★58 呪禁師②
よろしくお願いします。
「卯月!」
桐生が激しく怒っていた。初めて見る姿だ。
卯月が数歩下がり、イヤらしい笑顔で桐生を見た。
「桐生、お前、勇者だってな?お前とも会おうと思っていたよ、殺してやろうってな!」
南館が飛び出し船見の体を後ろに運んだ。
血だらけの船見に和歌佐が近づき、回復魔法をかけているのか体中をさすっている。
愛海も船見の回復に向かう。
「コイツらは犬しか喰わなかったけど、明日からは人しか喰わなくなるかもな?」
ニヤッと俺たちを見ていやらしく笑う卯月。
俺たちを犬のエサと思っていやがる!寒気がしてきた!
余裕で立っている卯月に向かって桐生は突進し、渾身の上段からの一撃を放った。
しかし卯月は軽く躱し、カリギュラの牙で逆に攻撃を始めた。
桐生は勇者の剣で立ち向かう。
カリギュラの牙が長くなり、勇者の剣と何度もまともにぶつかっていた。
「轟!」
カリギュラが至近距離で吠えたが、量山が桐生を防御魔法で守った。
「ふん!勇者のくせに守られて恥ずかしくないのか?」
卯月がバカにすると桐生の剣が大ぶりとなった。
その一瞬の隙をついてカリギュラの牙が鋭く伸び、
桐生の鎧を貫通して腹の真ん中を貫き、大きくなった!
桐生が悲鳴をこらえながら、剣を振るうとカリギュラの牙は離れていったが、
桐生は腹に開いた大きな穴から大量の血を流し、どうっと倒れた!
桐生にトドメをさそうとする卯月に向かい、南館が立ちはだかった。
「回復を!」
南館の叫びよりも早く、悲鳴を上げながら和家佐が船見を捨てて桐生の回復に向かう。
兵士たちは桐生を後ろに移動させ、その前に立ちはだかった。
和家佐が泣き叫びながら桐生にしがみついていた。
卯月は南館に対して猛攻をかけているが、南館は巨大な盾で必死に防御していた。
卯月が南館に集中しているのをみて、量山が卯月に向かって火魔法を放った。
1メートルほどの火球だ。
こんなデカいの初めて見た!
卯月はすぐに気づき、またカリギュラの口が開いて黒い炎が放たれた。
光る球と黒い炎がぶつかったが、光る球は霧散し、黒い炎は量山がもといた場所を通過し、
大木に当たってその幹がなくなり、どうっと大木が倒れた。
魔法を放ってすぐに移動していた量山は無事だったが、あまりの力の差に呆然としていた。
俺は隣にいた網中に尋ねた。
「網中、気配を消せるか?もし俺が戦うことになったら、なんとか卯月の隙を作る。
奇襲をかけて犬の首を落としてほしい。でも俺がやられたら、そのまま王都へ報告してくれ。」
「・・・分かった。」
網中は後ろに下がり、消えた。
南館は卯月に初めて攻撃をしかけた。
「如意棒!」
棒が巨大化して卯月の頭を狙ったが、カリギュラの牙で受け止めた!
魔法だけじゃなく、やはり物理の攻撃も効かないのか!
「それだけか!」
卯月は嘲笑すると、南館を殴りつけようとカリギュラの首を大きく振りかぶった。
南館は盾をしっかり構えたが、
「轟!」
カリギュラが盾の手前で吠えると南館も体が黒くなり、体中から血を吹き出し倒れた!
やはり、盾では防げないのか!
量山が南館を助けに走った。
卯月は桐生にトドメを刺そうと走り出した。
「蛇縛!」
俺の魔法で卯月は足が縛られ、盛大にコケた。ざまあみろ!
卯月が激怒して俺を見た!
「雑魚が、先に殺してやる!」
「結菜を置いて先に死ねない。」
俺の言葉に卯月は意表を突かれたようだ。
毒気を抜かれた卯月が俺に話しかけてきた。
「・・・友道とどんな関係なんだ?」
「恋人だよ。」
俺は結菜を守る位置に立った。
卯月は首を振ったあと、怒りだした。
「お前が?友道の恋人?笑わせるな、寝言は寝てから言え、万引き野郎!」
卯月が結菜の反応を伺う。
「・・・本当なのか、まあいいよ。すぐに自分から別れるって言わせてやるから。
いつ言うかな?まずは手の指を1本ずつ、次は足の指だな。
でも手の指、3本ほどでみんななんでも言うこと聞いてくれるんだよね。
お前はもっと頑張ってくれよ。」
「魔王になってどうするんだ?」
強烈な寒気を感じながら、時間を稼ぐために興味はないが尋ねてみる。
「ダ・イ・マ・オ・ウ!だ、聞こえなかったのか、バカ!
決まっている。俺のやりたいようにこの世界を作り変えるんだ。
すべての人は俺にひれ伏し、すべての物は俺のものだ!
いい世界に来たよ!
向こうじゃ俺はただの気持ち悪い犯罪者だ。
生き物をなぶり殺す喜びはあるが、ただそれだけだ!
だけど、ここじゃ、俺の喜びすべてが力に変わる!
俺が最強だ。
最高だ!全部、俺のものにしてやる。
全て俺の好みに染めてやる。
全ての人は俺の奴隷だ。
友道は俺の1番奴隷にしてやるよ、うれしいだろ?」
結菜に熱い視線を向ける。
結菜がぶるっとふるえて俺の後ろに隠れた。
この長広舌にしらけきっている俺を見て、卯月は吐き捨てた。
「万引き野郎、お前は邪魔だ、なぶり殺しだ!」
「死にたくないけど、恋人は守らないといけないだろ?」
俺は居合い抜きの構えをした。
結菜がこっそり式くんを飛ばしていて、卯月の死角から雷魔法で攻撃した。
卯月はその式くんに向けてカリギュラの首を向けた。
雷と黒い炎がぶつかりまた相殺された。
暗闇の中で式紙が見えるのか!
「だめだよ、そんなに魔力を垂れ流しちゃバレバレだよ。」
卯月は結菜に向かって愛おしそうに話しかけた。
ドン引きする結菜。
卯月が笑顔を顔にはりつけたまま、右手を後ろに引きながら俺に突っ込んできた。
俺の渾身の居合い切りはなんなく躱された。
「遅いんだよ、雑魚が!」
嘲笑する余裕を見せてカリギュラの首が俺の目の前にきた!
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