愛の背に乗った、ヒーロー
TKGさんに捧げます
周囲には悪意が立ち込めていた
黒い煙が空気を汚していた
愛はその中を漂っていた
誰にも言えない見えない姿で
透き通った鱝のヒレを揺らして
自ら剣を抜いたつもりで
私も口から黒い煙を吐かされていた
正義の炎を噴いているつもりで
黒い煙を私も撒き散らしていた
その時、そのひとは愛の背に乗った
光で悪意を抱き締めようとしたのだ
その時、私にはようやく見えた
漂う愛の姿と
光のラガーシャツを身に纏うそのひとの暑苦しい顔が
愛の見えない人達は
そのひとが何に乗って飛んでいるのかわからなかった
ただ気持ち悪がった
悪意のハンマーで叩き落とそうとした
愛の見えた人達は
彼を讃えた
悪意の煙を光で照らす彼とラガーシャツの交換をしようとして
彼の仲間だと思われてしまった
戦争は、始まらなかった
そのひとが、姿を消してしまったのだ
自分への攻撃が、みんなに飛び火するのを恐れて
自分から、煙の外へ飛び出して行った
こうして
世界を『好き』で満たそうとしたひとは
世界を『嫌い』で満たす人々に駆逐された
たまごかけごはん