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★4 明け方

よろしくお願いします。

4月10日


「お父さんが万引きで捕まったの。」

母親が情けなそうに声を出した。


「万引き犯の息子じゃねえか?よくも学校へ来られるもんだな?うちはトップの進学校だぞ!」

俺が教室に入ると、対馬宗次郎が大声で俺をバカにした。


「いやー。びっくりしたよ。新聞に知っている人が載っているからさ。

びっくりして口がすべっちゃったよ。」

富士谷勇気が得意げに話していた。


「なんだよ、また万引き犯と一緒のクラスかよ!」

俺と肩を組んだ舛水三典が吐き捨てるように言い、俺の太ももに膝蹴りをしていた。


「・・・泥棒の靴を盗むって上には上がいるもんだね。」

俺が自虐的に言うと、

「大林君は泥棒なんかじゃないよ。私のただの同級生だよ。」

友道結菜がきっぱりと言った・・・




寒くて目が覚めた。夢の中だけでなく涙がこぼれていた。

もうすぐ夜明けだな。


結菜が眠っていた。

しょうがないよな、異常な状況で疲れ切っていたからな。

結菜にジャージをかけ、焚火に枯れ木を加えた。


結菜とは3年続けて同じクラスだ。

初めて見たときは雷が落ちたよ。

フォーリンラブサンダーだ。

まあ、なんにも起こらず今に至っているけど・・・

眠っている姿も超可愛いな、写メ撮りたい・・・


夜明けまでの1時間ほど、色々試してみよう。



まずは片手剣と両手で持つ長剣を振り回してみたら、片手剣は上手に扱えるが長剣はぎこちない。

泥棒は長剣を使えないのかな・・・


次はパーティだ。

頭の中に俺がリーダーの図が浮かび、結菜をメンバーにしてみた。

おお、見なくても結菜がどこにいるか分かるぞ!

ただ、その他にパーティのメリット、デメリットは分からなかった。


「ごめんなさい、眠っちゃって・・・」

「起こしちゃった?おはよう、体調はどう?」

申し訳なさそうな結菜に笑顔で答えた。


「疲れはずいぶんましになったよ、でも本当にごめんなさい。」

「気にしないで。大丈夫だったしね。」

「ありがとう・・・隣に行っていい?」

「もちろん、どうぞ。」

結菜が隣に腰を下ろす。


「かなり寒いね。このジャージありがとう。暖かかったよ。」

ジャージを返そうとする結菜に、

「そのままでいいよ、俺は大丈夫。」

誰でもそう答えるだろ?


「どう、どれくらい魔力回復した?」

「完璧だね。きっと寝ていた方が回復しているね。」

「じゃあ、昼寝とかした方がいいのかな?」

「魔法で戦ったら試してみようよ!」


結菜が俺に体をぴったりと寄せて呟いた。

「このほうが暖かいね・・・」

ドキドキするし、いい匂いがして、クラクラする。

えっとどうすればいいんだ?

まずは手をつないでみて、その次は抱きしめて・・・



ガサッと目の前で音がした。

そいつは背も胸板も俺より一回りデカく、長剣を持っていた。

顔は豚と人をまぜ、できる限り凶悪にした感じだ、オークか?

「オークリーダーよ!」

声を出した結菜を見て奴は目を輝かせた。結菜が悪寒に震えた。


立ち上がり剣を構えた俺のことを気にせず、近づいてきた。

俺に隠れながら結菜は後ろへ下がり、さらに木の陰に体を半分隠す。

俺はクイックモーションで、石を投げたがまだ距離があったからよけられた。

そこへ結菜の雷魔法が炸裂した!


