★35 暗殺者と噂話
よろしくお願いします。
7月11日
二日間の休みの後、いつもどおり4泊5日で出発だ。
西門からでて、街道を西に行く。
「どう?」
結菜が前を見ながら話しかけてきた。
「いや、尾行はないようだ。」
「まあ、よかったじゃないデスか。」
「一応、少し遠回りしていこう。」
昼食休憩になった。
「なんか気持ち悪いんだよな、つけられている気がする。」
「私が調べてみるわ。」
結菜が何か始めた。
コックリさんじゃないか!
「いたわ。一人隠れている。後の木の陰ね!」
昼食終われば、対決だ。
もと来た道をゆっくりと歩く。あの木の陰か。
アイコンタクトをしてから、石を全力で投げてみた!
だれかが逃げ出した。
ダリヤの矢が背中に当たった!
小柄な男が逃げるのを諦め、こちらを見た。
戦う気だ!
俺が対峙すると右手がヘンな動きをした。
とっさに左腕を前に出すと、何かが小楯に当たった!
「ヨッシャ、ラッキー!」
小柄な男が、左手で顔を隠した?
吹き矢が飛んできたが、今度は避けて奴に切りかかった。
剣技も回避もこちらが圧倒していたので、左胸をぶん殴って
さらに剣の腹でこめかみをぶん殴って気絶させた。
後ろ手に縛り上げ、愛海が鑑定した。
ヘルムート 暗殺者。
・・・暗殺者って、もしかしてさっきの暗器、毒塗っていたりする?
投げられていたのは十字手裏剣で、やはり毒が塗られていた。
危なかった・・・
慎重に身体検査を行った。ポケットに罠が仕掛けられていた!
慎重に調べてよかったよ、ホントに!
「隠密」のスキルが進化した気がする!
試してみるとこれまではダリヤの索敵に見つかっていたのだが、
見つからなくなっていた!流石だ!
隠密が使えなくなり、これからのヘルムートは悪さが出来まいよ!
後ろ手に拘束してから、ヘルムートを小突き回して起こした。
剣を抜いて切っ先を鼻に向けた。
「おい、ここで死にたくなかったら答えろ。誰に頼まれたんだ?」
「・・・」
「ギルド長だろ?」
「・・・」
全く反応がない。
剣を右目に突き刺した。
「ぎゃー」
結菜と愛海がびくっと反応したが、殺されかけたからな。
「左目を開けろ。最後の景色を見ろ。」
冷たく言い放つと、ヘルムートもビクッと反応して左目から涙を流しながら、
ぜーぜーと言いながら目を開けた。
「最後だ、選べ。
答えて右目を治してもらうか、答えずここで死ぬか。」
「ゲ、ゲイスだ、ギルド長から頼まれたんだ!」
西門でネヴィルに伝えると、部下が走って報告に行き、
ネヴィルが俺たちと一緒に役場に向かった。
役場では、バカンデール男爵が俺たちを待っていた。
男爵は、この街の行政と裁判を司さどっており、
40くらいのちょび髭で、切れ者っぽい雰囲気を持っていた。
ヘルムートはアウグストの一味とのことだった。
もうしょうがないので、ダンジョンを見つけたこと、
ギルド長と副ギルド長にだけ話したことなど全部伝えた。
「盗賊団を壊滅させただけでなく、ダンジョンまで見つけたのか。
そしてギルド長の犯罪まで!素晴らしい!感謝しきれないな。
ヤツはかなり強いらしい。君たちも逮捕に協力してくれ。
ああ、それが終わったら、盗賊団を壊滅させた三人から武勇伝を聞きたいから、また来てくれ。」
男爵は、俺たちの返事を聞かずに立ち上がった。
ネヴィルとその部下9名と一緒にギルド長の執務室に突入した。
「ゲイス、お前を逮捕する!」
ネヴィルが宣言すると、ギルド長は慌てて立ち上がって大きなイスを投げつけてきた!
そして真後ろにあったドアを開けて逃げ出した。
ネヴィルがそのドアを開けようとするが開かない!
