緒に帰るんでしょ、一緒に戦うよ。」
「ありがとう。」
「まず、盗賊の奇襲を防がないとな・・・
結菜、手鏡で太陽を反射してその光を馬車に当てられないかな?」
「それなら、盗賊に気づかれなく、警戒してもらえるかもね。」
不審に思ったか、馬車に動きがあった。
慌てて盗賊たちも動き出したので、あわせて俺たちも動き出す。
「結菜、弓や魔法の奴らを頼む。わからなかったら一番近い2人を攻撃してくれ。
魔法を撃ったら隠れていて!」
「・・・わかった。」
気づかれた盗賊が街道へでて、馬車へ向かっていく!
後方から5騎も分散しながら突撃していく!
馬車の方から武装した人たちが迎え撃つ!
俺たちは盗賊に向かって全力で走っていく。
まだ、俺たちに気づかれていない。
結菜が式くんを使い、雷魔法を俺と反対方向から最後尾の2人に撃った。
馬上の魔術師と射手だ。
2人ともよろけて、射手が落馬した!チャンスだ。
射手の頭を蹴り飛ばし、さらに首筋を切り裂き、胸にタッチした。
「通訳」を得たよ!クソ、戦闘系のスキルが欲しいのに!
さらに前に走る。
前にいた馬上で指揮をしていたボスらしき男が振り返った。
派手な装備の30すぎの男だった。
俺は急接近し、たずなを持っている左手に回り込む。
ボスは馬を左旋回して剣を俺に向けようとするが、俺の方が速かった。
片手剣でたずなを両断したので、ボスは大きくバランスを崩した。
その上、俺の剣が足を少しだが切ったので、さらに態勢を崩し頭から落馬した。
ボスの右手から長剣が離れた。
トドメをと思って襲いかかろうとするが、ボスは素早く立ち上がり腰の短剣を抜いた。
俺が躊躇すると、さらに長剣を拾おうとしたが、俺は切りかかり邪魔をした。
短剣に比べ片手剣の方が圧倒的に有利だが、守りに徹せられ
チェーンメイル、手甲を装備しているので、有効打が与えられない。
それどころか、俺の方が少し傷を負ってしまった!
ボスの馬がいなないて、前足を高く上げた!
驚いた俺が少し距離を取ると、ボスは凄い早さで長剣を拾いに行った。
しまった!俺は突撃したが、ボスの方が早く長剣をつかみ、下から振り上げた!
俺は片手剣で何とか受け流し、ボスの左胸に手を伸ばした。
ボスのピンチに戦士が走って来た!逆に大ピンチだ!
ボスは距離を取った俺に向かって吐き捨てた。
「クソが、雑魚のくせに手こずらせやがって。死ね!」
ボスは俺に向かって突きを放った!
距離があったので、単なる空振りだった。何がしたかったの?
「何?」
なぜか驚愕していたボスが悲鳴をあげ、こちらへ吹っ飛んできた!
俺の剣がボスを切り裂いた。
「アウグストをやったぞ!」
遠くの男の大きな声が聞こえた。
盗賊たちが動揺しているぞ!
「ヒロト!」
背中に何か当たり、俺は前に吹っ飛んだ!
熱い、痛い、ダメージを受けたってことだな。
でも、動ける、立ち上がれ!
立ち上がり振り返ると、もう魔術師は馬を走らせ逃げ出していた・・・
それを見た騎馬の戦士が合図をし、盗賊たちはてんでバラバラに逃げ出した。
馬車の武装した男たちが追いかけていくが、俺たちは追いかけなかった。
結構背中が痛い。服は大丈夫かな?
さっき大きな声を出していた赤髪、長身の戦士風の男が俺に近づいてきた。
「お前たちのおかげで助かったようだが、お前たちは何者だ?」
どうも、この戦士の攻撃が飛んできてボスの背中に当たり、
ボスが俺の方へ跳ね飛ばされたらしい。
敵意を示さないように、片手剣を鞘に納めた。
結菜があわてて走ってきて心配してくれた。
「斬られていたじゃない、魔法も当たったけど、大丈夫?」
「結構痛い・・・けど大丈夫だ。
ありがとう、防御魔法を使ってくれたんだろ、おかげで助かった。」
俺の指がボスの胸に届いて「秘技」のスキルを奪っていた。
「秘技」を出すつもりだったんだな!危なかった・・・
今度は中世ヨーロッパ風の地味な格好の40歳前後の男が話しかけてきた。
「助かったよ。私はこの商人のグループを取りまとめているカスパーだ。
変わった恰好をしているが、君たちは一体何者だね?」
俺は黒のジャージで、
結菜は白シャツ、ライトグリーンのカーディガン、インディゴブルーのデニムだ。
俺はともかく、結菜は抜群に似合っているぞ!
そんなことはいわず、前に結菜と相談したとおりに答えた。
「俺たちは、おととい学校の授業中、魔法の転移に巻き込まれ、この森に来てしまったんだ。
2日間さまよっていたら、奴らが待ち伏せしていたんだ。
俺たちも動かずじっと待っていたら、あなたたちが来たんだよ。
俺たちが光で合図を送ってみたけど、それに気づいたんだろ?
それより、ここはどこなんだ?」
「あれも君たちか、おかげで助かったよ。ここはクラウス王国だ。
東へあと1日ほど歩くと、カラカスっていう町に着くが知っているか?」
「・・・国の名前すら聞いたことがないな。」
「そうか、大変だな。君たちのおかげで私たちは全く被害がなかった。
護衛の彼らと同じように報酬を支払おう。
君たちが殺したのはこのあたりで有名な盗賊だ。
賞金も高額らしいぞ。」
「ありがたいがそれより、食べ物をもらえないか。ロクなものを食べていないんだ。」
驚きながらニッコリ笑いカスパーは言った。
「そうか、大変だったな。じゃあ、休憩するか。」
商人が4人いて、彼らの護衛として兵士が10名、冒険者が4人いた。
最近、物騒なので、兵士が演習がてら同行していた。
俺たちに奇襲されたので、盗賊は早々に逃げ出したようだ。
出てきた食べ物は、保存がきくカッチカチに固いパンだけだった。
おいしすぎて、泣けた・・・
読んでくれてありがとうございます。
毎日18時に更新します。
評価いただければ幸いです。