一瞬止まったので、俺はとびかかった。

奴は剣を大ぶりに振ったが、俺は落ち着いて躱し足を切った。

しかし浅かったようで、傷を気にする様子はなく、まだこちらを狙っている。


少し距離をとる。1分稼がねば・・・また石を用意し、剣を構える。

結菜に向かおうかと見えたので、剣を振りかぶり、注意を引き付ける。


こっちは短い片手剣、奴は長剣、腕も奴の方が長いので、圧倒的に不利だ。

パワーも凄そうだ。

ただ防具はないので、どこでもダメージを与えられそうだ。

お互い様だけど・・・


奴は俺を見てニヤついた。剣の使い方がド素人に見えたのだろう。

長剣をブンブン振り回し、俺を追いかけてきた。


避けると大木にぶつかってしまった。

オークリーダーがさらに剣を振り下ろしてきたため、思わず片手剣で長剣を受けてしまった。

パワーの違いで、俺の手から剣が弾き飛ばされた!

あっと思った一瞬の隙を突かれ、蹴られた。

なんとか左腕を降ろして腹への蹴りを防いだものの

ゴロゴロと転がり、木にぶつかって息が出来なくなった。


すぐに立ち上がるが、左腕が痛い!

もうオークリーダーは結菜を追いかけていた。


「待て!」全力で追いかけ、オークリーダーに後ろから石を投げた。

かすりもしなかったが、オークリーダーは煩そうに振り返った。


俺に憎悪を向け、接近してきたオークリーダーが大きく長剣を振り上げた!

振り下ろされた長剣を「回避」のスキルを使って間一髪躱し、左胸に右の掌底をぶち込んだ!

びくともしなかったけれど、「剣技」のスキルを奪うことが出来たよ!


さらに長剣を躱して距離を取った。

オークリーダーは、自分の長剣を見て不思議そうな顔をしている。

これまでだったら必殺だったのに、ヘロヘロの振りで逃げられたからな!


「コレを!」

結菜は片手剣を俺に方へ投げた。

オークリーダーから俺の片手剣の方へ逃げていたのだ!

「ありがとう!」


俺は片手剣を拾って構えた。「剣技」で逆転した。


素早さは俺の方が上回っているので、躱しながら手足を切り裂いていく。

もうすでに大ダメージを与えていて、もうすぐ倒れるはずだという思いもあって、

まだ奴の一撃が怖く、大きなダメージが与えられない。


結菜が俺にうなずいて、二度目の雷魔法を放った。

俺は飛び込み袈裟懸けに切り裂くとオークリーダーは倒れた・・・


「大丈夫?」

「ありがとう、助かったよ!」

近づいてきた結菜をつい抱きしめてしまった。いい匂いがする・・・

はっと気づいて、すぐ体を離した。


「ゴメン、つい・・・」

「ううん、こちらこそだよ、ありがとう!」

頬が赤くなっているが、抜群の笑顔で答えてくれた。


俺に回復魔法をかけながら結菜が尋ねてきた。

「ねえ、オークリーダーってどの位強いのかな?」

「ゲームじゃ雑魚じゃないけど、中ボスよりは弱いよね。」

「・・・私たち、無敵の勇者じゃなかったんだね。」

「大丈夫だよ。今回、「剣技」のスキルを盗んだから、かなり強くなったしね。」

俺の強がりでも、結菜はホッとしたようだった。


痛かった左腕は結菜にナデナデされ、たちまち完治した!

「ありがとう!完璧に直ったよ!ホントにすごいね!」

結菜がナデナデしてくれるのなら、もっと怪我してもいいかな?


「今日はどうするの?」

「まずは魚を捕って、それから街を探す。東へ向かうのはどうかな?

途中で、魔物を退治しながらだね。それでいいかい、友道さん」


「うん、でも1つだけダメね!結菜って呼んで!」

「結菜ちゃん?」

「結菜!」

「じゃあ結菜、俺のことはヒロトで!」

「わかった、今日もよろしく、ヒロト!」

ドキドキで俺を殺す気かー


読んでくれてありがとうございます。

毎日18時に更新します。


評価いただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒロインちゃん? 可愛いな。 [一言] 主人公、戦っていけばある程度までは直ぐに強くなりそう。
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