★59 覚悟
よろしくお願いします。
俺の左手はアイテムボックスの中の胡椒をつかみ、卯月とカリギュラに向けてバラまいた。
油断していた卯月とカリギュラの目と鼻がやられ、顔を背けた。
俺の剣がカリギュラの頭と卯月の右手を貫いた!
「轟っ!」
カリギュラが吠えた。
ドキッとしたが悲鳴のようで、俺は無事だった。
突如現れた網中がクナイで卯月の右目を潰した!
網中にカリギュラが小さめの黒い炎を放った!
網中が両手で印を結ぶと丸太に替わった!
網中は、渾身の力で卯月のカリギュラの首がついた右腕を切り落とし、
さらに卯月を斬ろうとした。
ゴツン!
もう一匹の犬、ルドルフが網中の首筋に噛みついた!速い!
俺がルドルフに鉄球をぶつけると、ルドルフは網中から離れ卯月を守る態勢をとった。
その隙に卯月は左手で俺の剣がささったままのカリギュラの首を抱え、
後ろに下がって回復しようとする。
結菜が倒れた網中を助けに行く。
俺はアイテムボックスから予備の片手剣を取り出した。
「やってしまえ。」
卯月がルドルフに声をかけると、ルドルフは俺に向かうそぶりを見せた後、
南館に回復魔法を使ったもののあまり回復せず途方に暮れていた量山に向かった!
「ヒッ!」
悲鳴を上げる量山!
ルドルフに向けて「猛進」のスキルを使って急接近したが、躱された!速い!
俺を避けたルドルフに向けて結菜が雷魔法を当てた!流石だ!
ルドルフが大ダメージを受け、動きが急に悪くなった。
「影剣!」
ルドルフが死んだ時、卯月の右手にはカリギュラの首が復活し、右目も元どおりとなっていた。
卯月は、カリギュラの頭に刺さっている剣を左手で引き抜き投げ捨てた。
「よくもやってくれたな、万引き野郎が!
指を1本ずつ喰ってやる!
その後は手足を少しずつ喰ってやる!
喰われている自分の姿をじっと見せてやる!
俺が満足するまで死なないようにちゃんと面倒見てやるからな!」
もう油断はしてくれそうになかった。
回復のために力をかなり消耗したはずだ。
だけど力の差がまだまだありそうだ。
切り札も使ってしまったし、ジュエリーアイテムもない・・・
絶望感が俺を襲う。
「結菜、愛海、逃げろ!」
「「ヒロト!」」
「はっはー!お前たちの臭いは覚えた!
別の街に行っても、雨が降っても、必ず追いついてやるぞ!」
卯月が勝ち誇って叫んだ。
「ヒロト・・・」
結菜が絶望的な声を出した!
結菜を守れ!
負けちゃダメだ!
いや、勝つんだ!
なんとしても勝って、みんな生き残るんだ!
どのスキルをどう使う?
まずは挑発だ!
「いや、大魔王様は流石に強いね。
このただの泥棒では右手を傷つけることしか出来なかったよ!」
わざと明るい声を出すと、卯月は激高した!チョロい!
「この雑魚が徹底的にいたぶってやる!」
「気を付けろよ!本気をだすと雑魚だから死んじゃうよ、大魔王様!」
「!」
プツンとキレた音がした!
卯月は喚きながら、カリギュラを大きく振り上げた!
俺はアイテムボックスからマントを取り出し、卯月に向かって広げた!
「轟!」
カリギュラが吠えた!
俺は隠密を使いながら右に躱し、下手で鉄球を卯月に向かって投げた!
卯月は俺がまたコショウを投げてくると勘違いして、自分とルドルフの顔を背けていた!
バカめ、同じ事を続けるかよ!
鉄球が腹に食い込み、卯月はうずくまってゲーゲー吐き出した!
しかし、俺の左手が鉛のように重い!呪われたのか?全く動かない!
くそっ、スキルを盗んでやろうと思っていたのに、ダッシュ出来なかった・・・
マントを左手で出しながら、防御魔法を連射していたのだが・・・
「ヒロト!」
結菜が悲鳴を上げながら、俺の左手に回復魔法をかけてくれるが、全く回復しない!
くそっ!
卯月はアイテムボックスから回復薬を出してむせながら飲み干し、
口を拭いながら立ち上がった!
「雑魚のくせに!雑魚のくせに!雑魚のくせに!雑魚のくせに!」
動かず、重すぎる左手を切り捨てた。
「ぐっ」
「ヒロト!」
呪いのせいか、痛みはそれほどでもないな・・・
血も出ないし・・・
素早く動けるようになったぞ!
「結菜、アイツをやっつけてやるからな。
下がっていて。大丈夫だよ。」
涙をぼろぼろ流している結菜を後ろに下がらせた。
「雑魚はお前だろ?」
俺の言葉に卯月は唖然としていた!
そりゃ、自分のことを大魔王様だと信じ切っているからな!
卯月の表情が怒りに満ちてきた!
さて、どうやって戦う?
突然、後ろから巨大な力を感じ、振り返ると桐生が剣を持って立ち上がっていた!
腹の穴は塞がっている!まだふらついているが・・・
「覚悟が足りなかったよ。
次があるって思っていた。今しかないのにな。
ありがとう、思い上がりを正してくれて。」
桐生が穏やかに卯月に声をかけ、勇者の剣を構えると剣が青みを帯びた。
卯月に向けてふわりと動き出す桐生。
卯月のカリギュラの牙が小さく鋭く振り下ろされた勇者の剣をまた受け止めたが、
今度はゴキッと変な音がしてカリギュラの牙の破片がこぼれた!
「なにぃ!」
動揺する卯月。
卯月は距離を取って今までの倍の大きさの黒い炎をカリギュラが吐き出した!
「ブラックホール・マキシマム!」
「ブルーフレイム!」
桐生が剣を振るうと青い炎の柱が卯月に向けて放れた。
その青い炎は卯月の黒い炎を飲み込み、卯月の頭だけ残して、卯月の体、
カリギュラの首もなくなり、その向こう100メートルを遙かに超えて、
樹木は燃え尽き、土の山や岩までなくなっていた!
卯月の頭が地面に落ち、こちらを向いた。
ニヤリと醜悪に笑い、呪いの言葉を吐き出そうとする。
「白昼夢」
愛海が言霊を使うと、卯月の顔は弛緩し、目はうつろとなり、
少しずつ崩れすべてがなくなった。
和家佐が神楽を舞い、土地の穢れを祓った。
卯月が死ぬと俺の左手、船見と南館の体の色は普通になり、回復魔法で無事回復した。
「大林、助かったよ、ありがとう。意外と強いんだな。」
桐生が俺に右手を差し出した。
「小細工が役に立っただけで、すぐに殺されていたよ。
こちらこそ、助けてくれてありがとう。
凄い技だな、あんなの防ぎようがないよな。」
俺たちは堅く握手した。
青白い顔色の船見が近寄って来た。
「・・・おかげで助かった。今まで馬鹿にして悪かった。」
「いや、気にしていないから。大丈夫か?」
「ああ、まだちょっと痛いけどな。」
船見が答えると和家佐が口を挟んできた。
「舐めてあげたら、もっと早く、完璧に治るんだけど、英雄がダメっていうから。」
「えっ、舐めるの?」
「うん、ペロペロと舐めるともう、どこでも超回復だよ!」
俺も舐めてほしいなって思っていたら、左右のほっぺを結菜と愛海につねられた・・・
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