ヤツが逃げだす専用でもう開かないのか!
急いで外へ出るとギルド長が馬に乗って逃げ出していた。
もうかなり向こうだ!
逃げられた!どうする?
ダリヤが矢を放つと馬の尻に当たって、馬が暴れ、ギルド長を振り落とした。
「凄いわ、ダリヤ!」
思わず愛海がダリヤを褒め称えた。
「フフン、当然デス!」
ギルド長はすぐに立ち上がったが、馬は遠くにいってしまったので、
東門へ走り出したが、遅い!
すぐに追いついて、14名で包囲した。
「ゲイス、諦めろ!武器を捨てろ!」
ネヴィルが結菜の前だから、ビシッとポーズをキメてから、声を張った。
「若造が偉そうに!やってみせろ!」
つばを吐いて、メイスを滑らかに振る舞わしてから構えた。手強そうだ!
体の色が赤黒くなってきた!なんだ?
ネヴィルが剣を振るうとギルド長はメイスで受け止めた。
そこに兵士たちがギルド長に剣を振り下ろし、あるいは突き刺した!
しかしその体からは金属音を響かせ、剣を弾いた!
ギルド長はメイスを振り回して、近くにいたネヴィル、兵士4名を弾き飛ばした!
「ヒロト、全部お前のせいだ!殺す!」
メイスを振り回された。なんとか躱し、スプリガンの片手剣で受け流した。
体は鉄のようになっているのか?
この剣で切ることができるか?
時間をかけたら、解除されるのか?
ギルド長の後ろから3名の兵士が同時に剣で渾身の突きを放った!
だけど、やっぱり金属音がしただけで、ヤツは全くダメージを受けていない!
ギルド長はメイスを長く持って掲げ振り回すと3名の兵士が弾き飛ばされた!
さらにメイスを振り上げ、兵士にトドメをさそうとしたが、
ダリヤの矢が当たって気をそらせた。
「ヒロト、魔法で攻撃する?」
「いや、もう少し待ってくれ。
愛海に答えた。
結菜に回復魔法をかけてもらってネヴィルが復活した。
「ネヴィル、挟み撃ちだ。」
「おう!」
ネヴィルと2人で攻撃し、何度か剣がヤツの体に当たるのだが傷はつかない!
「ネヴィル、こいつはたった1人だ。持久戦でいくぞ!」
「おう!」
「・・・」
ギルド長がイヤそうな顔をした。
とかいいながら、ギルド長がメイスをネヴィルに向けたときに突撃した!
左手をヤツの左胸に伸ばす!
メイスの柄がグンと引き戻され、俺の腹に突き刺さった!
後ろに自ら吹っ飛んで、衝撃を少し減らした。
「ヒロト、大丈夫?盗めた?」
結菜が回復魔法をかけてくれてすぐに立ち直ったけど・・・
奪ったスキルは「馬術」だった!
なんでだよ!どうしてだよ!
秘技か、棒術を奪えよ、チックショー!
くそっ、やってやるよ!
覚悟を決めて、自然体で立った。
ギルド長はネヴィルをもう一度弾いたあと、こちらを向いた。
「小僧、死ね!」
メイスを振り下ろした!
間一髪躱して、剣を振るった!
ヤツはメイスを振り上げようとしたが、メイスは動かなかった。
ヤツの左腕は両断されていた。
スプリガンの片手剣、凄い切れ味だ!俺の剣技、すげー!
「あ、あ、あ」
ギルド長は呆然と左腕を見ていたが、
体の色が元通りの色に戻って、血が流れ出した。
「て、て、手を、手を直せ!は、早く!」
ギルド長が俺たちを見回して喚き散らした。
うんざりしながら指摘する。
「それが人にモノを頼む態度か!」
「ああ、申し訳ありません。お願いです!
ど、どうか、私の手を治してください!ど、どうか、お願いです!」
ギルド長が俺たちを拝みだした!
拘束されたあと、結菜が手を治すと、小突き回されながら連行された。
「ヒロトさん、凄いデス!鉄を斬るなんて!」
ダリヤが両手を組んで、憧れの目で俺を見ている!
