★69 富士谷②
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家の庭に、パジャマを着た愛海とグレイスがいた。
「愛海、グレイス、大丈夫か?」
「ヒロト!」
喜びの声を上げた愛海と盾とメイスを持ったグレイスが相対しているのは、
剣と盾を持つ富士谷ともうひとりの男だった。
俺、イワンとその部下を見たもうひとりの男が逃げ出した。
「イワン、頼む。」
イワンが部下を連れて追いかけた。
富士谷とにらみ合った。
「なんで、万引き野郎に仲間がいるんだ!
なんでお前ごときが先生を名前で呼ぶんだ。
なんで先生がお前ごときを名前で呼ぶんだ!
なんで、なんで!」
今日もキレッキレッだな。
「俺の方が強いのに!俺の方がカッコいいのに!俺の方が賢いのに!
俺の方が凄いのに!俺は勇者なのに!
お前は万引き野郎なのに、なんで、なんでだ!」
凄いな、あんなに弱いのに、まだ自分を勇者だと言っているよ。
思い込みだけは勇者並みだ。
「そうだな、お前は勇者だよな。だからいい仲間を持っていてうらやましいよ。」
「うるさい、黙れ!」
「グレイスに剣を向けたな?もう許さん!」
小さい盾を持ち、剣を振り上げこちらへ襲い掛かる富士谷が叫んだ。
「秘剣、バスタードラゴン!」
弱々しい炎に包まれた剣を軽く躱し、俺は剣を振った。
富士谷の剣を持った腕が地面に落ちた。
富士谷は自分の手がなくなった腕を見た。
その後、剣を持って落ちている手を見て、さらに見比べてから悲鳴を上げた。
「ひー、俺の、俺の、俺の腕が~」
腕をかかえ泣きじゃくる。
イワンたちが逃げた男を捕らえ帰ってきた。
イワンが富士谷を抱え立たせた。
富士谷はうつろな目で懇願した。
「先生痛いんです。助けて、お願いだ、助けて!」
「あなたは2度もヒロトを殺そうとしたわ、罪にふさわしい罰を受けなさい!」
俺のために愛海が怒ってくれている。
「イワン、こいつは王都で貴族に暴言を吐いて捕まっていたんだ。」
「そうなのか。ヒロト、明日の朝、役場へ来てくれ。」
愛海が俺に抱き着いてきた。
「ヒロト、どうしてここに?」
「なんか胸騒ぎがしたから帰ってきたよ、2人ともケガはない?」
グレイスも俺に抱き着いてきた。
「ないよ。私一人でも大丈夫だったのに・・・」
「そうだね、グレイス。
だけど、もし指1本でも触れられたらって思うと、じっとしていられなかったんだ。」
「ありがとう、うれしいよ。」
「無事でホントによかった。」
俺は右に愛海、左にグレイスを抱きしめた。
11月14日
朝一番に愛海と役場に行き、これまでの事情を説明した。
すぐに解放されたので、西門に行く。
イワンは休みだったので、ネヴィルにお礼を言って、結菜たちを迎えにいった。
お昼ごろ、結菜たちと出会った。
子どもたちも無事でよかった。
薬草をギルドに差出し、報酬をアレクに渡した。
「ありがとうございます!」
11月16日
バカンデール男爵に呼び出されたので、結菜と愛海と向かった。
富士谷のことだった。
奴は王宮で監禁されていたが、何故か扉が開き、そこに剣、防具、金が置いてあったそうだ。
王宮から逃げ出し、先日、この街へたどり着きウロウロしていたら、
教会で愛海を見つけ、ことに及んだ。
ちょうど王都から指名手配書が届き、その指示に従いすぐに処刑された・・・
だれが、奴の脱走を手助けしたのか?
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