★12 向こうの俺
よろしくお願いします。
「なんだ俺じゃないか?俺もユウナを犯しにきたのか?俺の後ならやらせてやるよ。」
そろりと向こうの俺がつぶやいた。
「結菜は俺が守る!」
「ふん、ちょうどいい。俺を殺して、俺にすべての罪を着せてやるよ。」
いいながら向こうの俺が長剣を抜いた。
イスマが魔法で変装?整形?しているのか?
「サーチライト」
俺は生活魔法を心の中で唱えた。
向こうの俺が眩しさに手をかざした瞬間、隠密のスキルを作動させ、少し横に動いた。
向こうの俺はキョロキョロしている。
よしっ、俺を見失っているぞ。
俺は大木の上に登ることにした。
「跳躍」と「木登り」のスキルが役に立ったよ!
向こうの俺はいらだたしげに長剣を振り回している。
攻撃するときには隠密が切れてしまうので、チャンスをうかがう。
向こうの俺は、俺が枝の上に隠れている大木に近寄って来て、慎重にその周辺を探している。
向こうの俺の後ろに小石を落とした。
その音に向こうの俺は素早く反応し、後ろに向かって横殴りに剣を振った。
ガツンと大木に長剣が食い込んだ瞬間、俺は向こうの俺に向かって飛び降りていた。
向こうの俺はすぐに俺に気づいたが、長剣を振るう前に、俺の片手剣が頭を両断した。
血しぶきをあげて向こうの俺が倒れた。
遠くで兵隊が異常を感じたか騒ぎ始めた。
俺は向こうの俺の心臓に手を当てた。
「変装」のスキルを得た!変装なのか、コレ!
使える時はあるのかな?
また隠密のスキルを作動させ、すぐにその場所を離れた。
照明の魔法を使って兵士たちが警戒範囲を広げていた。
「おーい、誰か倒れているぞ、大木の下だ!」
兵士たちが近寄っていく。
「冒険者のヒロトじゃないか、死んでいるぞ!」
「うそ!」
結菜の声が聞こえた。
「ヒロト!」
結菜の悲痛な声に向かって、「呼んだ?」俺がのんきな声を出して、近寄っていく。
結菜が不審そうに俺と死んだ俺の顔を見比べている。
「うわっ、俺?ホントに俺が倒れている?どうなってんの?」
俺の演技はしらじらしくないかな?
「あっ」
倒れている向こうの俺の顔が少しずつぼやけてきた。
「顔が変ったぞ、イスマだ!魔法だったのか?」
兵士が興奮した様子だ。
やはりこの魔法は珍しいのか!
「ヒロト!」
目に涙を浮かべた結菜が俺に抱きついてきた。
うーん、良い匂いがする!
「ありがとう、心配してくれて。」
ぎゅっと抱きしめたいが、背中をポンポンと優しくたたいた。
「イスマの顔がヒロトの顔になっていたということはどういうことだ?
そもそも誰がイスマを殺したんだ?」
「何かの罪を俺になすりつけるつもりだったのかな?」
俺が半分だけ答えると、イワンが俺を見たがすぐに視線をはずした。
弱いって思われているからな!
結菜が俺の手を掴んで、人のいないところに連れて行き、小さな声で尋ねた。
「どういうこと?イスマが私を襲おうとして、ヒロトがやっつけたっていうこと?」
「うん、結菜を襲おうとしていた。俺の顔だったからビックリしたよ。」
結菜の目を見て答えると、結菜は下を向き、手をつないだままだったことに気づき、あわてて手を離した。
ああ、離されちゃった!
「また助けられちゃったね。」
「結菜には一昨日助けてもらったし、これからたくさん助けてもらうよ。」
「そうね、一杯助けてあげるからね!」
いつものまぶしい笑顔がもどってきた。
「好きだ!」
って言いたいけど、いけそうな気もするけど、一昨日の夢のように、断られた上に、
別々に行動することになったら・・・ダメだ、ダメだ、そんなのダメだ!
4月15日
この世界に来て森の中を3日間さまよい、この世界の盗賊と戦った。
助けた商人たちと一緒にこの街に来て、今度は兵士たちと盗賊退治に向かった4日間、怒濤の7日間が終わった。
ホテルに戻ると、やっぱりゴツくて、デカいおばさんがフロントにいた。
「運がいいね、シングルあと2部屋空いているよ。」
結菜に笑顔を見せた。
くっ、もっと感じのいいホテルはないのか!
夕食を食べ、明日は一日、この街を歩こうって約束してすぐに寝た。
読んでくれてありがとうございます。
毎日18時に更新します。
評価いただければ幸いです。