「ま、まあな。俺、出来る子だから!」
俺がテレテレしていると結菜が冷たい口調でツッコミを入れた。
「弾きとばされていたけどね。」
「斬れたのは結菜のおかげだよ。ありがとう。ダメージが一瞬でなくなったからね。」
ヘラヘラした態度を改め、キリッとしてお礼を言った。
「う、うん、カッコ良かったよ・・・」
結菜が下を向いて、小さな声でぼそぼそなにか言っている。
「誰かさんは見ていただけデスネ!」
ダリヤが愛海を横目に見ながら嫌みを言った。
あわわ!なんてことを!
「愛海の魔法がまだ残っていたから、俺は全力を出せたんだよ。
愛海、ありがとう。」
慌てて口にした。
愛海とダリヤがにらみ合った!
お互いにべーって舌を出した!
息ピッタリだな!
もう一度、4人で役所に赴くと、ダリヤを置いて男爵の部屋へ案内された。
男爵の執務室は割と普通だった。
「さて、君たちに王都のちょっとした噂話を教えよう。
少し前、都の魔術師が異世界から勇者を召喚した。」
ぎょっとしたが、表情にださないよう気を付ける。
「一人だけ召喚したつもりが、5人も召喚してしまってね。
勇者以外の4人も滅茶苦茶強いらしい。
みんな17歳で、君たちと同じような黒髪、肌の色をしているそうだよ。」
男爵が紅茶に口をつけ、俺たち三人を見回した。
「まあ、噂だけどね。ところで、ダンジョンの位置は教えてくれるよね。」
「分かりました。ギルドに伝えます。」
ダリヤと合流し、家に帰った。
俺の部屋に、結菜と愛海がやってきた。防音魔法をかけてもらう。
「やっぱりクラスのみんなもこっちに来ていたんだね。」
俺のベッドに腰掛けながら、結菜が口火を切った。
「教室の真ん中から光っていたから、
その勇者は、クラスの真ん中にいた桐生ってことかな。」
桐生英雄、うちの野球部のエースで4番だ。
コンスタントに140kmの速球を投げているプロ注目のピッチャーだそうで、
顔もカッコいいもんだから、校内だけでなく、校外のファンもメチャクチャ多い。
秋の大会ではもう少しで甲子園にいけそうだった。
負けたのは1年の時、俺と同じクラスだった田中がエラーをしたからだった。
田中が、桐生に謝ったところ、
「気にするなよ、お前のおかげで勝った試合もあっただろ。」
そう答えた桐生に、田中は惚れてしまったそうだ。
ちなみに、田中のおかげで勝った試合はなかったそうだ。
勉強もできるし、完璧な奴だから「勇者」にふさわしいのだが、
桐生だけ呼べって話だよ。
今度は愛海が話し出した。
「そうね、なんでこの世界に呼ばれたのかしら?どう思う?」
「魔王が復活するので、それを倒す勇者を呼んだってことじゃない?
それより桐生達と合流するかどうかだけど・・・」
俺としては、桐生達には会いたくない。
だって勇者だぜ、結菜や愛海が靡いちゃうかもしれない・・・
「王都までは1ヶ月かかるし、旅は安全じゃないわ。行った先での待遇もわからないしね。」
「桐生君たちは魔物と戦っているってことよね。私たちと一緒じゃない。」
おお、二人とも行きたくないようだ。
「じゃあ、行くのはまた今度で。男爵は何を思っているのかな?」
さっさと決定し、次の話題を出す。
「私たちに恩を売っているつもりじゃない?」
「そうね、役に立つなら黙っていてやるみたいな・・・」
「なるほどな。あと、ダリヤとかに俺たちのことを言うかどうかだけど・・・」
「ダリヤには言おうよ。仲間じゃない。」
「そうね、でもフォーバルたちにはまだ内緒かな・・・」
「そうだな、そうしよう。あっ、ダリヤの奴隷は?」
「「そのままでしょ。」」
キビシー!
読んでくれてありがとうございます。
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毎日更新します。




